2008-07-16

芥川賞 中国人が初受賞 楊逸さん『時が滲(にじ)む朝』 直木賞 井上荒野さん『切羽へ』

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 第百三十九回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が十五日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は中国人女性、楊逸(ヤンイー)さん (44)の「時が滲(にじ)む朝」(文学界六月号)に、直木賞は作家の故井上光晴さんの長女、井上荒野さん(47)の『切羽へ』(新潮社)に決まった。

 芥川賞は、在日韓国・朝鮮人では李恢成氏ら四氏が受賞しているが、中国人の受賞は史上初。賞金は各百万円。贈呈式は八月二十二日、東京・丸の内の東京会館で行われる。

 楊さんは日本語で初めて書いた作品「ワンちゃん」が昨年、文学界新人賞に選ばれた。同作は前回の芥川賞候補になっていた。

 受賞作「時が滲む朝」は、八九年の天安門事件の時期に民主化運動に打ち込んだ中国の青年が大学を追われ、日本で暮らすようになる青春と挫折の物語。

 芥川賞選考委員の高樹のぶ子さんは「人間が必死で生きている手触りが実感できた」と授賞理由を語った。

 井上さんは前回も『ベーコン』が直木賞候補になった。

 受賞作の『切羽へ』は、小学校の女性養護教諭が画家の夫と暮らす島に男性教諭が赴任してきたことから、新たな恋に揺れ始める男女を描いた恋愛小説。

 直木賞選考委員の平岩弓枝さんは「好感が持てる上質な官能的小説」とたたえた。

 いのうえ・あれの 1961年、東京都生まれ。89年に「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞を受賞。2004年「潤一」で島清恋愛文学賞受賞。父親は社会派作家の故・光晴(みつはる)さん。

 ヤン・イー 本名劉〓(リュウチョウ)。1964年、中国黒竜江省ハルビン市生まれ。87年に来日。日本語学校で学んだ後、お茶の水女子大で地理学を専攻。日本の中国語新聞記者を経て中国語講師に。東京都中央区在住。


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