2008-07-14

介護開国 人材育成の意識忘れず

:::引用:::

 インドネシアからまもなく、看護師と介護福祉士合わせて約三百人が来日し、医療や福祉の現場で働き始める。

 人的交流などで経済の活性化を目指す両国間の経済連携協定に基づく来日だ。日本が初めて本格的に受け入れる外国人看護師、介護福祉士となる。

 私たちの社会は、急激な少子高齢化の渦中にある。各分野での外国人労働者の活用と、そのための施策が必要だ。開かれた国への第一歩として、今回の来日を歓迎したい。

 来日する三百人は半年間、日本語研修を受ける。その後は受け入れの医療機関や福祉施設で、日本人と同等の待遇で助手や研修生として実習を重ね、日本の国家試験に備える。

 気がかりな点もある。

 看護師は来日から三年の間に、介護福祉士は四年以内に、国家試験に合格しなければならないことだ。

 合格できれば無期限で国内で働くことができるが、不合格だと帰国を余儀なくされる。合否のカギは、受け入れ施設での実習に掛かっているとも言える。

 受け入れ側は安易に、労働力の確保ととらえてはいけない。医療や介護の現場を支える人材を育てるという意識が必要だ。

 言葉の問題に加え、宗教面での配慮も欠かせない。インドネシアにはイスラム教徒が多い。食事をはじめとして、日常生活で実習生がとまどうことも少なくないだろう。

 周りの人が文化の違いを十分に理解し、温かく見守らなければならない。

 国も実習生への指導を、受け入れ施設に任せきりにせず、実習の実態把握などに努めるべきだろう。

 国内での看護や介護分野は、慢性的な人手不足に陥っている。背景には、夜勤の多さなど労働環境の厳しさと介護報酬の引き下げによる賃金の低さなどがある。

 国はこの面での是正にも力を入れるべきだ。外国人看護師、介護福祉士の定着につながるとともに、国内に潜在する人材の掘り起こしにもなるからだ。

 インドネシアとの協定では、今年から二年間で合わせて一千人を受け入れることになっている。今年の受け入れ枠は五百人だったが、同国内での周知が遅れたこともあって、枠を満たせなかった。

 来年以降には、同様の協定でフィリピンからも二年間で最大一千人の看護師と介護福祉士が日本にやって来る見込みだ。

 今回来日する三百人の実習が順調に進むことが、今後、日本の看護や介護の現場で働こうする外国人への呼び水となろう。


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