日本語データベースや方言研究などで知られる国立国語研究所(国研)が、行政改革の一環で組織変更されることになり、新たに作られる国語の学術研究 を行う組織の基本方針がこのほどまとまった。これまで日本語研究と共に大きな柱だった日本語教育にかかわる事業は、新組織の主要事業とされず、教育関係者 は衝撃を受けている。(伊佐恭子)
独立行政法人の整理合理化計画で、国研は、大学が共同利用する研究所「大学共同利用機関」にすることが、昨年12月、閣議決定された。これを受け て、文部科学省の科学技術・学術審議会のもとに委員会が作られ、今月7日、「国語に関する学術研究の推進について」と題する報告書がまとめられた。
報告書によると新組織は、国研を改組・転換して大学共同利用機関法人「人間文化研究機構」の下に設置するが、名称は「国立国語研究所」を引き継 ぐ。基本方針は「日本語を世界の諸言語の中に位置付け、その特質と普遍性の研究を推進する国際的研究拠点とする」ことで、主な事業は日本語研究に関する資 料・文献の収集や共同研究の推進、国際交流の強化などとなっている。
しかし、これまで主な事業だった日本語教育については、「一定の貢献を行うことが望まれる」としながらも具体的な言及はなく、日本語教育政策にかかわる調査研究事業は、実施主体・方法などについて「早急に検討を行うことが望ましい」と記すにとどまった。
閣議決定の後、日本語教育学会は、国研の移管を、国の日本語教育政策を支える中核的研究機関の消滅ととらえ、政府に要望書と意見書を出し、日本語教育に関する調査研究の継続を訴えてきた。
学会長の尾崎明人・名古屋外国語大教授は「日本各地で暮らす外国人が200万人を超え、自民党の議員連盟が『移民』受け入れの提言までした今ほど、国に、日本語教育政策の立案・実施が求められているときはない。国研の解体によって重大な影響が出る恐れがある」と言う。
新組織に引き継がれない事業は、必要かどうかも含めて、今後、主に文化庁が検討する。
尾崎教授は「学会として国立日本語教育研究所の創設を提案したい。これから具体的な構想を練るつもりだ」と話している。
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