2008-06-23

【主張】外国人看護師 高度人材確保のモデルに

:::引用:::
経済連携協定(EPA)に基づくインドネシア人看護師と介護士の受け入れが早ければ7月下旬から始まる。医療や福祉分野での外国人労働者の本格的受け入れは初めてである。

 少子高齢化で労働人口が減る中で、日本は外国人労働力の活用が課題だ。今回の受け入れを人手不足を補う安価な労働力と見なすことなく、長期的視点から海外の高度人材受け入れを考えるモデルケースとしたい。

 この受け入れは、人材の輸出を図りたいインドネシア側の要求で実現の運びとなった。日本側には慎重論もあったが、他のアジア諸国とのEPA交渉を円滑に進める狙いもあって同意した。

 介護士らの人材確保に悩む日本の福祉団体などが「外国人労働力に頼らざるを得ない」と政府に訴えていた経緯もあった。現在、インドネシア側で人選が、日本側で受け入れ介護施設の募集・審査が行われている。

 しかし、今回の受け入れをめぐる双方の溝はまだ埋まっていない。インドネシア人は母国で資格を取得して来日しても、日本の国家資格を取得するまで正規の看護師や介護士とは認められない。

 その間は助手としての身分で、看護師は3年、介護士は4年以内に日本の国家試験に合格しないと帰国しなければならない。このハードルは相当高い。

 日本の受け入れ施設側にも課題が多い。日本人職員と同等の給料と身分保障が条件とされるが、日本も労働環境は厳しい。

 外国人だからといって低賃金労働を強いたら、EPA協定に反すると批判されよう。来日する看護師たちの大半はイスラム教徒とみられるから、礼拝や食事などへの配慮も必要だ。

 日本国内にはすでに約75万人の外国人労働者がいる。その中で、専門性や技術がある高度人材は全体のほぼ2割にとどまる。残る8割は留学生のアルバイトや研修・技能研修生である。

 外国人の単純労働を認めないという建前とは裏腹に、現実には別の制度で受け入れているわけだ。これが不正雇用の温床になっているとも指摘されて久しい。

 政府や自民党はようやく抜本的な制度見直しに動き始めた。EPAは日本の労働市場の本格的な開放につながる可能性が高い。優秀な海外人材確保のためにもきちんとした制度設計が急務だ。


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