2008-06-10

スカイマーク 機長不足で広がる運休

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7~8月 新たに465便

 新規航空会社スカイマークの大量運休が長引きそうだ。発表済みの6月の168便に加え、9日の記者会見で新たに、7~8月に計465便もの運休を見込んでいると明らかにした。

 たった2人のパイロットが退職した穴を何か月も埋められない異常事態は、世界的なパイロット不足が背景にある。(岩城択、鎌田秀男)

世界で争奪戦 埋まらぬ穴

 ◆失 態 

 スカイマークは羽田発着の5路線を運航しており、このうち旭川、新千歳、神戸、福岡の4路線では、いずれも小型で燃費の良いボーイング737型機が運航している。

 パイロットは一般的に、操縦できる機体の「型」が決まっている。スカイマークに勤める機長約40人のうち25人が737型機の機長で、約1100便を25人で回す勤務体制だった。

 日本航空や全日本空輸といった大手は、パイロットの急病などに備えて要員を待機させておく。

 ところが、格安航空会社のスカイマークは低運賃を実現するためにコストを切り詰めており、人員もギリギリの人数しか抱えていなかった。補充の機長の手配を進めていたが、間に合わなかった。

 国土交通省は航空法に基づき立ち入り検査を行い、「乗客に混乱がないよう強く指導する」(冬柴国交相)方針だ。

 スカイマーク以外でも、似たような事例がある。日本エアコミューターは3月、パイロット不足を理由に6日間で計24便の運航を取りやめた。

 また、スカイネットアジア航空では5月、外国人機長に病歴を隠させていたことが判明している。人員の補充ができないことを恐れての不正だった。

 ◆需要急増 

 人材としてのパイロットは元々、国際的に流動性が高い。管制官とのやり取りは原則的に英語と決まっているほか、航空機メーカーもボーイングやエアバスなどに限られ、知識や技術の多くが世界共通だからだ。

 海外で機長のライセンスを持っていれば、日本で航空法の学科と実技の試験に受かれば操縦できる。実技などは大幅に免除され、半年あればライセンスが取得できるという。

 世界中で人材を探すことができるのに、なぜ不足するのだろうか。

 大きな理由は、経済成長が著しい中国、インド、中東などで旅客、貨物とも航空需要が増加していることがある。

 とりわけアジアでは00年以降、格安航空会社が相次ぎ誕生した。現在約20社が競争を繰り広げ、マレーシアのエア・アジアのように毎年20機程度、機体を増やすというところもある。

 航空需要が急増している地域では人材の引き抜きが激しく、「短期の出稼ぎのように、高い賃金を求めて航空会社を渡り歩くパイロットも多い」(航空アナリストの杉浦一機氏)という。

 関係者の一部には、アメリカの航空会社に燃油高騰や景気減速を受けたリストラの動きが広がっていることを理由に、パイロットの不足状態が緩和に向かうとの見方が出ている。

 しかしその場合でも、日本の格安航空会社は高い賃金を提示できないために、国際的な人材争奪戦に競り負けるとの指摘もある。

売上高12億円下方修正

 スカイマークは9日、運休の長期化による収入減などを見込み、2009年3月期の業績予想を下方修正した。

 7月の運休は計292便、8月は計173便となる。10日に国土交通省に運航計画の変更を届け出る。

 これを受け、売上高は、5月に発表した当初予想から12億円少ない483億円を見込んだ。営業利益は8億円少ない1億円、税引き後利益は4億6000万円少ない2億円を予想した。

 東京証券取引所で記者会見した西久保慎一社長によると、現在、新たな機長と契約を結ぶ準備などを進めており、9月には通常の運航体制に戻せるという。

 しかし、西久保社長は「世界的な(パイロットの)需要増で、以前のように技量の高いパイロットが応募してこなくなった」と述べ、パイロットの安定確保にかかる苦悩をにじませた。

操縦士確保 大手も課題

 日本航空や全日本空輸は、それぞれ自社でもパイロットを養成している。約4年の訓練で副操縦士の資格を得るが、直接の訓練費用だけで1000万円を超すと言われる。機長となるには、飛行時間などの要件を満たすために約10年かかる。

 日本では団塊世代のパイロットが大量退職の時期を迎えている。全日空では、2007~11年の5年間で400人以上が退職する見込みだ。東海大と連携して航空操縦学科を設立(06年4月)するなど、人材の育成と囲い込みを始めている。

 2010年の羽田空港の再拡張による路線拡大もあり、パイロットの確保は大手でも大きな課題だ。

  低価格運賃を前面に打ち出した航空会社。飲食の無料提供をしないなど機内サービスの大幅な簡素化も特徴。1970 年代後半に欧米で始まり、90年代後半から東南アジアやオセアニアに広がった。国内では航空分野の規制緩和に伴い、98年から新規航空会社が参入したが、 値下げ競争や原油高などで経営環境は厳しい。


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