2008-06-25

厚生労働省発表:「研修・技能実習制度研究会報告」のとりまとめについて

:::引用:::

「研修・技能実習制度研究会報告」のとりまとめについて

外国人研修・技能実習制度については、一部の受入れ機関において、研修生が実質的に低賃金労働者として扱われていたり、技能移転のための適正な実習 指導が行われていない等の問題が生じており、「規制改革推進のための3か年計画(平成19年6月22日閣議決定、平成20年3月25日改定)」において、 「実務研修中の研修生の法的保護の在り方」等について「遅くとも平成21年通常国会までに関係法案提出」等必要な措置を講ずることとされている。

厚生労働省は平成18年10月に「研修・技能実習制度研究会(座長:今野浩一郎 学習院大学経済学部教授)」を設置し、制度の適正化や在り方に関す る事項について検討を行ってきたところである。この間、平成19年5月には、制度見直しの方向性について中間報告をとりまとめ、実務研修中の研修生の法的 保護のあり方等について提言を行うとともに、ブローカー対策や技能移転の実効性確保等の課題を取り上げ議論を継続してきたところである。

こうした検討の結果、今般、最終的なとりまとめを行った。(別添)本報告は、中間報告で指摘した事項に加え、制度目的である実習の実効性を一層確保する観点から更に検討すべき事項について、その検討の方向性を打ち出すものである。

なお、詳細な報告書については、追って公表することとする。


研修・技能実習制度研究会報告(概要)

別添

【中間報告(平成19年5月)のポイント】

1.実務研修中の研修生の法的保護のあり方

研修生の法的保護を図る観点から、「研修(1年)」+「技能実習(2年)」については、最初から雇用関係の下での3年間の実習とし、労働関係法令の適用を図る。

2.技能実習の実効性の確保

実習指導員の配置、技能実習終了時の評価等を義務づけ。また、対象職種については、実習生の幅広い技能の修得が可能となるよう見直す。

3.受入れ団体の責任強化、ブローカー対策等

受入れ団体は、技能実習中の受入れ企業に対する監理責任を負うこととする。また、営利目的の団体の設立を防止するため、本来の事業協同組合等としての活動実績を受入れ要件とする。

併せて、不正行為を行った場合の規制の厳格化、送出し機関の適正化等の措置を実施。

4.より高度なレベルの技能実習

再技能実習については、概ね技能移転と適正化が図られ、失踪率も低い「企業単独型」に限り、2年間に限定し認める。

5.チェック機能の強化

JITCOにおいて巡回指導等を強化するとともに、その役割・体制を抜本的に見直す。

今回の報告は、制度の適正な運営と実効性を確保するため、悪質な企業・団体を排除する一方、優良な企業・団 体を育成する観点から、上記のポイントに加え、実習生あっせんシステムの適正化、達成目標である技能検定3級レベル以上の取得に向けた実習の実効性確保、 法令遵守・実習状況に係るチェックの強化等について、検討の方向性を打ち出すもの。

1.ブローカー対策等、実習生の需給調整のあり方

実習生あっせんシステムを適正化する観点から、受入れ団体に対する許可制の導入等を検討。

2.実習の実効性確保

技能検定3級レベル以上の技能修得に向けて、受入れ団体が企業の実習を指導、支援する役割を担うとともに、3級レベル以上の受験の義務づけ及び合格率が高い企業に対する優遇措置等を導入。

また、受入れ人数について、受入れ企業単位で、ストック面の制限を設定。

3.法令遵守・実習状況に係るチェックの強化

企業・団体の法令遵守、実習実施状況のチェック強化、指導・勧告等の実施について検討。

4.制度運営に係る役割分担

企業に対する専門的・技術的支援は受入れ団体の役割とし、法令遵守・実習の監理的チェックは一定の公的機関が担うこと等役割分担の明確化を検討。

5.その他の課題

トータルな技能移転の推進 等。


1.ブローカー対策等、実習生の需給調整のあり方

○ 現行制度において、受入れ団体の一部が高額な管理費を徴収したり、不正行為の温床となっているケースや、送り出し機関が高額な保証金等を徴収するケースがあり、当面、以下のような措置を実施することが必要。

・ 不正行為を行った受入れ企業・団体に対するペナルティーの強化

・ 受入れ団体に対する職業紹介事業の許可、それに伴う紹介手数料の透明化

・ 受入れ団体が徴収する管理費等の金額・使途の透明化

・ 送出し国政府に対し、送出し機関の適正化を要請

○ しかしながら、研修生・実習生のあっせんは国内外に渡っており、その募集から始まり、日本の企業に 受け入れられるまでに、様々な手続、経路を経る形となっており、実態としては、受入れ団体・送出し機関の他、国内外のあっせん機関(ブローカー)等が介在 するケースが少なくない。

○  こうした要因もあり、高額な管理費や保証金等の問題、募集時の条件と入国後の実態の乖離をめぐるトラブル、人権侵害等が発生しており、あっせんに関わる諸 問題の抜本的解決のためには、以下の点をポイントとして、国内外を通じた実習生あっせんシステム全体を適正にコントロールする仕組みをつくっていくことが 必要。

(あっせんに係る仕組みのポイント)

[1] 国内の受入れ団体について、実習に係る適正なマッチングの実施や受入れ企業に対する実習支援の実施を担保する観点から、許可制の導入を図る。

[2] 国内外に渡る諸々のあっせん機関についても、届出制、受入れ団体を通じたコントロール、送出し国政府との連携による適正化等の方法を検討。

[3] 送出し機関については、引き続き、送出し国政府に対し保証金等の適正化を要請。



2.実習の実効性確保

○ 実習については、国際技能移転という制度趣旨が形骸化しないよう、[1]実習指導員の配置、[2]1年経過時の技能検定基礎2級レベルの受験、[3]実習終了時の評価等により、その実効性を上げていくことが必要。

○ 今後は、さらに、3年間で着実に3級レベル以上を取得して帰国できるよう、3級取得に向けたイン

センティブの付与や、企業の実施する実習を支援するための取組を強化していくことが必要。

制度設計のポイント


(制度設計のポイント)







[1] 基礎2級レベル試験については、実習生活に必要な日本語や安全衛生の水準を担保するためにも重要であることから、引き続き維持する。

[2] 実習終了時までに3級レベル以上の受験を義務づけることとし、合格率の高い企業に対する受入れ枠の拡大等優遇措置を講じる。(各企業・団体の合格率は入国管理局等に報告させ、公表する。)

[3] 受入れ団体は、実習期間を通じて、定期的に企業を巡回し、実習内容・方法等について企業を指導、支援する役割を担うこととする。
 この場合、受入れ団体において個々の実習生の技能レベルを評価シート等によりチェックしたり、専門家を企業に派遣してアドバイスする等の取組の促進を図る。

[4] 本人の技能修得意欲を向上させるため、能力に応じた賃金ガイドラインの導入を奨励するとともに、帰国後に3級取得が評価されるよう送出し国に対する技術協力を進める。

[5] このほか、実習生の生活面や仕事上の悩み、トラブル相談に専門的に対応する体制整備も進めていく。


○ また、実習指導体制(指導する側の日本人従業員の体制)を確保する観点から、新規受入れ人数(フロー)の制限に加え、ストック面の制限(実習生と日本人従業員についての一定の比率)を設定することが必要。


3.法令遵守、実習状況に係るチェック機能の強化

○ 現在、技能実習の適正化を図るため、JITCOにおける巡回指導等の強化、労働基準監督機関や出入国管理機関等による監督指導、実態調査を積極的に実施しているが、依然として、飛ばし、パスポート取上げ等の不正行為や、労働関係法令違反が頻発。
 このため、JITCOにおいて、巡回指導等の強化を図っているところ。

○ しかしながら、現状において、立入権限も伴わない指導・助言等のチェック機能にとどまっているため、不正行為等の摘発に対して必ずしも十分な実効力を伴っていない。

○ このため、受入れ企業・受入れ団体における法令遵守や、実習実施についての適正化を徹底するため、以下の点をポイントとして、チェック機能を強化することを検討する。

制度設計のポイント


(制度設計のポイント)

[1] 適正な実習や雇用管理・労働条件等に係る「ガイドライン」を策定し、ガイドラインに基づき、一定の公的機関が受入れ企業に立入調査等を行い、助言・指導を実施。悪質なケースに対しては勧告等の措置。

[2] 法令違反や指導等に応じない企業については、入国管理局と連携し、受入れ停止等の措置を科す。

[3] 受入れ団体の監理・指導が不十分と認められる場合は団体に対しても改善を指導し、悪質なケースは許可を取消す。



4.制度運営に係る役割分担

○ 現行制度では、受入れ団体が研修生・実習生受け入れのほか、非実務研修の実施や研修中の企業に対す る監理責任(研修の適正実施に係る指導、監査等)を負う一方で、JITCOが受入れ企業に対する巡回指導を実施し、入管法令・労働関係法令の遵守状況のほ か、実習計画の進捗状況等もチェックしている。

○ また、JITCOでは、上記巡回指導のほか、制度を円滑に推進するためのサービス機関として、送出し国政府との定期的な協議、受入れに関する企業向けの相談会・セミナーの開催、入国・在留手続の援助等を行っている。

○ 今後、企業の実習実施に係る監理面でのチェック機能、実習内容面での専門的技術的援助、実習生本人に対する相談援助等を強化していくためには、関係機関の役割分担を明確にすることが必要。

○ 具体的には、制度運営に当たっては、現在受入れ団体やJITCOが担っている各種の役割の中 で、[1]実習生と企業のマッチングや実習実施に係る専門的・技術的支援の役割と、[2]法令遵守や実習に係る監理的チェックの役割については明確に切り 分けた上で、前者については受入れ団体に、後者については一定の公的機関に担わせることが適当。
  このほか、送出し国政府との協議、入国手続の援助等については、中央レベルでの取組みが不可欠。
 JITCOについては、こうした役割分担の検討の中で、そのあり方を抜本的に見直すことが必要。

(役割分担のイメージ)

○ 受入れ企業    → 実習の適正実施、3級レベル以上の受験

○ 受入れ団体    → 実習生と受入れ企業のマッチング、実習内容・方法についての専門的・技術的支援等

○ 一定の公的機関 → 法令遵守、実習に係る監理的チェック

○ その他中央レベルでの送出し国政府との協議、入国手続の援助等の取組が必要


5.その他の課題

○ 「研修」のみで1年以内に帰国する場合の取扱い

技能実習には移行せず、「研修」のみで1年以内に帰国する場合についても、「実務研修中の研修生の法的保護を図る」べき必要性に変わりはないことから、実務研修部分については労働関係法令を適用することとし、在留資格「研修」の取扱い等を整理することが適当。 

○ トータルな技能移転の推進

途上国に技能移転を図るためには、技能実習だけでなく、トータルな技能移転を推進する中で、適切に関連づけていく必要がある。

このため、送出し国における技能労働者の育成への協力、適正な評価制度の移転と処遇改善等を並行して進め、トータルな「人づくり」支援の中で、実習生が技能修得意欲を高め、帰国後にその能力を発揮できる環境整備を進めていくことが必要。

○ 産業構造等の問題

実習生を受入れる動機・背景として、一部の産業・企業において、産業構造上の問題や労働環境等の状 況から日本人従業員を十分に確保できない実態が存在する。こうした動機等を背景とする受入れにおいて、専ら低賃金労働力としての活用が横行することのない よう、制度の見直しを行う。

他方、本報告書のテーマそのものではないが、労働力問題については、背景となっている 産業構造の問題や、ものづくり分野における人材育成・確保等のあり方についての抜本的な議論が必要であり、政府全体として、中長期的な産業・経済政策、教 育政策等も含めた総合的な観点から議論していくことが必要。


研修・技能実習制度研究会委員名簿
 
今野浩一郎 (学習院大学経済学部教授)

上林千恵子 (法政大学社会学部教授)

北浦 正行 ((財)社会経済生産性本部事務局次長)

丹野 清人 (首都大学東京都市教養学部准教授)

樋口 美雄 (慶應義塾大学商学部教授)

森永 卓郎 (獨協大学経済学部教授)

山川 隆一 (慶応義塾大学大学院法務研究科教授)

渡邊 博顕 ((独)労働政策研究・研修機構主任研究員)

(注)◎は座長 (敬称略、五十音順)


●●コメント●●

0 件のコメント: