子化問題や労働人口の減少など、日本がこの先抱える重要問題への解決策として、、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と 生活の調和推進のための行動指針」を策定するなど、今年から政府も本格的に力を入れる"ワークライフバランス"。当事者である労働者たちは今の現状を実際 にどのように感じているのだろうか。
人材派遣会社のエン・ジャパンが2008年4月17日から5月21日にかけて、同社が運営する人材紹介サイト「[en]転職コンサルタント」で行っ たアンケート調査によると、回答者の1日の平均労働時間は「10.1時間」。これに対して「長い」と感じている人は全体で50%、「ちょうどよい」と感じ ている人は48%と、ほぼ半々を示した。しかしながら、年代別の回答では、20代 - 40代までは「長い」という回答が50%を超えたのに対して、50代ではは44%にとどまり、年代別の価値観の違いが明らかになった。また、帰宅後の1日 の平均自由時間は、全体で「2.0時間」。現在の自由時間の長さを「満足」と回答したのは全体で16%で、「やや不満」と回答した割合が32%ともっと多 かった。
一方、東京都が今年2月22日から3月9日にかけて都内在住の満20歳以上男女に行った調査では、54%が「ワークライフバランスが実現できてい る」と答えている。さらに、1日の勤務時間・通勤時間の合計別に実現度を調べたところ、"実現できている"と感じている人の割合は「4時間未満」の回答者 で71.2%、「4~6時間未満」で65.0%、「6~8時間未満」で65.7%、「8~10時間未満」で61.2%、「10~12時間」で53.5%と いずれも過半数を超えた。これに対して「12~14時間未満」では36.7%、「14~16時間未満」で26.6%、「16時間以上」で36.2%となっ たことから、ワークライフバランスの実現のための通勤時間を含めた労働時間は、12時間が境目と言えるだろう。
エン・ジャパンの調査では、現在働いている職場を「働きやすさ」よりも「働きがい」で選んでいる人が多いことが明らかになった。現在の職場を「働き がい」で選んだと回答したのは全体の58%を占めている。ところが、転職先で優先するポイントでは「働きやすさ」が54%を占め、結果が逆転していること から、実際の就職後に「働きやすさ」の重要さを認識する人が多いようだ。また、この結果を裏付けるように、転職先を検討する際には87%が「ワークライフ バランスを考慮する」と回答しており、具体的に考慮する項目では、「休日休暇」(82%)と「労働時間(残業時間)」(78%)が回答の大多数を占めた。
一方、東京の調査でも、ワークライフバランスへの肯定的な姿勢が目立っている。
「ワークライフバランスを進めるべき」という回答は全体で8割にものぼり、特に30代と40代の女性では9割以上が支持している。さらに、その理由 として挙げられたのは「仕事以外の生活を楽しむことは仕事の意欲にもつながるから」(59%)、「仕事だけが人生ではないと思うから」(49%)、「女性 だけでなく男性も家事や育児・介護を行うべきだから」(22%)といった意見の割合が高く、ワークライフバランスの本来の意味である"仕事の生産性の向上 には私生活の充実が不可欠"という価値観が人々の間に浸透している実態がうかがえる。ただし、消極派の理由として「実現が難しそうだから」(35%) 、「自分の都合を優先して働く人が増えると、職場の人に迷惑がかかるから」(31%)、「家事や育児は女性がすべきだと思うから」(20%)といった回答 が続き、"仕事第一"という旧来の社会通念も依然として根強いようだ。
今回取り上げた調査結果が示すように、労働者の間にワークライフバランスへの意識は確実に浸透しつつあるようだ。それでは実際にそれを実現するため に人々はどのような取り組みを求めているのかを知るために、東京都の調査では、企業/行政に必要な施策についても質問している。その結果、企業に求められ るものとして、「育児・介護の休業・休暇制度を充実する」が41%でもっとも多く、以下「いったん退職しても復職できる再雇用制度を充実す る」(34%)、「育児・介護で仕事を休んでも不利にならない人事評価制度をつくる」(28%)と続いた。行政に対しては、「柔軟な働き方が実現できる法 令や雇用環境の整備」、「保育施設や介護施設などの充実」が必要だとする人がともに約5割を占めたほか、「企業表彰制度や補助金等を設けて企業の取り組み を促す」(25%)といった環境整備を求める声が目立つ。さらに、労働者個人に必要な取り組みとして「仕事以外に趣味や生きがいをもつ」(49%)に続 き、「仕事の仕方を工夫して定時に帰る、残業を減らす」(41%)、「職場や地域でお互いに助け合うことができる仲間をもつ」(34%)が続き、労働者自 身の間にも働き方を変える必要性を感じている人は多いと言えるだろう。
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