景品やポイントによる激しい顧客獲得競争が繰り広げられている今、クレジットカード業界のリスク管理は大きな試練に直面している。7月5日、上海で 開かれた「中国クレジットカード市場の発展と展望フォーラム」で、四大銀行と一部株式制銀行のクレジットカードセンターの幹部たちは一様に、クレジット カード市場のリスクが増大傾向にあり、政府部門が早期に業界の監督管理を徹底することを期待する、と述べた。
ある株式制銀行の調査によると、最近、特に下位ランクの顧客層に関して、クレジットカード業者のリスクが上昇する兆しがみられるという。この銀行の クレジットカードセンターのゼネラルマネージャーは次のように話した。「顧客が住所と番号を変えてしまうと、銀行は債務の取り立てが難しくなる。人をやっ て取立業務にあたらせると、さらにコストがかさむことになる」。
リスク増大に関心集中
上海でのフォーラムの席上、中国人民銀行(中央銀行)支払決済局の謝衆副局長は次のように述べた。クレジットカード市場は急速に発展し、2008年 3月現在、カード発行枚数は1億枚を超え、前年同期比93%増となっている。しかし、クレジットカード市場は、なお極めて初歩的な段階にある。例えば、ク レジットカードの不良債権や与信設定には多くの課題がある。マーケティングモデルや新商品開発、リスク抑制の各方面でも、先進諸国に大きく遅れている。
農業銀行、民生銀行、光大銀行などのクレジットカードセンター幹部は、当面の関心はリスク問題にあると言う。
農業銀行クレジットカードセンターの陳景明副総裁によると、クレジットカードの発行枚数を増やす一方で、リスク管理がおろそかになり、「多重債務者」がクレジットカード業界に大きな打撃を与えている。
ある業界関係者は「中国のクレジットカード市場環境には驚かされる」と話す。業績を上げるため、銀行はやみくもにカードを発行している。発行枚数を 重視するあまり、申込者が記入した情報に間違いがなれば、即カードを発行してしまい、クレジットカード本来の「信用」という意味を忘れている銀行もある。
現在、クレジットカードのリスクには、主に詐欺リスクと信用リスクがある。詐欺リスクは、主として他人の身分証を偽造してカードを申請したり、スキ ミングを行ったりすることを指す。信用リスクとは、カード所有者が自己の支払能力を考慮せず、クレジットカードを使うことである。
中国銀行業監督管理委員会が5月に出した文書によると、クレジットカードの不法キャッシングが横行しており、リボルビング口座の貸越残高やリボルビ ング使用者数が急増すると同時に、不法仲介業者が利用限度額を超えたキャッシングに手を染め、キャッシング手数料を大幅に引き上げている。商業銀行のリボ ルビング業務に大きなリスクが潜んでいることが表面化した。
ある業界関係者は、リスク問題は結局のところコストの問題であると話す。競争を勝ち抜くため、銀行は巨額の資金を投じている。優待サービスを除き、 クレジットカード1枚にかかる初期コストは60元余り。また、銀行は年間数千万元の郵送費を負担しているが、クレジットカード自体の年会費は免除されてい る。つまり、中国のクレジットカードは海外よりも高いリスクに直面している。
企業への融資規制が行われるなか、クレジットカードローンの管理にも幹部たちの関心が集まっている。フォーラムの中で幹部らは、クレジットカードに も科学的な貸倒引当制度があるべきだと主張した。「クレジットカードローンを企業融資と同様に五段階に分類するのは、科学的ではない」
ある銀行の幹部は次のように話す。クレジットカードは特殊な金融商品であり、リボルビング方式で利息が発生するため、返済期限を過ぎた一定期間にのみ、銀行は利息収入を得られる。そのため、クレジットカードに見合った比率の貸倒引当金システムが必要になる。
ある株式制銀行のデータによると、年収15万元以上のカード所有者は、リボルビング(最低限度額による返金)が約45%を占め、年収40万〜50万 元の顧客はさらにこの比率が高い。銀行関係者は「督促が早すぎれば経営利益に影響する」と話し、監督管理部門が商業銀行の意見を広く募って、クレジット カードに見合った貸倒引当率や不良債権帳消し法を打ち出すことを希望した。
急がれる法整備
不法キャッシング行為について、業界関係者は次のように話す。キャッシングを行う利用者のほとんどは銀行から多めの与信限度額を与えられている。これはクレジットカードを対象とした法律規範が未整備なことによる。
先に述べたクレジットカードリスクに対し、中国銀行業監督管理委員会はクレジットカードの貸越限度額や、カード所有者のカード受領に対する管理強化を求めた。
関係者によると、監督管理部門は新しい「銀行カード管理条例」の公布を待って、クレジットカードに対する特定法規を定め、カード所有者や関連金融機関の権利や義務・責任、リスクコントロールに対する規定を設ける予定という。
現行の「銀行カード管理弁法」が施行されて十数年になる。ここ10年間で、クレジットカード業界は大きな変貌を遂げた。法整備が追いつかず、銀行は違法すれすれの行為を回避しがたくなっている。銀行業界は、新しい「銀行カード管理条例」の公布を切望している。
先の政府関係者によると、現行の「銀行カード管理弁法」には、デビットカードとクレジットカードの管理区分がない。新しい「銀行カード管理弁法」はカード所有者と金融機関の権利、義務、リスクなどの問題にすべて規定を設ける。
ある中国南方の株式制銀行クレジットカードセンターの総監は、次のように話す。「銀行カード管理弁法」は銀行経営の監督管理に主眼を置くものだが、 市場全体の準則を定めるという点で、管理条例の公布はリスクコントロール、特に過度の与信限度額設定に歯止めをかけることになる。
しかし、新しい「銀行カード管理条例」は、2006年の公布が見込まれていたのに、ずっと先送りされたままだ。政府関係者は今年中に条例が公布され るだろうと話す。が、事情通によると、条例の公布が遅れている主な原因は、具体的な条項で監督管理部門内に意見の不一致があるためで、年内に公布される可 能性は小さいという。
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