豊田市が外国人労働者を抱える企業に、職場内での日本語教室の開設を働き掛けている。教室運営の負担を市、企業の双方が受け持つ他地域でも例のない取り組みだ。だが、実践している企業はまだ少数派。市は二の足を踏む企業に理解を求め、教室開設を広めたい考えだ。
「うちはどこですか?」「トヨタ…デス」。ぎごちないやりとりだが、受講生らの表情は明るい。トヨタ自動車系部品メーカー、東海理化豊田工場(豊 田市鴻ノ巣町)の食堂に1月から週1回、設けられている日本語教室。残業後と夜勤前の1時間半が学習時間だ。自由参加だが、同工場で働く270人中、50 人を超える外国人労働者が受講した。
「働きながら勉強できるのがいい」と、受講生のカナダ・マユミさん(25)。ナシメント・イスラエルさん(23)も「日本の友だちをつくりたい」。
教室では市が講師の派遣と教材の提供を負担。企業側は時間と場所を用意する。教材開発には名古屋大が協力し、年間60時間で日常会話に支障がない程度の習得を目指す。
市はこれまで市国際交流協会(TIA)を中心に各種の日本語教室を開いていたが、仕事を持つ外国人の受講は皆無に近かった。「休日は家族で過ごす というのが彼らの流儀。平日の日中はもちろん、夜間も夜勤で受講できない人は多い」(TIA)。就労時間の合間ならば、無理なく受講できるのではと考えた のが、今回の取り組みの出発点だ。
同社の伊東浩明豊田工務部管理室長(38)は「作業手順書を外国語で記しても、微妙な腕の動きまでは伝えられない。品質確保に言葉によるコミュニケーションの果たす役割は大きい」と市側の取り組みを歓迎。外国人労働者の“定着”につながるとの期待も込める。
ただ、昨年度以降、教室開設までこぎつけたのは同社を含めわずかに2社。TIAによると、「日本語の勉強まで面倒見られない」と教室開設に消極的な企業が目立つという。市は各企業に教室の必要性を訴え、来年度までに地域の教室を含め10教室を開催したい考えだ。
三河地域では外国人の定住が進み、もはや「デカセギ」という言葉は過去の遺物となりつつある。外国人を単なる労働力でなく、地域の一員としてとらえ直す姿勢が企業側にも求められている。
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