雇用状況が悪化するなか、「ここが好機」と採用に乗り出す企業がある。「社会貢献」を掲げつつ、人材確保や活性化など「一石二鳥」を狙うケースも。職にたどりついた人は、ずっと働けることを夢見ている。
他塾を買収し、生徒増による好業績に乗じたのが、主に首都圏で学習塾を展開する「学究社」(東京)。今回の不況下での失業者を主な対象に、昨年12月中旬から期間限定社員を最大100人、最長4カ月間、正社員や1年の契約社員も20人募集している。
東京都国立市の教室で、安田尚広さん(43)が契約社員として、1月中旬から勤務を始めている。個別指導の時間割りの組み立てなどの事務が主な仕事だ。
韓国で十数年暮らし、約3年前に帰国。日野自動車で2年半、期間従業員として働いていたが、昨年3月に辞めた。「雇用期間が切れるたびに失職の危機にさらされるのがつらかった」
子どもが2人いる。安定した仕事をハローワークで探すうちに、昨年末、学究社の求人を見つけた。韓国で日本語を教える仕事をしていたので、教育に関心があった。
月20万円は、期間従業員として一番稼いでいたころの約半分。でも今後、正社員になる見込みがある。「前よりも心は満足している」
学究社の募集には1月末現在で、期間限定社員に約15人、正社員に約25人が応募し、4人の採用が決まった。
河端真一社長が社員の募集を始めたのは、解雇された派遣社員らの様子を映すテレビのワイドショー番組を見て「子供たちがこれを見たら、おかしいと思うだろう」と危機感を覚えたことだった。
採用された人はまず教材運びや電話取りなどの事務を担う。「保護者や卒業生から『よくやってくれた』と激励された」。社内活性化にも一役買っているという。
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慢性的な人手不足を補うために募集する会社もある。
ラーメン店を全国で約400店展開する「幸楽苑」(本社・福島県郡山市)は約150人を正社員として中途採用する予定だ。武田典久常務は「ラーメン店は 回転率勝負。人を増やして回転率を上げれば利益につながる」。昨年12月下旬から約30人が応募。5人ほどが今回の不況での失業者で、現在選考中だとい う。
外食産業は「勤務時間が長い」「立ち仕事が多くてきつい」と敬遠されがち。加えて同社の正社員は全国転勤があり、なかなか人が集まらなかったという。武田常務は「もちろん社会貢献にもなればいい」とも強調する。
居酒屋「白木屋」「魚民(うおたみ)」など1470店を展開するモンテローザ(本社・東京)が500人の正社員を募集するのも人材確保策だ。毎年100店前後出店しているが、人手が集まりにくいという。
昨年12月下旬から、神奈川県藤沢市や群馬県太田市など、製造業の雇用調整があった場所を中心に説明会を開き、約1300人が応募。250人の採用が決まった。
人手が足らないのはタクシー業界も同様だ。
第一交通産業(北九州市)は、今年3月までに全国30都道府県で例年の6倍以上となる6千人の運転手を採用する予定だ。
担当者は「派遣切りなどの受け皿になれば」という狙いを説明するが、別の背景もある。「仕事がきつい」というイメージから人手不足は慢性化していて、常にハローワークに求人を出している状態がある。その解消も狙いだ。
タクシーの稼働時間を24時間に近づけて利益を上げることを目指している。
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