2008-09-29

外国出身児に日本語支援 小中学校に専門家派遣(秋田)

:::引用:::

日本語を十分に使いこなせない外国出身の小中学生たちにマンツーマンで日本語を教える専門家「日本語指導支援サポーター」。子供たちは、日常会話や日本語の基礎をマスターし、学校生活になじめるようになる。しかし、学力向上や高校進学には課題も残る。(糸井裕哉)

 秋田市中心街の中通小学校。6年生20人ほどが学ぶ教室で、日本語指導支援サポーター藤原暁子さん(61)が、隣りに座る荻原ケイさん(12)に静かに声をかけた。

 「見積もりって言葉、意味わかる?」。「大丈夫だよ」。うなずいたケイさんは、ノートに掛け算の答えを書き進める。

 授業中、藤原さんはケイさんに密着し、「ポカポカ」を、「あたたかい」という言葉に置き換え、擬態語など外国出身者に理解が難しい言葉を教えている。休日に一緒にイベントへ出掛けることもある。

 ケイさんは昨年3月、フィリピンから秋田市に移り住み、小学3年の弟ショウ君(9)とともに中通小でサポーターらの指導を受けている。

 ケイさんは来日当初、日本語がまったくわからなかったが、今では、日常会話に不自由しなくなった。合唱部で部長を務め、楽しく学校生活を過ごしている。

 ケイさんは「厳しい時もあるけど、サポーターが近くにいてくれて心強い」と笑顔で語った。

 松田行正校長(56)は「サポーターが子供の相談相手になり安心感を与え、日本語習得のスピードが上がっている」と評価する。

 秋田、横手、能代など県内13市町は、日本語指導支援サポーター制度を導入し、42人の外国出身の小中学生を指導している。出身国の内訳は中国が約50%、フィリピンが約40%を占め、予算は県と市町が半分ずつ負担している。

 秋田市は7年前から導入し、今年度は8小中学校に10人のサポーターを派遣。サポーターには、日本語教育能力試験の合格者や、日本語教師養成講座の修了者、ボランティア団体での指導経験者など、日本語教育の専門家が登録している。

 派遣校では、あいさつやひらがなの読み書きなどの基礎を学ぶ授業と、専門用語など理解が難しい言葉を教える授業の2段階に分け、日本語の基礎教育を徹底して行う。1年間授業を受けた後は日常会話に不自由しなくなる子供が大半で、トップクラスの成績を修める中学生もいるという。

 しかし、秋田市のあるサポーターは「見た目にはわからなくても圧倒的に語彙(ごい)が少なく、副詞など微妙な概念を理解できない子がほとんど」と言う。サポーターらによると、子供が日常会話に困っていないため、小学校の側が支援は不要と判断し、保護者が指導を望んでも、サポーターの派遣を断るケースもあるという。

 また、県内の高校にはサポーター制度がなく、高校入試も一般生徒と同じ内容のため、全日制高校への進学は難しく、定時制や通信制に進んだり、進学をあきらめたりするケースがあるという。

 藤原さんは「会話能力が高いことは、学力があることと同じではない。生徒が日本語を話せるからといって安心せず、授業内容の理解を深めていく努力を、学校を交えてより深く行っていく必要がある」と訴えている。

(2008年9月29日  読売新聞)
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