◇数では減少、晩産化加速…
07年の合計特殊出生率は1・34で、前年を0・02ポイント上回り、2年連続で上昇した。だが、出生数そのものは減少、出産期にある女性人口の先細りも気になるところ。日本の少子化問題はなお、剣が峰に立っている。【山崎友記子】
●「限界」
「何歳までに子どもを産む、と決めていたわけではないけれど、40歳を過ぎるとリスクも高くなると聞いていたので、これが限界かな、と思った」
昨年結婚し、秋に39歳で第1子を出産した札幌市内の主婦(40)はこう振り返る。
子どもはかわいいが、体力的に不安もあり、これから第2子を産むことはとても考えられないと言う。
晩婚化とそれに伴う晩産化は、少子化を進める要因の一つ。年齢が上がると、体力やリスクなどの問題から出産を控える傾向が強まるからだ。
07年の平均初婚年齢は、男性30・1歳、女性28・3歳で、男女とも前年に比べ0・1歳上昇した。97年には、男性28・5歳、女性26・6歳だったので、この10年で男性は1・6歳、女性は1・7歳、初婚年齢が上昇したことになり、晩婚化が進むばかりだ。
この影響で、第1子出産時の母親の平均年齢も上昇を続けている。07年は29・4歳と、前年に比べ0・2歳上がり、過去最高を更新した。
晩婚化を受け、35歳以上の層で出生数が増加した。だが、この層は出生数は全体の2割にもならない。出生数の中心は25~34歳で、うち、06年に増加した20~24歳と30~34歳の層で再び減少に転じており、出生数全体を押し上げるほどの結果にはならなかった。
少子化問題に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの矢島洋子主任研究員は「晩産化が進んでも、1人の女性の一生で見れば、最終的に産む子 どもの数は変わらないとも言われるが、出産の先送りにはやはり限界がある。早めに産み、育てられる環境作りを急ぐべきだ」と説明する。
●第3子
出生順位別では、第1子、第2子の数は前年に比べ減ったのに対し、第3子以上は7000人近く増え、2年連続で増加した。第3子以上の出生は、30歳代だけでなく、25~29歳の層でも増えている。
第3子を持つ夫婦が増えれば、出生数も増加するのではないかとの期待も出てくるが、出生数全体に占める第3子以上の規模は15%程度で、やはり第1子、2子の出生数の影響が勝る。
また、第3子を出産するかどうかの希望は、経済的負担、特に教育費の負担感と関係があるといわれている。厚生労働省は、なぜ第3子が増えたのか分析はできていないというが、今後も増加するかどうかは、これからの景気動向にも影響されるとみられる。
●団塊ジュニア
出産期の中心にある女性の人口は、既に減り始めている。07年は前年に比べ、25~29歳の層で12万人減、30~34歳では14万1000人減少した。
出産期の年代では、人口の多い「団塊ジュニア」(71~74年生まれ)の動向が注目されている。国も、団塊ジュニアが30歳代であるこの数年が、出生率回復に向けて重要な時期として、少子化対策を集中的に実施すべきだとしている。
しかし、第1次ベビーブームや第2次ベビーブームが起きた時代とは違い、ライフスタイルは多様化している。この3、4年の間に、同世代の人たちが一斉に結婚したり、出産する動きが出るとは考えにくい。
厚労省は「団塊ジュニアは、出生数を支える大事な要素」としつつも、出生数全体は減少しており、厳しい状況は続くとみている。
矢島主任研究員は「少子化対策を進めても、社会環境が悪化すれば、効果が打ち消されることもある」と指摘した上で、「出生率は、子育て支援や両立 支援の充実度のみならず、雇用・経済状況、社会の安心度など、さまざまな要素の組み合わせで成り立っている。こうした要素を一つずつ改善した先に、出生率 の回復がある」と話している。
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◇合計特殊出生率
1人の女性が一生に産む子どもの平均数。「合計」とは、年齢別(15~49歳)の出生率を足し上げたという意味。女性の数はどの年齢も同じとして 計算されるので、女性人口の年齢構成の違いを除くことができる。たとえ出生数が減っても、分母になる15~49歳の女性の数が減少すれば、出生率が上がる こともある。人口を維持するために必要な数値は2・08。
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■07年の都道府県別合計特殊出生率
全国 1.34
北海道 1.19
青森 1.28
岩手 1.39
宮城 1.27
秋田 1.31
山形 1.42
福島 1.49
茨城 1.35
栃木 1.39
群馬 1.36
埼玉 1.26
千葉 1.25
東京 1.05
神奈川 1.25
新潟 1.37
富山 1.34
石川 1.40
福井 1.52
山梨 1.35
長野 1.47
岐阜 1.34
静岡 1.44
愛知 1.38
三重 1.37
滋賀 1.42
京都 1.18
大阪 1.24
兵庫 1.30
奈良 1.22
和歌山 1.34
鳥取 1.47
島根 1.53
岡山 1.41
広島 1.43
山口 1.42
徳島 1.30
香川 1.48
愛媛 1.40
高知 1.31
福岡 1.34
佐賀 1.51
長崎 1.48
熊本 1.54
大分 1.47
宮崎 1.59
鹿児島 1.54
沖縄 1.75
毎日新聞 2008年7月5日 東京朝刊
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