大学で必要な能力に特化した日本語教育が進化している。
「いろいろな」は「様々な」。「だんだん」は「次第に」。「リポート作成」のテキストは、話し言葉から書き言葉への変換が練習問題になっていた。 「口頭発表」のテキストでは「一般的には」など、発表でよく使う表現が並ぶ。独立行政法人・国際交流基金が、日本で大学生活を送る留学生向けに2006年 に開発したオリジナル教材だ。
「会話」のテキストでは、教授とのやりとりが中心。「今よろしいですか」「お手伝いしましょうか」など、普通の日本語教育なら、上級レベルの敬語も登場する。
東南アジア諸国連合(ASEAN)にバングラデシュを加えた11か国から選ばれた18人が毎年、日本の大学院に進学する前に、この教材を使って、 同基金の研修施設、関西国際センター(大阪府田尻町)でゼロから日本語を学ぶ。期間は7か月。文法学習は最低限にとどめ、必要な日本語を最短で学ぶことが 目標だ。
研修生は、食堂や図書館を備えた宿泊棟で生活し、茶道体験や地元の家庭へのホームステイ、京都、奈良、広島への研修旅行など、日本理解を深める行事に参加もできる。
「リポート作成は、理系と文系を分けて指導した方がいいのでは」。11日、同センターを訪ねると、3人の日本語教育専門員が、指導法について協議していた。日本の大学院に進学した元研修生の声を聞きながら、テキストを日々、刷新している。
それぞれの研究テーマに合わせた個別指導のため、専門的な
センターを訪れる元研修生から聞き取り調査もする。三重大学大学院に進んだインドネシア人留学生、ナワウィさん(31)は「授業にしっかりついて行けるし、研究の準備が十分にできる」と絶賛した。
国際交流基金は、事業の柱の一つに外国人に対する日本語教育を掲げており、関西国際センターは、日本に赴任予定の外交官や公務員、若手研究者ら に、それぞれの専門に役立つ日本語を教えてきた。このノウハウを応用し、1996年からは、日本に留学予定の学生に対して、現地での日本語教育を手がけて きた。
最近では、学内での日本語教育に頭を悩ませる大学から問い合わせが増えている。同基金日本語事業部の
同基金では、海外での日本語教育拠点の設置も進めており、現地の大学と協定を結ぶなどして、31か国40か所まで増やしてきた。こうした拠点でも、このテキストを使い、日本への留学を考える学生を増やしたいという。
留学生と大学双方の負担を減らすためにも、短期間に必要な日本語を習得する仕組みは欠かせない。(大広悠子、写真も)
語学教育拠点 英国のブリティッシュ・カウンシル(113か国213か所=2007年5月現在)やドイツの ゲーテ・インスティテュート(83か国147か所=08年1月現在)が目立っている。04年から展開する中国の孔子学院も08年3月現在、69か国238 か所と急増している。国際交流基金は、海外の日本語教育拠点を2010年までに100か所以上にする計画だ。
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