【バンコク=林浩樹】タイの反タクシン元首相派の市民団体「民主主義のための市民連合(PAD)」が、憲法改 正論議をきっかけにサマック首相の退陣を要求している問題で、同首相は二十二日、テレビ番組で「私は選挙で合法的に選ばれた」と述べ、辞任を拒否した。 PADは退陣まで抗議活動を続ける構えで、政局は緊迫度を増している。
今回の騒ぎの引き金となった憲法改正問題は、サマック首相率いる最大与党・国民の力党が、党幹部による選挙違反事件で解党の危機に立たされたため 浮上した。改憲の是非を問う国民投票に意欲を見せた首相に対し、PADは「憲法改正はタクシン氏の政界復帰に道を開く」として、五月末から首相府近くで改 憲反対の座り込みを始めた。
首相は当初、座り込みを強制排除する方針をちらつかせたが、軍や警察はこれを拒否。政権内でも不敬発言で閣僚が辞任に追い込まれ、防戦一方の展開 となった。勢いづいたPADは要求を改憲反対から政権打倒にエスカレートさせ、二十日には二万五千人が首相府を包囲、無期限の座り込みを宣言した。
サマック首相は二十二日のテレビ出演で、辞任を拒否する一方、野党民主党が提出した首相や主要閣僚の不信任決議案の審議には応じる姿勢を強調した。連立与党が安定多数を占める下院で同案を否決することで、退陣問題を沈静化させたい狙いがある。
PADは一昨年、タクシン氏の金権体質を批判して大規模デモを先導し、クーデターにつながった。今回の退陣要求も「サマック政権はタクシン氏の操 り人形」(PAD幹部)と、タクシン氏の復権阻止が最大の目的で、仮に不信任案が可決されても運動の手を緩める可能性は低い。一昨年のクーデターを主導し た軍は今のところ静観しているが、再びPADに肩入れして退陣圧力を強めるとの見方もくすぶっている。
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