LinuxToday | 2008年9月25日 11:00 |
LPI 技術者認定試験の開発プロセスは公開されている
国内internet.com発の記事
Linux 技術者認定を行っている LPI では、3段階のレベルの試験を実施している。
レベル1には 101 試験、102 試験がある。このレベルでは、Linux ディストリビューションに共通の、基本的なシステム管理技術が問われ、101、102 の2つとも合格しないと、レベル1の認定を受けることはできない。
レベル1の認定を受けるとレベル2を受験できるが、このレベルでも 201 試験、202 試験の2つがあり、2つとも合格しないと、レベル2の認定は受けられない。レベル2では、Linux ディストリビューションに共通の応用管理、ネットワーク管理、システム構築の技術が問われる。
レベル1、レベル2の認定を受けて初めて、ようやくレベル3の試験を受験できる。レベル3では、エンタープライズレベルのシステム構築ができるエンジニア を認定するが、レベル1やレベル2とは異なり、必須科目(Core)301「Core Exam」に合格すれば、レベル3コア認定者になることができる。
その後、302 以降の専門科目(Specialty)を受験できるようになる。現在ある専門科目は 302 試験の「Mixed Environment Exam」のみだが、303 試験「Security」が2009年2月にリリース予定だ。
303 試験は、現時点では、グローバル業務分析(Job Task Analysis)調査を終え、10月および11月に世界各地でβ試験実施の予定だ。
今回、グローバル業務分析の一環で来日した、LPI 試験の開発責任者、Matthew Rice 氏、および LPI-Japan 理事長である成井弦氏に、LPI 試験問題の開発手法などを伺った。
以下はその要約である。
……
■試験の開発もオープンに
Linux などのオープンソースソフトウェア(OSS)では、ソースコードを公開し、インターネット上でオープンに開発が行われているが、LPI 試験も OSS 開発と同様に、オープンな開発体制になっている。したがって、本部に大勢の開発者がいるわけではない。
試験の開発プロセスは大きく言って6段階ある。
「分析と計画」(Analysis and Planning)プロセスでは、市場調査や業界との意見交換を行う。業界関係者から情報を集めたり、TAC(Technical Advisory Council)を開催する。
今年の8月にサンフランシスコで開催された Linux World と平行して、TAC も開催され、303 試験の内容が話し合われた。また、誰でも参加できる Strategy Advisory Committee も開催され、試験の内容や範囲が話し合われた。これらをベースに、試験問題が開発される。
この間、ユーザーからの問題に関する要望や問合せを受け付けるが、それらは大体400から500件にもなる。
次の「デザイン」(Design)プロセスでは、試験の範囲や試験の有効性を分析する「業務分析」(JTA:Job Task Analysis)を行う。
JTA では、作成した試験の範囲が実際現場で有効かどうかを、ジョブタスクの観点から分析をするが、これもインターネット上で公開される。試験の範囲を明確にして、それに対するレビューを、インターネットで募集するのだ。
303 は現在(2008年8月時点)「デザイン」プロセスにあり、今回初めて IPA と手を組んだ。IPA の Security Taskforce に試験内容を説明し、好評価を得たそうだ。
次は試験問題の「開発」(Development)プロセスだが、こちらも公開形式で行い、ワークショップでは、試験の開発に参加するボランティアに集まってもらい、問題を作成する。
作成された問題をすべて採用するわけではなく、とにかく、問題をつぼの中にどんどん入れていくイメージだ。ひとつひとつの試験問題をイグザムアイテムと呼ぶが、評価用のイグザムアイテムをインターネット経由上でインポートして蓄積していく。
■サイコメトリックスの採用
LPI の試験問題開発で特徴的なのは、サイコメトリックス(Psychometrics:計量心理学)を採用している点だ。「テストと評価」(Testing and Validation)プロセスでは、サイコメトリックスを使った評価が行われる。
たとえば、受験者100%が正解できない問題は、試験問題としては意味がないし、逆にまた、全員が正解を出す問題も、意味がない。それぞれの試験問題には その役割があるわけだが、それがきちんと機能しているかどうか、統計学的に調査する。これがサイコメトリックスだ。LPI では、新しい試験を開発するときにはβバージョン段階でテストを行い、採点とは無関係に、回答率を調査している。
試験問題の最終版ができると、英語圏以外では、翻訳が行われる。翻訳後、誤訳のないように、翻訳した人とは別の人に査読してもらう。
最後から2番目のプロセスは「配信」(Deliverly)だ。完全にエラーをなくしてから、米国 Prometric 社に送信、そこから各国に配信される。
最後のプロセスは「メンテナンス」(Maintenance and EOL)だが、ここでは、受験者からのフィードバックを受け付けている。
■日本人受験者の特色
技術的な面では、他の国に比較してユニークという点はないが、試験問題の出し方に対する意見は多い。
米国では、五者択一問題で、5つの中で一番いいのはどれか、という問題の出し方をする。5つそれぞれがそれなりに正しいが、一番あっているこれが正解だ、という考え方だ。
しかし、日本人受験者はこれに違和感を覚えるようだ。日本人受験者が期待しているのは、4つは間違いで1つが正解ということだ。そこで、試験問題がおかしいという話になってくる。日本ユーザーは白黒をはっきりさせたがる傾向がある。
これは、カルチャーの問題だと思う。受験者が多くなると、こういった問題も多くなる。
■日本での受験者数、認定者数が圧倒的に多い
日本の受験者数、認定者数が全世界の受験者、認定者に占める割合はかなり大きい。2008年7月末現在、LPIC 受験者数は10万人を突破、また、LPIC 認定者数は3万3,600人を突破している。
一方、同時点のワールドワイドでの受験者数は約18万8,000人だ。
これに対して、Rice 氏は、LPI-Japan が LPI の最初の海外アフィリエイトだったからだ、と答えた。もっとも長期間にわたって活動してきた結果、LPI-Japan での受験者比率が高くなった。ただ、現在、他の国でも受験者数がどんどん伸びてきているので、今後は海外における LPI-Japan の比率は下がってくる、とのことだ。
これに成井氏は以下のような追加を行った。
LPI は NPO ではあるが、ビジネスとして、特にサービスビジネスとしての価値観をもって運営している。日本以外の国では、どちらかというと Linux のエンジニアが LPI を作っているが、エンジニアの興味は、どうしても技術的な点にある。
Linux の市場規模が圧倒的に大きいのは米国で、本来なら米国の受験者数が多いはずだが、そうなっていないのは、こうした事情だろう。
一方、LPI-Japan は、サービスビジネスとして運用され、活動を行っている。理事構成を見ても、ビジネスよりの人々が多い。
サービスビジネスとはどういうことかというと、サービスレベル、試験内容などで市場でナンバーワンの資格試験になることだ。でないと、認定資格としての価 値がない。そのためには顧客満足度が重要になるし、クレーム対応も大事だ。他の国でもビジネス観点からの運用を行うようになると、また変わってくると思 う。
レベル1には 101 試験、102 試験がある。このレベルでは、Linux ディストリビューションに共通の、基本的なシステム管理技術が問われ、101、102 の2つとも合格しないと、レベル1の認定を受けることはできない。
レベル1の認定を受けるとレベル2を受験できるが、このレベルでも 201 試験、202 試験の2つがあり、2つとも合格しないと、レベル2の認定は受けられない。レベル2では、Linux ディストリビューションに共通の応用管理、ネットワーク管理、システム構築の技術が問われる。
レベル1、レベル2の認定を受けて初めて、ようやくレベル3の試験を受験できる。レベル3では、エンタープライズレベルのシステム構築ができるエンジニア を認定するが、レベル1やレベル2とは異なり、必須科目(Core)301「Core Exam」に合格すれば、レベル3コア認定者になることができる。
その後、302 以降の専門科目(Specialty)を受験できるようになる。現在ある専門科目は 302 試験の「Mixed Environment Exam」のみだが、303 試験「Security」が2009年2月にリリース予定だ。
303 試験は、現時点では、グローバル業務分析(Job Task Analysis)調査を終え、10月および11月に世界各地でβ試験実施の予定だ。
今回、グローバル業務分析の一環で来日した、LPI 試験の開発責任者、Matthew Rice 氏、および LPI-Japan 理事長である成井弦氏に、LPI 試験問題の開発手法などを伺った。
以下はその要約である。
……
■試験の開発もオープンに
Linux などのオープンソースソフトウェア(OSS)では、ソースコードを公開し、インターネット上でオープンに開発が行われているが、LPI 試験も OSS 開発と同様に、オープンな開発体制になっている。したがって、本部に大勢の開発者がいるわけではない。
Product Development Cycle |
試験の開発プロセスは大きく言って6段階ある。
「分析と計画」(Analysis and Planning)プロセスでは、市場調査や業界との意見交換を行う。業界関係者から情報を集めたり、TAC(Technical Advisory Council)を開催する。
今年の8月にサンフランシスコで開催された Linux World と平行して、TAC も開催され、303 試験の内容が話し合われた。また、誰でも参加できる Strategy Advisory Committee も開催され、試験の内容や範囲が話し合われた。これらをベースに、試験問題が開発される。
この間、ユーザーからの問題に関する要望や問合せを受け付けるが、それらは大体400から500件にもなる。
次の「デザイン」(Design)プロセスでは、試験の範囲や試験の有効性を分析する「業務分析」(JTA:Job Task Analysis)を行う。
JTA では、作成した試験の範囲が実際現場で有効かどうかを、ジョブタスクの観点から分析をするが、これもインターネット上で公開される。試験の範囲を明確にして、それに対するレビューを、インターネットで募集するのだ。
303 は現在(2008年8月時点)「デザイン」プロセスにあり、今回初めて IPA と手を組んだ。IPA の Security Taskforce に試験内容を説明し、好評価を得たそうだ。
次は試験問題の「開発」(Development)プロセスだが、こちらも公開形式で行い、ワークショップでは、試験の開発に参加するボランティアに集まってもらい、問題を作成する。
作成された問題をすべて採用するわけではなく、とにかく、問題をつぼの中にどんどん入れていくイメージだ。ひとつひとつの試験問題をイグザムアイテムと呼ぶが、評価用のイグザムアイテムをインターネット経由上でインポートして蓄積していく。
■サイコメトリックスの採用
LPI の試験問題開発で特徴的なのは、サイコメトリックス(Psychometrics:計量心理学)を採用している点だ。「テストと評価」(Testing and Validation)プロセスでは、サイコメトリックスを使った評価が行われる。
たとえば、受験者100%が正解できない問題は、試験問題としては意味がないし、逆にまた、全員が正解を出す問題も、意味がない。それぞれの試験問題には その役割があるわけだが、それがきちんと機能しているかどうか、統計学的に調査する。これがサイコメトリックスだ。LPI では、新しい試験を開発するときにはβバージョン段階でテストを行い、採点とは無関係に、回答率を調査している。
試験問題の最終版ができると、英語圏以外では、翻訳が行われる。翻訳後、誤訳のないように、翻訳した人とは別の人に査読してもらう。
最後から2番目のプロセスは「配信」(Deliverly)だ。完全にエラーをなくしてから、米国 Prometric 社に送信、そこから各国に配信される。
最後のプロセスは「メンテナンス」(Maintenance and EOL)だが、ここでは、受験者からのフィードバックを受け付けている。
■日本人受験者の特色
技術的な面では、他の国に比較してユニークという点はないが、試験問題の出し方に対する意見は多い。
米国では、五者択一問題で、5つの中で一番いいのはどれか、という問題の出し方をする。5つそれぞれがそれなりに正しいが、一番あっているこれが正解だ、という考え方だ。
しかし、日本人受験者はこれに違和感を覚えるようだ。日本人受験者が期待しているのは、4つは間違いで1つが正解ということだ。そこで、試験問題がおかしいという話になってくる。日本ユーザーは白黒をはっきりさせたがる傾向がある。
これは、カルチャーの問題だと思う。受験者が多くなると、こういった問題も多くなる。
■日本での受験者数、認定者数が圧倒的に多い
日本の受験者数、認定者数が全世界の受験者、認定者に占める割合はかなり大きい。2008年7月末現在、LPIC 受験者数は10万人を突破、また、LPIC 認定者数は3万3,600人を突破している。
一方、同時点のワールドワイドでの受験者数は約18万8,000人だ。
これに対して、Rice 氏は、LPI-Japan が LPI の最初の海外アフィリエイトだったからだ、と答えた。もっとも長期間にわたって活動してきた結果、LPI-Japan での受験者比率が高くなった。ただ、現在、他の国でも受験者数がどんどん伸びてきているので、今後は海外における LPI-Japan の比率は下がってくる、とのことだ。
これに成井氏は以下のような追加を行った。
LPI は NPO ではあるが、ビジネスとして、特にサービスビジネスとしての価値観をもって運営している。日本以外の国では、どちらかというと Linux のエンジニアが LPI を作っているが、エンジニアの興味は、どうしても技術的な点にある。
Linux の市場規模が圧倒的に大きいのは米国で、本来なら米国の受験者数が多いはずだが、そうなっていないのは、こうした事情だろう。
一方、LPI-Japan は、サービスビジネスとして運用され、活動を行っている。理事構成を見ても、ビジネスよりの人々が多い。
サービスビジネスとはどういうことかというと、サービスレベル、試験内容などで市場でナンバーワンの資格試験になることだ。でないと、認定資格としての価 値がない。そのためには顧客満足度が重要になるし、クレーム対応も大事だ。他の国でもビジネス観点からの運用を行うようになると、また変わってくると思 う。
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