2008-09-29

私の上司は管理能力ゼロ。さっさと転職した方がいい?

:::引用:::

 この連載では、メンタルヘルスをうまくコントロールするための、いろいろなビューチェンジ(発想の転換)の方法を解説してきました。

 内容に関して、読者の皆さんから、たくさんの質問や感想をいただいています。今回は、その中から役に立ちそうなものを厳選して回答したいと思います。実践的なものばかりですので、皆さんのメンタルヘルスの維持に応用できるのではないかと思います。

朝から晩まで仕事をしている上司

Q1
第1回「なぜ、ITエンジニアの頭脳は疲労するのか」に、ITの仕事には精神的なストレスが多くて脳が疲労するとあります。私の上司は、朝から晩まで休むことなく元気良く働いていて、脳の疲労を感じているように見えません。そういう人も存在するのは、どうしてなのでしょうか。

A1.

 確かに、いらっしゃると思います。こういう人を見ていると「時間外業務(残業時間)の多さとメンタルの問題には、あまり関連性がないのかな」と思うこともあります。

@IT自分戦略研究所カンファレンス
上級ITプロフェッショナルのスキルとキャリア 開催
日時:2008年9月27日(土)
11:00~18:00(受付開始 10:30~)
場所:秋葉原UDX 6F RoomA+B
詳しくは開催概要をご覧ください。

 でも私は、あなたの上司が最初からそうだったわけではないと思います。入社したばかりのころ、仕事に慣れないころは、上司もたくさんの精神的なストレスを感じていたでしょう。

 上司は、いままでに多くの経験をする中で、つらくて嫌な気持ちを、自分のモチベーションアップに昇華できる考え方を身に付けたのではないかと思います。

  でも、いつも夜遅くまで仕事する上司は問題ですね。仕事と生活のバランスが取れていないと感じます。こういう人に巻き込まれないように、あなたは自分の仕 事が終わったら、さっと帰宅してください。こういう上司は、部下が先に帰宅しても、ほとんど気にせず仕事していると思いますので、安心して大丈夫だと思い ます。

Q2
第2回「そんなレビューのこと、聞いていません!」に、優秀な人が集まるグループやコミュニティに参加すると、自分が困ったときの回避方法が分かると書いてありました。そういうグループやコミュニティは、どのようにして見つければいいのですか。

A2.

 自分の会社に、勉強会やワークショップ、掲示板やブログなど、自分の興味のあることについて議論している場があれば、それに参加してはいかがでしょうか。もし社外に求めるのでしたら、「@ITイベントカレンダー」などでイベントやコミュニティの情報を集めて参加するのも、ミクシィなどSNSのワーキンググループに入ってみるのもよいと思います。

 注意すべきことが1つあります。参加するだけではいけません。サブリーダーを務めたり、発表をしたり、運営を手伝ったりという、ファシリテーション作業を実行することが大切です。

 優秀な人の行動を眺めているだけではなく、それをマネすると、自分に役立つ考え方が見つかりやすくなります。それが、困ったときのリスクを回避する方法につながっていくと思います。

Q3
第5回「深夜の呼び出し。早く資料を届けないと!」 を読み、緊急事態にすぐに対応しない方が良い結果が出ることもあると知って驚きました。私はいつも会社のメンバーから「せっかちな性格」とか「行動がガサ ツ」とかいわれています。書類を探すときはバタバタしていますし、電話の切り方も粗雑だそうです。歩くときもいつもせかせか歩いているらしいです。こうい う性格を直したいと思うのですが、何か良い方法はないでしょうか。

A3.

 良い方法があります。何かを行動に移さないといけない状態になったら、取り掛かる前に、まず自分の胸に手を置いてみてください。そして「1、2、3」と数えます。その後行動を始めてください。

 それだけで、あなたのことを「せっかちだ」という人は少なくなると思います。ぜひ試してみてください。

Q4
第6回「私だけ不当に評価が低い。どうして?」 の内容を見て、担当するお客さまのメリットだけでなく自分の会社への貢献も考え、バランス良く仕事をすれば、昇進が早くなるように感じました。でも私の上 司は、人を評価する能力がありません。どう考えても、部下を公正に評価できる人だとは思えません。周りの同僚も、皆そういいます。考えていると腹が立って きて、「こんな会社は早く辞めてしまおう」とも思います。こういう場合は、早く退職して別の会社を探した方がいいのでしょうか。

A4.

  上司の管理能力がなくて腹が立つ気持ち、分かります。気を付けないといけないのは、上司の仕事ぶりが良くなくても、周りの人と一緒になってそれを公言しな いことです。悪口ばかりいっていて「文句しかいわない社員だ」というレッテルを張られてしまうと、昇進するのに不利になりますから。

  こういう場合は、上司の能力よりも、正しい評価を「怠っている」、会社で決められた手順を「実行していない」という不順守の事実に焦点を絞り、あなたの次 の行動を決めるようにしてください。あなたの意見を会社の組織全体のクレームとして主張できれば、会社の中で改善策が見えてくることもあるからです。

 時間がかかるかもしれませんが、転職を急がず、じっくり自分の戦略を立てて行動してほしいと思います。

Q5
第7回「社内論文の提出期限は3週間後。どうしよう!」を読んで、私も論文のようなものを書いて頭の中を整理してみたいと思いました。でも私の会社には、論文提出の制度自体がありません。こういうときはどうすればいいでしょうか。

A5.

 自分の仕事を整理する、見直す、相手に理解させるという作業は、論文を書かないとできないわけではありません。お客さまや上司にプログラムの仕様を説明する、進ちょくをレポートする、定例会議で経験を話すなど、いろいろな場面でできると思います。

 大切なのは、自分の頭で整理して発表する場をたくさん持つことです。社内でも社外でも構いません。人と会話できるすべての場面が、自分の頭を整理する瞬間になります。

 エディタや開発ツールに向かうだけでなく、たくさんの人と向かう時間を確保するようにすると、おのずと頭の中は整理されてくるのではないかと思います。

頑張っても手に入らないものは、あきらめるしかないの?

Q6
第7回「社内論文の提出期限は3週間後。どうしよう!の最後のところに、良いパーツ(手法や道具)が見つからなくても、それに固執しないで作業を進めていくと成果は手に入ると書いてありました。でも、将来にわたって決して手に入らないパーツもあるのではないですか。そんなときは、あきらめるしかないのでしょうか。

A6.

 女性と違い、男性が子どもを産むことができないように、いくら頑張っても手に入らないパーツは、たくさんあるような気がします。

  私たちは、歳を取るにつれ体力を失います。ケガや病気で身動きできない状態になるかもしれません。このように、もともと持っていたパーツを失うことは、大 変ショックだと思います。とはいえ、そのパーツを持っているがゆえに見えなかった壁もあるといいます。パーツをなくして初めて、もっと良い方法が見えてく るといいます。

 体が不自由な方も、正確に仕事をしているという事実があります。現在をスタート地点と考えて、これからたくさん工夫をして得たことをパーツ(武器や道具)に変えながら、前進してほしいと思います。

Q7
第8回「私だってもう少し『技術者』でいたかった」 には、過去の悪い習慣を見つけたら、それを断ち切ると良い仕事が手に入るとあります。これには納得できるのですが、私の会社にはコンプライアンス違反がま ん延していて、良くない取引習慣が継続しています。自分の力ではどうやっても改善できない状態です。この泥沼からどうやって脱出すればいいのでしょうか。

A7.

  難しいケースだと思います。コンプライアンス違反が起こっている事実も問題ですが、ご自身が問題だと思っていることを大きな声で会社にいえない事実にも、 目を向けてほしいと感じました。あなたと上司(会社や組織)の状況を分析して、そこであなたがどういう行動を起こせば脱出できるかを考えてみてください。 そこから打開策を作り出してほしいと思います。

Q8
素朴な疑問です。プログラミングのようなテクニカル系のスキルや、コーチングのようなヒューマン系の知識は、第10回「欲しいものを手に入れるには『場所』が重要」に書かれているように「手に入りやすい場所」で探すとすると、どこで手に入れるのが一番簡単なのでしょうか。

A8.

 欲しいスキルや知識をもし手に入れたら、いったい何に、誰に、どこで使うのか。これを明確にすると、どこで手に入れたらよいかが分かります。

 あなたのお客さまに対してや、社内のメンバー育成に使いたいなら、上司と交渉したり会社のリソースを探して活用したりして手に入れると、多くの人の利益になります。

  自分の経験を情報として発信したり、誰かの相談に上手に乗って悩みを解決したりしたいと思うなら、ボランティアやコミュニティのメンバーとしてブログを立 ち上げる、相談会を実施してたくさんの人とコミュニケーションするなどして手に入れると、多くの人と気持ちを共有でき、感動につながります。

 ある特定の人のために役に立ちたい。そう思っているなら、ご自身の気持ちを誰にも邪魔されないことが大切だと思うので、自分でコントロールできる独学や自己投資で手に入れてみてはいかがでしょうか。

図1 立方体をいろいろな角度から眺める。これがビューチェンジの手法

Q9
樋口研究室のビューチェンジには、「3つの○○」とか、「××するための3つの方法」など、「3」という数字がよく出ています。これには何か意味があるのでしょうか。

A9.

  はい、意味があります。ビューチェンジは、もの(事実や事象)に対する見方や考え方を変化させるツールです。樋口研究室は、事実や事象を立方体の箱に入れ て眺めるようにしています。立方体は「3つの方向に伸びるベクトル(軸)」で作られています。それを上から眺めたり、横から眺めたり、逆さまにして眺めた りすることで、これまでとは違った方法を探し出します。ですから3という数字が基本になるのです。


 いかがですか。ビューチェンジは、仕事や生活のどんな場面でも使える発想転換の方法です。うまく使えば、上手にメンタルヘルスを維持しながら前進するためのツールになります。皆さんにもこの機会に、ぜひビューチェンジの使い方を身に付けてほしいと思います。

 この連載は、今回でいったん終了します。新たな連載では、樋口研究室に所属するメンバーが、皆さんのメンタルヘルスをうまく維持していく方法をお伝えします。

 樋口研究室で鍛えられたメンバーの具体的なビューチェンジの方法は、皆さんのお役に立てるのではないかと感じています。引き続きよろしくお願いいたします。


●●コメント●●

2 件のコメント:

ひぐらぶ さんのコメント...
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ひぐらぶ さんのコメント...

この執筆をされた、樋口研究室の樋口コーチと会ってみた(トライアル・コーチングで)のですが、樋口コーチは、想像するのと、全く違って。とっても気さくで、面白い方でした。色々と話してみると、得られるものも多くて、また会いたいと、思いました。みなさんも、早い目に、お会いすると、言いと思います。