2009-04-30

アップル、独自の半導体設計のため自社チームを構築

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ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)米アップル(Nasdaq:AAPL)は、半導体を自ら設計するため、著しい能力を構築しようとしている。この戦略シフトが他にはない性能を自社デバイスにもたらし、自社技術を他社から守ることにつながるとアップルは期待している。

 流行の仕掛け役であるアップルは、ソフトウエアやその他のタスクを実行する携帯電話機向けの多機能チップのエンジニアなど、半導体業界の多様な分野の人材を採用している。

 アップルの計画に詳しい筋によると、同社は人気の携帯電話機「iPhone(アイフォーン)」や携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)タッチ」の消費電力を大幅に削減するために自社開発の半導体を利用するほか、リアルなゲームソフトや高精細の動画の再生に役立つグラフィックチップを加える可能性がある。

 この新しい取り組みのひとつの象徴は、アップルが最近、米半導体大手アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(NYSE:AMD)のグラフィック製品グループ元最高技術責任者(CTO)のラジャ・コドゥリ氏を迎えたこと。同氏は今週、アップルでの勤務を始めた。AMDでコデゥリ氏と同じ肩書きを持ち、現在アップルに在籍するボブ・ドレビン氏に続いた。

 アップルはオンラインで数十もの半導体関連のポジションを埋める人材を募集している。その一部には職務内容に「アップルが開発したシリコンの機能の正確性テスト」が盛り込まれている。

 アップルの戦略転換には、新機能を売り込んで競合他社の上を行こうとする狙いのほかにも、自社の技術計画について社外のチップ供給業者と共有する情報を少なくする目的があると、事情筋は指摘する。

 アップルの広報担当者はコメントを避けた。

 こうした新しい取り組みには多くのハードルが存在する。アップルの計画に詳しい関係者らは、社内開発した半導体の発表は早くても来年になるとみている。それでも同社の積極的な採用活動は、他のハイテク大手がリセッション(景気後退)を背景に人員削減を進めるなかで、アップルの最近の成功が事業拡大を可能にしている模様を示した。

 アップルの戦略は、半導体やその他部品の開発を外部サプライヤーに委託するという大手エレクトロニクス企業の大半の長期的トレンドと袂を分かつものとなった。

 昨春、アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)はシリコンバレーの新興企業P.A.セミの買収について、iPhoneとiPodにより高度なソフトを搭載する専門的ノウハウと技術を獲得する方法と説明。同CEOはインタビューで「ただ既製チップを購入するということはできない」と語った。

 大半の携帯電話端末は、英半導体開発大手ARMホールディングス(Nasdaq:ARMHY)が他社にライセンス供与した設計に基づく半導体を利用している。アナリストらによると、iPhoneにはアップルが開発したカスタム機能を組み込んだ、ARMの設計をベースにした半導体を韓国のサムスン電子(005930.SE)が供給している。

 アップルの考えに近い筋は、外部ベンダーと共有している一部の情報が競合他社に販売されるチップに利用される恐れがあると幹部らは懸念していると述べた。サムスン電子の広報担当者はコメントを控えた。

 事情筋によると、ジョブズCEOは昨年4月、P.A.セミのエンジニアらに対して社内での半導体開発を目指す意向を示し、その技術に関する知識が社外に漏れてほしくない、と伝えた。同CEOは現在、療養休暇中でコメントは得られない。

 アップルの計画に詳しい関係者らは、元P.A.セミのエンジニアらが今後のiPhoneの性能向上とバッテリー寿命の延長に寄与する、ARMの設計に基づくチップを開発すると予想している、と語った。

 求人・求職などビジネス向けのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)であるリンクトインによると、アップルの半導体分野での人材採用攻勢は P.A.セミ買収のかなり前から始まり、ここ数カ月でも続いている。リンクトインには半導体最大手の米インテル(Nasdaq:INTC)、サムスン電子、米無線通信技術大手クアルコム(Nasdaq:QCOM)のベテランを含めて、半導体関連のバックグラウンドを持つアップル在籍者が100人超存在する。

 アップルが出した人材募集(その一部は求職情報サイトのインディード・ドット・コムがまとめて掲載している)は、将来の実用化が見込まれる性能に関する手がかりを提供している。最近掲載された2件の求人には手書き文字認識技術が関連しており、そのほか数件ではディスプレー管理用チップの専門知識が求められている。

 事情筋によると、間もなく失業する予定のフラッシュメモリーメーカーの米スパンション(Nasdaq:SPSN)のエンジニアを対象に今月開かれた就職説明会にアップルは参加した。スパンションは3月に破産法の適用を申請した。
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