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金融危機の影響で都市部のパソコン市場が打撃を受ける中、「家電下郷」(政府による農村への家電製品普及奨励策)によって動き出した農村パソコン市場が、“採掘待ちの金鉱”として大いに期待を集めている。
3月5日、パソコン部門の入札審査の結果が発表され、参加した企業21社のうち、レノボ、方正(ファウンダー)、デル、ヒューレット・パッカード、エイサーなど14社が合格。ベンキュー、アスースなど7社が落選した。パソコンの合格モデルは、デスクトップパソコン104機種とノートパソコン60 機種を含む計183機種である。
農村でのパソコンプロジェクトの本格始動を前に、レノボ集団の劉傑副総裁は「農村パソコン市場の将来は明るいが、その道のりは平坦ではない」と語る。劉副総裁は2007年、自らチームを率いて広東省の清遠市や英徳県などを実地調査した際、あるミカン農家でホコリまみれになったパソコンを見つけたという。
その家では2006年に5000元でパソコンを購入したが、しばらくすると使わなくなってしまった。ゲームをするぐらいで、すぐに飽きてしまったという。劉副総裁が「インターネットに接続すれば、ミカン栽培の先進技術も学べる」と提案したところ、「やってみたが、特に役に立つような技術全般は見つからなかった」との答えが返ってきた。
劉副総裁はこの経験から「農村市場にパソコンが受け入れられるためには、製品、販路、サービス、教育、ネット接続など多くの要素が関係し、短期間で市場開拓するのは難しい」と指摘。「入札に成功した企業が、すぐに農村市場に入り込めると思うのなら、甘い考えだ。これには長期にわたる努力が必要だ」と述べている。パソコンメーカー各社が始動
政府が定めた農村向けパソコンのスペックは、CPUの動作周波数1.2GHz以上、メモリー1GB以上、ハードディスク160GB以上、デスクトップパソコンのディスプレー17インチ以上、ノートは7インチ以上というものだ。さらに、中文OSおよび使用期限1年以上のアンチウイルスソフトの正規版をプレインストールし、キーボードやマウスなどもセットしなければならない。
競争入札に参加した企業は明暗を分けた。21社のうち、ベンキュー、アスースなどを含む7社が落選した。パソコンメーカーの関係者によると、その原因は二つあるという。一つは、ハードウエアが規格に合致しなかったこと、もうひとつは、製品の機種が少なかったことで、中には2機種だけで入札に参加した企業もあった。これに対し、レノボ、方正、デル、ヒューレット・パッカード、ハイアール、清華同方、神舟、浪潮、長城、北京満疆など10社は、申請の上限である15機種で応札している。
エイサーの広報担当の李晶氏は電話取材に対して、同社は10機種が審査に合格したと述べた。
これらの企業はすべて、パソコンの「農村普及プロジェクト」によって、農村市場が開かれることを期待している。5年前は「凍土」と言われ、今でも「荒地」とされる農村市場だが、今回の措置で肥沃な「耕地」に変わることを期待しているのだ。レノボは、今後3年をかけて32万の行政村に情報や知識を広め、農村の500万世帯が自社のパソコンを使いこなすという目標を立てた。
この目標に向け、レノボは多くの準備を進めており、これらは「パソコンの農村普及包括計画」と呼ばれている。この計画には、多くの機種を低価格で提供することや、農村市場特有の問題を解決すること、多彩なアプリケーションを開発することなどが含まれている。
劉副総裁によると、レノボは農村向けに3タイプ、15機種を開発した。3タイプは、デスクトップ、ノート、それに最新の液晶一体型である。価格は 2500~3500元で、これに政府から13%の補助金が支給されるため、農家の人は高性能のパソコンを低価格で購入できる。また、農村では電圧が安定せず、落雷などによる影響も大きい。このため、電圧の許容幅を拡大し、雷サージプロテクターや電磁環境適合性(EMC)なども農村向けに開発された。一方、清華同方は2月25日に「紅旗計画」を発表し、農村向けパソコン事業を始動させた。この計画は、北京-成都、上海-昆明、瀋陽-深セン、寧波-西安などの区間に特別列車18本を運行するというものだ。列車は1日に200余りの都市、400余りの駅に停車し、年間輸送旅客数は延べ5000万人、年間運行距離は450万km余りに達する。
この列車の車両内にポスターを張るほか、座席のヘッドレストカバー、テーブルクロス、車内放送、カードチケットなどを広告媒体として利用する。同社の李健航副総裁によると、列車を「移動式製品展示場」と位置付け、各列車に独立した製品体験ゾーンを設けて、旅客にさまざまな製品を直接体験してもらおうという試みだ。
このほか、デル、ヒューレット・パッカード、ハイアール、神舟、浪潮、長城、北京満疆、エイサーなどもそれぞれ農村向けプロジェクトを展開するという。
農村市場は「イバラの道」
テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品が農村に普及し始めて、すでに10年余りが経過した。だが、パソコンは5年前にようやく農村に入り始めたばかりだ。劉副総裁は「5年前の農村市場は“凍土”だった」と振り返り、「今でも家電市場のようには成熟しておらず、凍土が融けたとは言え、未開墾の“荒地 ”のようなもの」と語る。
劉副総裁によると、レノボはこの5年間、全国1万3700余りの県や鎮を実地調査し、農村住民2000万人余りにパソコンの知識を広め、300機種以上の農村向けパソコンを開発した。レノボのデータによると、同社は県級以下の農村のパソコン市場でトップの42.4%のシェアを獲得しており、これは 2位の6倍にあたる。
5年間にわたって農村市場の開拓努力を続けてきたレノボだが、それでもこの先を楽観視してはいない。劉副総裁はこれを「イバラの道」だと形容する。 まず問題となるのは価格だ。農民の多くは「パソコンは高すぎて買えない」と口をそろえる。2008年の国家統計年鑑によると、中国の農民の平均年収は4100元で、都市部で販売されているパソコンの平均価格は約4700元。大半の農民は、1年間の収入でもパソコンを買うことができないのだ。
さらに、パソコンを使いこなせないという問題がある。農民のパソコンのハードやソフトに対する理解は十分ではなく、パソコン知識の普及が急務だ。以前、レノボの製品を買った農家のユーザーから、使用方法について問い合わせの電話があった。応対したスタッフが、デスクトップにあるファイルを開くように指示したところ、ユーザーは「デスクの上にはファイルはない、湯のみがあるだけ」と答えたという。
このほか、農村ユーザー向けアプリケーションの不足、販売ルートの確保、メンテナンスやサービスの提供が困難という3大問題も抱えている。四川省南充市のレノボサービスセンターが、ユーザーから修理依頼を受けた。電話があった翌日、早速ユーザー宅を訪問したが、車で往復8時間以上かかり、途中で三度も車を乗り継いだという。
農村市場向けの対策は、レノボが最も進んでいる。今後、パソコンの農村への普及に伴って、他社も同様の問題に直面することになるだろう。
“荒地”を“耕地”に
金融危機で、レノボ、デル、ヒューレット・パッカード、エイサーなどの国際的メーカーの欧米事業は成長に陰りが出ている。特に、法人向け市場が落ち込んでいる。中国国内でも、輸出の減少からIT設備の購入を控える企業が現れ始めており、一級、二級の大都市を中心にパソコン市場は打撃を受けた。
県や郷などの農村市場は、確かに未開墾の“荒地”だが、金融危機という厳冬の中では唯一の希望の地となった。これまで販売ルートやサービス、教育などの困難さから模様眺め気味だったパソコンメーカーも、政府主導の農村普及奨励策を受けて、農村進出のリスクを取ることを決意した。劉副総裁は、農村市場の開拓に最も重要なことは、農村ユーザーの多様な要求を満足させられるアプリケーションの開発だと考えている。レノボが今回、入札に成功したパソコンの中には、「富裕への道」と名付けられた農業情報のデータバンクがインストールされたものもあり、農業、林業、牧畜、漁業、副業などの情報をカバーしている。
農業情報のアプリケーションを第一とするなら、第二は教育アプリケーションだ。これには「レノボ100点学校」と名付けたインターネット学習プラットフォームを用意している。これはオンライン教育の「101ネットスクール」や大手英会話スクールの「新東方英語」など多くの教育機関のリソースを統合したものだ。
そして第三がエンターテインメントだ。レノボは製品に「レノボ娯楽ゾーン」をインストールしており、これによって、映画やスポーツ、演芸など1万本余りの映像作品を楽しむことができる。
さらに農村ユーザーにパソコンの知識が不足していることを受け、バージョンアップやメンテナンスを自動で行うソフト「PC Carer」や、リカバリーやウイルス対策が簡単にできるワンキー・リカバリー、ワンキー・アンチウイルスを装備し、システムメンテナンスやバージョンアップをサポートしている。
このほか、販売、サービス、教育、宣伝、製品体験などを集約させた「ランドマークショップ」700店余りを県級の農村に開設する計画だ。販売店 7800カ所を統括し、32万の行政村をカバーし、車で1時間以内の距離でレノボ製品を購入できる体制を構築する考えだ。劉副総裁は、3万人の店頭販売エンジニアを新規に認定し、顧客の購入相談にきめ細かく対応していくことを明らかにした。
(記者:辛苑薇=21世紀経済報道、北京発)
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