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ジャイル日本語教師の日本語教室
サンパウロ市ビラ・マリアナ区にある漫画スタジオ、「ジャパン・サンセット」で日本語コースを担当する非日系日本語教師、ジャイル・フォンセッカさん。コース開設から半年が経過した中、独自の方法で日本語を教えている彼に授業を見せてもらった。
漢字にも親しめる利点も テレビゲーム、音楽もふんだんに導入
「先生、『どよ~ん』ってどういう意味?」、「『さくらっち』の『っち』って何?」。生徒からは次々と質問が上がり、「待てよ」「うるさい」「バカ」などの表現がぽんぽんと出てくる。
学習者のほとんどが同校生徒で、十代前半の「アニメ好き」。日本語にも興味津々の彼らは、好きなアニメやインターネットなどから聞き覚えた表現を躊躇なく適切に使っている。
興味対象や年齢が均一な学習者、と語学教師にとって理想とも言える環境の中でジャイルさんは、「日本語学習効率を促進するアニメ、ゲーム」という自説を立証すべく日々の実践に取り組んでいる。
ジャイルさんの調査では、アニメ、テレビゲーム、音楽は、十代、二十代前半の日本語学習者が関心を持つ三大要素。これらを積極的に取り入れることにより、「学習効果が高まる」という。
日本語歴七年の自身も大のテレビゲームファン。学習を始めた頃、毎日漫画を読み、ゲームに没頭し、ビデオを見ていたという。しかし意欲とは裏腹に、そこで出会った語彙や表現は「教科書には出てこなかった」。
文法を中心とした教科書では、ほとんどが易~難へと移行。そのため、「~だよ」、「だけどね」など実際の頻度は高いのに上級まで進まないと出てこない項目はたくさんある。「お前」、「泣かせてやる」など、「丁寧でない表現」も出てこない。
「だけどこれらが『生きた日本語』」とジャイルさん。教師となった今、自らの経験を授業づくりに生かす。プリントなどで文法説明もするが、漫画、ポップ音楽、テレビゲームを授業に大きく取り入れる。
終了前の二、三十分間は必ず「プレイステーション」に充てる。すると、「難しーい」と不平顔だった子どもたちが一変。画面前に椅子を移動し、目が輝き始める。
あくまでも授業のため、教師がコントローラーを握りゲームを展開。「今なんて言った?」、「この漢字は何?」という問いかけに、生徒たちは嬉々として返答、集中度もぐんと増している。
ゲームは物語風のものを選ぶ。音声に加えて字幕も日本語なので、理解できなければそのまま、逆に分かれば楽しさが倍増する。「学習動機付け」のためのゲーム、という策略だ。
「自然な日本語」が多く使われることと、「難しい」と敬遠されがちな漢字に初級者のうちから親しめることが利点、とジャイルさん。複数の登場人物というのも様々な人の声を聞く練習になる、という。
さらに、熱中できるものであるからこそ、「一度理解すれば絶対に忘れない」という。そして、「このやり方だと教科書だけで勉強するやり方の二・五~三倍の速さで習得できる」と仮説づける。
もちろんまだ実験段階で、結果が出るには時間がかかる。しかし一方、学習をはじめて半年なのに、自主的に日本語で漫画を描いてきて披露する生徒も出たという。
「二年後には、この子たちの中からコース教師が出るかもしれませんよ」。ジャイルさんはそう言って、自信のほどを覗かせる。
日本地図や五十音表などの代わりに、壁一面に漫画の切り抜きが張られた一風変わった教室で、ジャイルさんのユニークなチャレンジは続く。
(写真=テレビゲームを漢字学習に使うジャイルさん(右))
2008年7月9日付
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2008-07-11
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