オープン系の技術についていけず自信喪失状態。どう現状を打開すればいいでしょうか?
1年半前に大手メーカー系から製造系のシステム関連会社に転職しました。前職では新規案件中心に携わってきており,汎用系中心の開発でした。現職ではオープン系の開発専門で技術がついていきません。どのようにスキルアップをすべきでしょうか?
社内教育制度はありません。また,現職は既にシステムが開発済みで,その保守と改修案件を担当しております。元々の前提知識がないため保守,改修 案件を担当しても,開発したドキュメントも残っていない状態で,中々知識が蓄積されません。そのうえ開発は会社の方針で協力会社へほぼ丸投げ状態です。
トラブル発生時は結局,協力会社へお願いするしかありません。ただし,トラブルの責任は当然ながら自分がとります。SEとして採用されましたが,自分が進むべき道や存在価値が見えなくなってきて自信喪失状態です。どう現状を打開すればよいでしょうか?
(SE/男性・40歳)
A: オープン系アーキテクチャを,汎用系の用語に置き換えて学べ
現状を打開するには,協力会社とあなたとの差別化を明確にすることでしょう。それには,発注元として持つべき業務知識をしっかりと持つのが第一歩です。
オープン系に関する苦手意識については,デメリットをメリットに変える発想が必要です。私の経験から言えば,汎用系を10年以上経験していれば, オープン系にもそれなりの勘が働きます。逆に,汎用系を知っていることで,オープン系の理解が深まる可能性のほうが高いのです。あなたがデメリットと思っ ていることがメリットにつながるかもしれない,ということです。
一度,体系立ったアーキテクチャ系の基礎研修(社内研修がなければ社外研修)を受けるのがよいでしょう。その際に,すべての用語を一度,汎用系の世界に置き換え/翻訳して理解してみましょう。
もちろん,置き換えられない場合もありますが,それは新しい知識として吸収すればよいのです。日本人が英語を学ぶよりは,汎用系の技術者がオープ ン系を学ぶほうが,はるかに優しいはずです。置き換え/翻訳ができれば,あなたの自信はかなり増すはずです。その次にオープン系の設計/開発,プロジェク トマネジメントの研修を受ければ,随分と理解度が高いはずです。
スキルにある程度の自信がついたら,次は担当するシステムの理解でしょう。既存システムは当然何らかの業務を運用しているので,どの業務がどのよ うにシステムとして実現されているかをアーキテクチャ的に理解すること,そしてサブシステムがどのような構造になっているかを把握すること,最終的にはそ の構造の中でプログラム群がどのように構成されているかを把握することです。
あなたと協力会社との差別化は,どのプログラムをどう修正するかではなく,どのような構造の中で何を修正すべきかを業務の観点から語ることでしょう。そのためには努力が必要ですが,これまでの経験があるのですから,きっとやれると信じています。
Q: 無資格の後輩が先に昇任するのは恣意的な人事異動としか感じられず,モチベーションが上がらない。
昭和期からおおむね年功序列で昇任させる職場で,現在も大きな流れの変更はない職場である。年に1度以上,全職員が異動に関して上司と直接面談する日があり,直接の上司だけでなく,上司の上司にも直接面談する権利があるため,両方の場で成長したい旨を明確に伝えている。
自費にて職務に関係ある資格だけでなく,職務には直接関係のない資格にも挑戦し視野を広げている旨のアピールも,職場では類を見ない20以上の法的資格を取得している旨も伝えている。
このような状態で,今よりも上のポストへ,かつ異なる職務内容への異動を10年以上前から継続的に伝えているが,同年齢の者のみならず年下の後輩までもが先に上位ポストへ異動している中で,同一内容の職務を継続させ,昇進もさせてもらえない。
無資格の後輩が先に昇任するのは,年功序列が強い職場では恣意的な人事異動としか感じられず,モチベーションが上がらない。
(管理運用の時間が長いが設計・契約・法手続きなども勤務内容に含まれる係長。係長経験は14年目/男性・43歳)
A: 転職,独立の視点で動いて,自分の社会的価値を確認せよ。
このケース,あなたの立場は社内で非常に難しいものと思えます。すばり,転職または独立をお薦めします。
ただし,次の3つは心得ていてください。
まず,知識が広く多くの資格を持っていることと,特定の仕事で素晴らしい業績を上げる突破力は,別の次元の話です。次に,社内での出世には,業績 を上げる突破力が評価されます。最後に,いくら自分が努力してもそれが会社の評価対象となる分野でなければ出世には無意味です。
以上は,年功序列が浸透している会社でも同様です。年功序列であっても,会社としては,優秀で功績のある若い社員を出世させなければ,転職されてしまう危険があります。資格もない年下の人間が出世するのは,そのような事情があるからだと想像できます。
自分で経営してみれば分かるのですが,会社に必要なのは業績で,それを支えてくれる社員です。それに関係の無い知識/資格をいくら持っていても,それは個人の興味の問題で,会社として評価する必要のないことです。
あなたが多くの資格を持っていることが,どれだけ転職に有利になるかは分かりません。あなたの年齢であれば即戦力として期待されますから,その必 要な戦力部分の能力のみが評価されるでしょう。そして実績/業績を上げた場合のみに評価されるのは,どの会社でも変わりありません。
あなたが独立の道を選んだ場合,まずは営業に困るでしょう。従って,誰かよいパートナーと組むのがお薦めです。様々な資格をお持ちなのでしたら, いっそのことIT業界を出るのも選択肢かもしれません。その場合は一からやり直しですが,それはそれでやりがいがあるでしょう。とにかく一度転職,独立の 視点で動いてみて,自分の社会的価値を確認してみることをお薦めします。
Q: 興味が薄いエンジニアは,訓練しても経験させても「センス」が向上しないように感じます。
「『センス』を磨くことができる効果的な方法があればお教えください」という質問への回答のフィードバックとして。
なるほど。
センス=興味の深さ×「地頭」のよさ×経験(ノウハウ)
という式に共感しました。特に「興味の深さ」がキーワードと思いました。
無感動な(センスの無い)メンバーの場合,ここらをヒアリングしてみると「大企業でも通用する技術者になりたいです」というような答えが返ってき ます。しかし聞いた側からすると,それはどうも「なれたらいいな」という希望であり,「なりたい」という意志ではないように感じ取れます。それは言い換え ると「興味の深さ」が相対的に低いということになります。
PMの立場からすると,それぞれのメンバーの「興味の深さ」「『地頭』のよさ」「経験(ノウハウ)」がどれ程のレベルなのかは,なんとなく分かり ます。ところが本人からすると,「『地頭』のよさ」「経験(ノウハウ)」は他メンバーと比べてなんとなく感じることができたとして,「興味の深さ」は,他 に興味があるものがなければ,もしくはほかの世界を知らなければ,相対的に自分の中の“興味ランク”は高くなります。しかし,本当に技術を渇望している他 のメンバーと比べると,ないに等しい。それが,センスの差として出ているのか,と。そういった意味で下記の様な構図になっている気がします。
0<自分の中の興味<会社(PM)が期待する興味(センスとして)
となると,「興味の深さが」が0では無いわけだから,「『地頭』のよさ」「経験(ノウハウ)」を徹底的に向上する必要がでてきます。しかし経験的 に感じることは,興味が薄いと,訓練の場を与えたとしても,経験させたとしても,なかなかセンスは向上しないように感じます。やはり自身の「意志」が一番 肝心なのでしょうか?
(管理職,PM/男性・35歳)
A: 展示会,セミナー,記事,書籍,教育などで若手の視野を広げよ。
答えはYESです。ただし,自身の意志に対して,組織が何もできないとは限りません。
私は,特に技術者は「井の中の蛙」と「ゆでガエル」という2つの「カエル現象」に陥りがちだと思います。
これらはいずれも,「興味と向上心の関数」で,センスと大きく関係すると思うのです。センスの無い部下や同僚に対するあなたの不安は,彼/彼女がその2つのカエルになってしまわないか/なっているのでは,ということなのかもしれません。
興味と向上心は似ていますが,例えばご質問文にある「なれたらいいな」は興味の問題であり,「なりたい」は向上心の問題でしょう。興味がなければ向上心 もないでしょうが,何事にも熱心な人材は,特に興味がなくとも,熱心に取り組むうちに興味が深まるということもあります。
「井の中の蛙」現象は,目の前の技術のみに拘泥して,ほかの先進技術に目を向けなかったり,プロジェクトの中で全体像を見ないで自分の業務の殻に 閉じこもったり,といった状態です。問題は興味の対象が狭くなることなのですが,「一芸に秀でる」という技術者の本分としては正しい姿なのです。向上心が あって,徹底的にスペシャリストとしての経験を積めば,その分野のセンスも磨かれるでしょう。しかし,興味の対象が狭くて向上心もなければ,当然センスも 磨かれません。
「ゆでガエル」現象は,かつては素晴らしい技術者であっても,興味も向上心もなくなって新技術からどんどん取り残される現象です。管理職になる と,この症状が目立ちます。それでも,かつてセンスがあった技術者であれば,ある程度向上心さえあれば,何とか対処できるでしょう。これは経験があるから です。問題は,若い技術者が経験も浅いままに「ゆでガエル」になるケースで,これは外界に対する興味と向上心がないからでしょう。
興味は自分自身の問題ですが,それでも,若手には見えない世界を,組織が見せてあげることはできます。もし,若手に「エンジニアの魂」が少しでもあれば,何かに興味を持つはずです。IT業界に入ったからには,何にも興味がないとは,私は思いたくありません。
展示会,セミナー,記事,書籍,教育などで若手の視野を広げることは,会社の責任だと思います。視野が広がれば,興味の湧く対象が出てくるかもしれません。センスに必要な個人の意志を高めるためには,興味の対象を広げる組織の支援も大事だということです。
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