:::引用:::
県が総額七千六百億円を超す二〇〇九年度当初予算案を発表した。同時に国の二次補正予算に対応した〇八年度二月補正予算案も示した。待ったなしの景気対策に重点を置いた編成は当然だろう。
財政再建計画の最終年であり、いわゆる緊縮型予算に変わりはない。が、十二月と一月にも補正を組んでおり、実質的には十五カ月予算の性格を持つ。防災対策を中心に〇九年度予定の公共事業の約八十億円分を前倒しする。このため、普通建設事業費は数年ぶりの増加に転じる計算という。小粒だが、一定の景気浮揚は期待できよう。
なにより雇用の立て直しが急務だ。愛媛労働局の雇用失業情勢によると、昨年十二月の有効求人倍率は〇・七六に悪化。離職者の増加で新規求職者数は統計史上初めて五千人を超えている。企業業績の悪化などから、年度末にはさらなる危機も懸念される。
そのなかで、市町とともに累計で三千三百人の雇用創出に乗り出すことは率直に評価したい。国の交付金を原資に六十六億円規模の基金を創設し、三年にわたり雇用就業を支援する。迅速かつ機動的な執行に努めてもらいたい。
支援拠点として、松山市のアイテムえひめ内に「県地域共同就職支援センター」を設置し、住宅相談や生計維持に関する相談を一体的に実施する。とりわけ雇用情勢の厳しい南予の若者に、人手が不足する製造業が多い東予地区での就業を促す技能継承事業など、野心的な試みもある。
問題は中身である。職を失った非正規労働者や中高年層への支援は、次の仕事が見つかるまでの一時的なものにとどまる事例が多い。雇用のミスマッチが指摘されて久しいが、人材不足といわれる農業や福祉の分野に対しては政策的な誘導が必要だ。職業訓練はますます重要となる。
景気の底が見えない中で、期限が過ぎればまた職を失うようでは心もとない。大規模な公共工事が望めない以上、税金投入をためらいがちな個人の技能習得支援を「人への投資」ととらえ、将来の安定と成長を描けるような雇用を意識してもらいたい。
当初予算の一般会計がほぼ前年並みに保てたのは、交付税の実質増によるところが大きい。国の施策とも連動するため、各事業が総花的になってしまった感は否めいない。
「カネがなければ知恵を出せ」と言われる。予算をつけずに新しい行政サービスを提供するゼロ予算事業は百五十五件に増えた。地方局が独自に予算要求する仕組みも、初の試みで注目に値する。芽出しの性格が強いが、東・中・南予それぞれの地域色を酌んだ三十三事業が盛り込まれている。まさに職員の力量と意欲が試される。
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿