変調するベトナム経済の最新動向

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マクロ経済の最新動向

• ベ トナムは、中国と同じように5年ごとの経済計画がある。06年～10年までの5ヵ年計画では、GDP成長率が7.5％～8.0％に、10年のGDP総額は 00年の2.1倍、一人当たりGDPは1,050～1,100米ドルに達するといった中期目標と、20年までに完全な工業国とする長期目標を掲げている。
• 05 年以降の経済成長率は毎年8％を超えたが、バブル対策としての引き締め政策やその後の世界的な金融危機の影響で08年は6.23％に鈍化し、目標としての 7％に届かなかった。ただし、08年の一人当たりGDPは1,024ドル(ベトナム政府発表)となり2年前倒しで中期目標を達成した。また、ハノイとホー チミン等の都市部では一人当たりGDPは2,500ドルに達している。
• ベトナムでは、経済過熱で07年後半からインフレが高騰し、08年8月には前年同期比で28.3％とピークになった。その後は低下傾向にあり、12月は同期比で19.89％まで下落し、08年通年のインフレ率は22.97％となった。
• 08 年8月から輸出伸び率が低下し、11月には前年同期比マイナス成長となった。08年通年の輸出額は629億ドル(前年同期比29.5％増)、輸入額は 804億ドル(同28.3％増)であり、貿易赤字は175億ドルで、対名目GDP(08年約758億ドル)比で23％となっている。ベトナムの輸出額対 GDP比(08年)は約83％(中国は約40％)に達し、世界同時不況の影響は深刻となりつつある。
• 08年に都市部の失業率は07年と同等の4.6％前後と見込まれている。09年1月に現地企業へのヒアリング調査では、輸出減少で企業は減産せざるを得なくなり、稼働時間調整や人員整理が余儀なくされていることが確認されている。失業率の上昇が懸念される。

インフレ抑制から経済成長確保の経済政策へ

• 08 年前半は、高騰するインフレを抑制するため2月、5月、6月の3度にわたる利上げ(貸出基準金利を8.25％から14.00％に)を実施。逆に10月以降 は、過度な引締め政策を転換し世界的な経済危機に対応するため、09年1月25日現在までに6度にわたる利下げ(貸出基準金利を14.0％から7.0％ に)、4度にわたる預金準備率を急遽実施した。
• キャピタルフライト対策から輸出促進へ 為替政策をも動員した。08年3月、6月、11月に3度にわたり為替取引制限幅を±0.75％から±3％までに拡大させ、為替レートの変動(切下げ)を容 認した。また、コアレート自体についても、08年6月と12月の2度にわたり、合計5.36％の切下げを実施した。
• ベ トナムの中央政府の財政赤字の対GDP比は-4.9％(07年)に達しており、財政出動による景気刺激政策の決断は難しい状況にある。しかし、世界的な経 済危機から受ける影響は予想より大きく深くなると感じたベトナム政府は、08年末に10億ドルの緊急財政支出による経済対策をアナウンスせざるを得なかっ た。ただ、中小企業融資か、輸出支援か使途に異なる意見があり、いまだに未定である。

外資流入の動向

• ベトナム経済を支えるのは、1)外国直接投資(FDI)、2)ODA、3)越僑送金という三本の資金流入であると言われている。08年は好調であったが、09年は縮小すると見込まれる。
• 1)FDI については、08年の認可件数は1,171件で前年比24.2％減少したが、金額ベースでは前年の3倍強で600億ドルを超えた。08年は数十億ドルに上 る大型投資の約束が多かった。しかし、08年の実行額は115億ドル(前年比43.2％増)に止まり、経済危機が深まっており、申請された大型投資が実行 されるかと疑問視されている。また、外資導入に自信を深めたベトナムは外資へのインセンティブを縮小させ、外資選別政策を打ち出したので、外国直接投資に マイナスの影響を与えると考えられる。ちなみに、08年の日本からの対ベトナム投資(認可ベース)は、105件(前年の154件より減少で72.88億ド ル(前年の9.65億ドルより約8倍にもなった))となった。出光興産などによるJV製油所の投資額は62億ドルにあがるなど、日系企業の投資も大型化傾 向にある。
• 2)のODAでは、08年に供与額54億ドルが約束されたが、実施されたの は約20億ドルであった。08年12月の対ベトナム支援会合「CG会合」での各ドナーの約束額（09年供与）は50億ドルで前年比7％の減少となった。世 界銀行やアジア開発銀行のような大手ドナーを除いて2国間の最大供与国となっている日本は、昨年のODA絡みの汚職問題が解決されていないので、日本は対 ベトナムODAを一時停止させており、09年供与の約束はいまだに表明していない。
• 3) の越僑送金について、08年は80億ドルに達すると推定され、前年比13億ドルも多かった。現金持ち込みが多いので、実態は倍以上ある。ちなみに、海外に いるベトナム人は300万人（戦争で海外に避難した人と出稼ぎ労働者を含む）に上る。世界同時不況で越僑送金は減少するだろう。

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