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日本とインドネシアのEPA(経済連携協定)に基づき、8月にも、インドネシアから看護師・介護士の候補生が来日し、日本での就労をスタートする。
この分野における政府間協定で「外国人労働者」が国内で就労するのは初めて。人手不足で悲鳴を上げている国内の医療・介護施設からは、強力な“助っ人”として期待されている……。
と思ったら、実態はそう単純ではなさそうだ。
協定によると、日本は2008年度から2年間、最大で看護師400人、介護士600人の計1000人を受け入れる。候補生たちはまず半年間の日本語教育を受け、それから“配属先”の病院や介護施設(原則として1施設2人)で就労しながら、実務を学ぶ。
ここまではいい。問題は、その先だ。
というのは、候補生たちは日本人と同じ条件で、日本の国家試験を受け、パスしなければ就労できなくなるからだ。その期間は看護師が3年、介護士が4年。
その間、仕事をしながら日本語を学び、しかも筆記試験のある国家試験に受からなければ帰国しなければならない。
候補生にとって、これが非常に高いハードルであることは目に見えており、「表面は労働開国を装いながら、これでは事実上の労働鎖国と変わらず、国家的詐欺に等しい」(坂中英徳・外国人政策研究所長)という厳しい批判もある。
お役人の「開国意識」と現場感覚の落差
なぜそこまで厳しいハードルを設けなければならないかというと、そもそも日本側窓口の厚生労働省は「政府間協定でインドネシア側が望んだ希望に沿っただけであり、人手不足のために来てもらうのではない」としており、「労働開国」の意識はまったくない。
日本人並みの条件で仕事をしてもらい、それがむずかしいなら帰国もやむなし、という基本的立場なのだ。
近年、看護・介護現場の厳しさは知られており、勤務時間や賃金などの待遇を改善すれば、日本人の希望者も大きく増える可能性はありそうだ。
しかし、今度は健康保険や介護保険の負担増、財政の負担増といった問題に発展する。厚労省の頑ななまでのスタンスは日本の「低負担・高福祉」という実情に対する疑問を投げ掛けるもの、と考えることも不可能ではない。
しかし、実際の看護・介護現場の話を聞くと、そうした制度上の問題はともかく、利用者の希望に沿うには、とにかく人手を増やすしかない。
日本人でも外国人でもいい。そんな切羽詰った声が大勢を占める。
むずかしい手術や医師の補助業務などには、高度スキルの看護師が必要であろう。しかし、看護助手と呼ばれる人々の業務分野まで広げて考えれば、資格試験が必要とは思われない。
同様に、お年寄りの介護現場で、流暢な日本語が不要なことは実証済みだ。「日本語による引き継ぎができないと困る」といった理由まで持ち出すのは本末転倒ではないだろうか。
そんなことを議論しているうちに、いよいよ、インドネシアから候補生が来日する。せっかくの制度だ。候補生が失望して帰国することのないよう、政府は資格レベルの引き下げなど、就労環境の改善を図るべきだ。
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