1000万人と500人。外国人労働者受け入れに関する数字である。時間軸や人材の質も違うので単純比較はできないが、ギャップはあまりに大きい。ここにいつまでたっても議論が収斂(しゅうれん)しないこの問題の現実が象徴されているように思う。
列島はすでに人口減社会に入った。しかも他の先進国に例を見ないスピードで少子高齢化が進んでいる。資本、技術革新とともに成長力を支える3本柱である労働力人口は急速な減少が余儀なくされる。
その意味で、「1000万人」は心強い。50年間で総人口の1割を移民で補うという自民党国家戦略本部の構想は成長重視のいわゆる“上げ潮派”を中心にまとめられた。「移民庁」創設も提言している。
技術革新は不確定要素が多いから、移民で労働力を確保する方が経済理論としては分かりやすい。ただ、これはあくまで超マクロかつ机上の理論である。
現実には独特の伝統文化と慣習を伝承してきた日本社会が、これだけ膨大な移民を受け入れられるのかという根本問題がある。欧州でさえ文化軋轢(あつれき)や治安面からブレーキをかけ始めている。
経済理論的にもメリットだけではない。労働力や消費面での効果はあっても、教育や社会保障では相当の財政や社会のコストを覚悟せねばならない。ただ大風呂敷を広げられても戸惑ってしまう。
しかし、「500人」という数もどうかと思う。インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づき7月から受け入れる看護師たちの枠である。だが、応募者は これを下回ったという。待遇や身分保障を日本人と同等とする一方で、日本語に習熟して3年以内に日本の国家試験に合格するという条件をつけたからだろう。
看護師は、すでに受け入れている高度な専門性を持つ人材と問題になっている単純労働者の中間に位置する。せっかく一歩踏み込んだかにみえたが、やはり腰が引けたのかハードルは高すぎたようだ。
もうそろそろ、全体の適正な受け入れ規模と現実的な制度を打ち出していい。
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