前回、 499元(日本円にして約8000円)の激安通常パッケージ版Windows Vista Home Basic中文版を購入した筆者は、早速Windows XPを動かしていたPCに入れてみようとパッケージを開けた。日本で売られているそれと雰囲気変わらぬパッケージからDVDディスクを取り出し、ラベル面 をひっくり返し見てみて愕然(がくぜん)。なんとディスクの真ん中に目視できるほどの大きな傷が…。祈りながらインストールを試したみたが、やっぱりダメ だった。install.wimという、インストール時に必要なファイルが読めなくなっているのだ。 困った。ここで販売店に直接持っていって、交換すれば話は終了なのだが、筆者の滞在する中国の町には、正規版Windowsを販売している店などな いので、仕方なく大きな都市で買ったのである。筆者がいる町と、購入した販売店とは距離にして1000kmは離れている。東京から北海道や九州に出かける ようなもので、簡単に交換に行ける距離ではないのだ。
これを購入した正規版ソフトショップチェーン「連邦」に電話をかけてみたが、「実際に購 入した販売店で交換してくれ」という予想通り返答が。しか しそれでは困る。とてもじゃないが、交換のためだけに飛行機に乗るなんてナンセンスだ。そういうと、「マイクロソフトに製品を買った証明をもらってくださ い。それから考える」という答えがきた。正規版の導入率がものすごく低い中国だから、買った証明が必要なのは理解できるが、「買った証明」ってどうやって 入手するのだろう。
そこでマイクロソフト中国(MS中国)のWebサイトにあるメールフォーム経由で「これこれこういう事情で…」と書いて送信してみた。すばらしいもの で、数時間したらMS中国の担当者から電話が来た。中国企業では、トップページやメールフォームからメールしても、返信が来ることはまずない(Webペー ジに書かれた連絡先がハリボテ化しているのだ)ので、それだけで感心してしまった。担当者によると、交換のプロセスは、次の通り。まず、正規版の確認をす るため、パッケージと領収書のコピーをファックスでMS中国に送る。そして、正規版の確認ができたら、初期不良だった製品を筆者が販売店の連邦に送る。 MS中国は、連邦に交換を促すといった流れだ。筆者は中国の配送事情も考え、郵送ではなく宅配サービスを利用した。
ちなみに筆者の 滞在する中国の街にも連邦の代理店があり、そこに電話をかけてみると、当然のように「販売した店でないから、商品交換はNG」とい う答えが返ってきた。しかし、「ディスクだけ必要だったら、問題のディスクと領収書をみて、手持ちのWindows Vista Home BasicをDVD-Rに焼いて渡してもいいよ」とのこと。その好意はありがたいが、ちょっとグレーなので、連邦に宅配サービスで不良品を送るという正規 のプロセスでいくことにした。
数日後、販売店の連邦に初期不良品は届いたようだが、同店にWindows Vista Home Basicの在庫がないのか、MS中国に不良品を送ったという。その後どうなっているか、連邦に聞いてみても「MS中国に不良品は送ったので、もう電話し ないでください」というなんとも冷たい返事が。
さて、最初に電話をしたときから数週間たってから、連邦からようやく返事がきた。そ の返答は「ユーザーがディスクを傷つけたのだから、返品交換は できない。でも正規版のコピーを一枚つけて送る」といった内容だ。非は購入者にあり(すなわち筆者がいけない)という連絡が来たのだ。まったく納得できな い回答である。しかも、肝心のディスクは「オリジナルのソフトウエアの在庫がない」ということで、いつまでたっても送られてこない。
交換に要した費用(実際にはまだ交換品は届いていないが)は、宅配サービスが12元(200円弱)、ファックス代が10元弱(約150円)。交換 にかけた費用だけで、1枚数元、日本円にして100円前後の海賊版のWindows Vista(しかもおそらくUltimate)の価格を上回ってしまった。しかも交換手続きは、販売店のサービスがひどいことから面倒極まりない。一方で 海賊版販売店では傷がついていれば即交換可能であることから、正規版ソフト購入は、海賊版ソフト購入に比べてやたらデメリットが多いと言わざるを得ない (だからといって海賊版ソフトを買っていいというわけではない
今回の一連の面倒なやりとりをサポートしてくれた中国人の知人数名は「海賊版はいけないと思ってたけど、正規版のほうがロクでもないことがわかった」と まで言っていた。販売店もひどかったが、MS中国も最善を尽くしたとは言いがたい。製品出荷までのプロセスで起きたミスなのだろうから、せめて宅配サービ スは着払いでやってほしかった。
何よりも中国の正規版ソフト販売店「連邦」や、MS中国自身が正規版の販売を積極的に行おうとして いないように筆者には感じられた。その背景とし ては、MSのサポートスタッフもソフトウエア販売店の店員も、海賊版が十分に普及している中国の環境で育ち、海賊版の便利さや手軽さを熟知しているため、 本音の部分では正規版の販売に消極的なのではないのだろうか。
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「PCにOSがついていなかったら海賊版を入れるか」という質問に91.44%が「当然海賊版を入れる」と回答 |
中国の海賊版問題は、海賊版の存在だけが問題ではなく、正規版ソフトの販売やサポート体制があまりにも酷いことが、問題をさらにややこしくしているのではないかと、今回の件で筆者は強く感じるようになった次第だ。
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