2008-06-25

介護業者倒産、最悪ペース 人材確保ますます困難

:::引用:::
■報酬単価、国の方針次第

 「給与面などで人が集まらない」「制度と介護の実態が合わない」…。25日、明らかになった民間信用調査会社の調査では、介護事業者の倒産が最悪ペース となっているだけでなく、人手不足や事業者報酬の引き下げが経営に打撃を与えている実態が浮き彫りになった。近畿では既存業者の廃業と同時に、新規業者の 参入などもあり増減に大きな変化はなかったが、重労働に見合う給与を支払えないことや、他業種に人材を奪われていることもあって、介護職の確保はますます 難しくなっている。

 奈良県内の介護業者数は、4月現在で2093事業所。前年同期より33事業所増えたが、昨年度は1年間で133事業所が廃止を届け出ていた。3月末現在 で6154事業所ある京都府も特別養護老人ホームなどの「施設系」はわずかに増えたが、訪問介護やデイサービスを行う「居宅系」が減り、居宅系で事業廃止 を届け出たのは、平成18年度が93事業所、19年度は120事業所にのぼったという。

 大阪府内では介護保険制度が始まった12年4月と比べると、今年4月時点でほぼ2・5倍の1万123件に増えたが、「伸びは鈍化しており、ほぼ頭打ち状態」(府事業者指導課)という。

 背景には、介護職の人手不足や事業者報酬の引き下げがある。現行制度では、需要がいくら増えても、報酬単価は国が決めるため、需要増に伴う収入増が見込 めるかどうかは政府の方針に左右される。過去2回の報酬改定では全体の水準はいずれも引き下げられ、利益を上げるのは困難で、人を雇うための人件費アップ もままならない状況に置かれているという。

 大阪市内で訪問介護などを行っている介護事業者は「相次ぐ報酬引き下げで、人員基準を満たそうとすると、人件費がまかない切れなくなる。家賃を払わなくていい自宅事業者ならましだが、そうでなければやっていけない」。

 昨年11月に開業した神戸市垂水区の通所介護事業者「パールディサービスセンター」の藤本真知子代表(54)も「一時期、介護事業者が一斉に増えたが、 国の推進する在宅介護は現場の実態に沿っておらず、小規模の介護事業者が廃業に追い込まれている。うちも赤字続きで相当の危機感を持っている」と厳しい現 状を話した。

 事業者らによると、人員基準の厳格化で、例えば、ヘルパーが点滴などの付き添いで病院を訪れても、待ち時間の介護報酬は基本的に出なくなった。それでも 事業者としてはヘルパーの時給を切るわけにいかず、経営に負担がかかるなど、制度と介護の実態があわない部分が多いという。

 また、訪問介護では、夕飯時などにサービスを求める時間帯が集中するため、夕方から夜にかけての仕事が多くなり、ヘルパーの主力になっている主婦などから敬遠されることも少なくないという。

 大阪市内の業者は「ヘルパーの仕事をお手伝いさんとしか認識しない利用者も多く、仕事として、正当に評価されないことも人材不足につながっている」と指 摘。「ここ最近は、よりいい条件を求めて、大手の事業者や、他業種に流れる人もおり、雇用は流動的。核になる人が抜けて事業が成り立たなくなる事業者もあ る」と話している。
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