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経済危機は、すでに韓国市民を動揺させている社会不安を一層こじらせるだろう。韓国の中流階級は、既得権を持つパワーエリートが存在し、パワーエリートが中流階級を排除していると考える傾向がある。こうした背景の下で、経済危機に臨んで、李明博(イミヨンバク)大統領は富裕者と財閥を優遇しているという認識が浸透し、困難を切り抜けるために国民に団結を訴える大統領の説得力が弱まっている。
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≪分析≫
韓国の発展は多くの点でサクセスストーリーといえる。だが、朝鮮戦争(1950~53年)後、主要な産業経済国、民主主義国に転換したにもかかわらず、おそらくそのスピードゆえに国民は自国社会のあり方に満足できないでいる。いま、韓国では、暴動、自殺、失業など、多くの社会問題が盛んに議論されている。経済危機はこれらの問題を悪化させ、解決をより困難にしている。
◆強制退去で死傷者
1月19日、ソウル市の再開発地区で立ち退きを求められた住民が建物を占拠して座り込みを続けていたが、20日、約300人の機動隊員が突入して鎮圧行動に出た。この際、火災が発生し、6人が死亡、17人がけがを負った。火災の原因は、抗議者が蓄えていたシンナーに引火したものとみられる。都市開発の補償金は少なく、住民を強制退去させるために暴力団が雇われているともいわれる。
韓国人は暴力的なデモを好む傾向があるが、実際に死傷者が出るのはまれだ。
1980年代と90年代、機動隊は学生や労働組合員と大規模な戦いを繰り広げた。
その後、約10年間、催涙弾が使われることはなかったが、いまでも抗議運動は激烈だ。指を切断したり、自殺さえする悲憤にかられた抗議行動は、実際には有効でないにもかかわらず、悲嘆を誘い、意思力の勝利として称賛される。
韓国はOECD(経済協力開発機構)で自殺率が最も高いとしばしば主張される(実際はハンガリーが自殺率1位)。10万人当たりの韓国の自殺者数は、1982年に6.8件だったが、2006年には21.5件に急増した。
自殺の約80%は鬱病(うつびょう)が原因とされ、この5年間で約33%増え、いまや国民の2.7%が鬱病といわれる。金融問題が原因の一つとしてよく挙げられる。
過労死問題も深刻だ。韓国では2004年に週休2日制が導入されたが、07年の年間平均労働時間は2357時間で、他のOECD諸国より、かなり長い。1月28日には、安哲植(アンチヨルシク)知識経済省第二次官が着任間もなく死亡した。春節(旧正月)中も働き、帰宅後すぐ亡くなった。1年前に李明博大統領が就任して以来、官僚の負担は増し、業績を上げるように圧力を受けている。07年には107人の官僚が死亡し、そのうち41人はストレスが原因だと政府はみなしている。労働時間の長さは、必ずしも仕事の質を保証しない。長時間労働を尊ぶ文化で、家族生活が犠牲になっている。
◆ネット言論弾圧
最近、2人の有名な俳優が自殺した。一人は崔真実(チエ・ジンシル)さん(39)、もう一人は金知厚(キム・ジフ)さん(23)だ。崔さんは、インターネットに虚偽を書き込まれたことを苦に、金さんは同性愛を告白したあと、嫌がらせの電子メールに悩まされて自殺したとされる。いまでも韓国には、同性愛を嫌う文化が残っている。
韓国では、ブロードバンド(広帯域)のインターネット環境が普及している。1月12日、韓国警察庁は、しつこいメールや個人情報の収集を含めて、オンラインのストーカー行為を犯罪とみなすと発表した。保守派の与党ハンナラ党は、オンラインでの中傷を違法とする「サイバー侮辱罪」法案を提出し、投稿には実名の使用を要求している。
1月7日には、政府の経済政策に批判的なブロガー(日記形式のホームページを作成し公開する人)「ミネルバ」が逮捕された。容疑は、昨年12月に行った「政府が金融機関と大手企業に米ドル買い禁止を通達した」という書き込みが虚偽であり、外国為替市場と国家の信用を傷つけたというものだ。
この逮捕をめぐっては、言論の自由を制限する権力の乱用だとして懸念を引き起こしている。
データによれば、韓国の所得配分はかなり平等だ。しかし、社会的不平等感は強い。韓国人は年齢と性別による序列を尊重する儒教の伝統と、公正さを求める、強い社会民主的本能を併せ持っている。
韓国では失業は社会的悪であり、恥とみなされる。とくに男性にとってはそうだ。最近まで、労働組合は広範な世論の支持を受けていた。不動産投機は広く行われているが、とくに悪徳だと考えられている。韓国財閥は貪欲(どんよく)で、中小企業をいじめているとみられる。
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≪結論≫
世界経済減速によって、社会問題の悪化や社会的亀裂を逃れられる国はほとんどないだろう。しかし、韓国では、亀裂が拡大し、不安が高まる、とくに難しい時期に危機が襲った。経済問題に劣らず、社会問題に配慮と対策が求められる。しかし、社会問題の領域で指導力はほとんど発揮されていない。さまざまな社会問題が、韓国に重くのしかかり続けるだろう。
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