2008-07-01

2008年人身売買報告書(抜粋)

:::引用:::

国務省人身売買監視対策室

2008年6月4日

(下記は、国務省発表の2008年人身売買報告書から日本の項目を抜粋した仮翻訳です。)

日本(第2階層)

 日本は、商業的な性的搾取や強制労働のために売買される男女や子供の目的国および通過国となっている。商業的な性的搾取のために日本に売買されて 来た女性や子供は、中国、韓国、東南アジア、東欧、ロシア、そして規模は少ないが中南米出身である。また、日本は、東アジアから北米に売買される人々の通 過国となっている。認知された人身売買被害者の大半は、仕事を求めて日本に移動してくるものの、日本到着と同時に、借金に縛られ、売春を強要される外国人 女性である。移住労働者は男女共に強制労働の被害を被りやすい。人身売買業者は、日本の巨大な性風俗産業で女性たちを搾取するために、借金によって女性た ちを束縛し、5万ドルに及ぶ借金を課すこともある。さらに、売買された女性たちは、助けを求めたり逃げることができないように、肉体的および精神的方法で 威圧され、あるいは暴力を受けている。また、人身売買業者は、日本人の女性や少女もポルノや売春による搾取の対象としている。人身売買業者は、日本の組織 犯罪集団(ヤクザ)の団員や協力者であることがしばしばあり、外国人でも日本人でも、女性被害者の多くは、人身売買業者の報復を恐れて、当局に助けを求め ることに消極的である。日本人男性は、引き続き、東南アジアにおける児童買春ツアーの需要の大きな源泉となっている。

 日本政府は、人身売買撲滅のための最低基準を十分には満たしていないが、満たすべく著しい努力をしている。日本は「人身取引対策に関する関係省庁 連絡会議」を通じて改革の実施を継続したが、政府による人身売買被害者の認知や保護への取り組みは、依然として十分ではない。さらに、起訴件数は昨年に比 べ減少している。法執行当局およびその他の担当官は、一定の正式な被害者認知手続きを組織的に導入しておらず、その結果、政府が認知できなかった人身売買 被害者が多数いる。日本の当局によって人身売買被害者と認知され支援を受けた人の数は、2年連続して減少している。しかし、被害者ホットラインへの電話と 被害者への聞き取りに基づき、実際の被害者数は政府の統計を上回る、と非政府組織(NGO)や研究者は考えている。認知された被害者の減少は、警察による 主要都市での歓楽街の取り締まりにより、地下に潜る性風俗業が増えていることから、捜査が困難になったため、という意見もある。このように法執行当局から の圧力が強まったことで、明らかな売春業は撲滅され、性風俗業の多くは、見え透いてはいるが、売春を「デリバリー・ヘルス」(エスコート)業と偽らざるを 得なくなった。

日本への勧告:特に地方において、性目的の人身売買の可能性がある、コールガール・サービス(デリバリー・ヘルス)を含む商業的性風 俗業を捜査するために、積極的な法執行の取り組みを拡大する。人身売買被害者をより多く認知するために、一定の正式な被害者認知手続きを確立してこれを実 施し、その手続きの活用方法について、売春で逮捕された人や、外国人研修生・技能実習生、その他の労働者と接する職員に研修を行う。強制労働を目的とした 詐欺的あるいは、だましの手段を用いた募集・勧誘を刑事罰の対象とする。強制労働目的の人身売買行為を犯罪として捜査し起訴する。児童買春ツアーに対する 国民の認識を高めるため、犯罪者になり得る日本人に対して、「児童買春、児童ポルノに係る行為の処罰及び児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポル ノ処罰法)の域外適用条項に基づく訴追を警告するために、広範囲な啓発活動を実施する。警察庁と日本大使館・領事館に対し定期的に正式な指示を出し、児童 に対する性的搾取の疑いで日本人が起訴される場合に、現地の当局に協力するよう職員に指示する。被害者のためのシェルターにおいて、引き続き、通訳・翻訳 サービスや被害者の母国語を話す心理カウンセラーを利用しやすくする。認知された被害者全員に対し、無料で法的支援が受けられることと、本国への帰国に代 わり特別な在留資格を延長する選択肢があることを通知する。児童買春・児童ポルノ処罰法を改正して、児童ポルノの所持を刑事罰の対象とする。

起訴

 本報告書の対象期間において、法執行を通じた性目的の人身売買に取り組む日本政府の努力に改善はなかった。また、政府は、労働搾取を目的とする人 身売買の問題に対処できていなかった。性目的の人身売買の起訴件数と有罪判決の数は、2006年に17件と15件であったのが、2007年にはそれぞれ 11件と12件に減少した。2007年の12件の有罪判決のうち、7人が懲役2年から4年の実刑判決を受け、5人が執行猶予となった。2007年に、労働 目的の人身売買で有罪判決が下されたのは、労働基準法に基づいて起訴された2件だけであった。日本は包括的な人身売買禁止法を持たないが、2005年の刑 法改正、労働基準法、職業安定法、売春防止法、児童福祉法、児童買春・児童ポルノ処罰法等のさまざまな法律が、すべてではないが、ほとんどの形態の人身売 買を扱う。特に日本の法律は、強制労働を目的とした、故意に詐欺的または、だましの手段を用いた労働者の募集・勧誘を禁止していない。

 労働搾取は、労働問題活動家、NGO、シェルター、マスコミなどによって広く報告された。入国管理局と労働基準監督署は、外国人研修生・技能実習 生制度(以下「外国人研修生制度」とする)の悪用事例を多数報告している。報告された事例では、詐欺的な雇用条件、借金による束縛、移動の制限、給料の未 払いなどが含まれる。大半の企業は外国人研修生・技能実習生を適切に起用しているが、3年間の研修・実習プログラムの1年目の参加者は労働関連法で保護さ れておらず、人身売買の対象とされやすかった。さらに、そのような搾取は、研修・実習プログラムの1年目の参加者だけに限らなかった。2006年だけでも 労働基準監督署が1209件を超える労働関連法違反を認定したにもかかわらず、過去2年間で労働目的の人身売買で有罪となったのはわずか2件であった。こ のことは、政府にこれらの法を執行しようとする意志がかなり欠けていることを示している。政府は外国人研修生制度を監督するために、一定の努力を払った。 法務省は、この制度を管理するために禁止行為の一覧を発表したが、決まりに反した企業に対する刑事罰はなかった。内閣は、研修・実習初年度への労働基準法 の適用を含む、外国人研修生制度を見直す規定を承認した。しかし、本報告書の対象期間に、これらの規定をまだ実効しておらず、国会での審議も行われていな い。労働関連法の執行が大幅に強化されなければ、これらの施策がこの問題に効果をもたらす見込みはない。

保護

 政府の努力が強化されたにもかかわらず、本報告書の対象期間における被害者保護は、依然として十分ではなかった。日本政府によって認知された人身 売買被害者の数は、2年連続で減少した。法執行当局が認知した被害者の数は、2005年の116人、2006年の58人から、2007年には43人に減少 した。この数は、日本の人身売買問題の推定規模からすると少なすぎる。認知された被害者の数が減少したのは、日本で性目的の人身売買が減少したからであろ うという意見もあるが、むしろ、性風俗業の多くが地下に潜行したために、警察が潜在的な被害者を捜査し救出することがより難しくなった可能性が高い。人身 売買被害者と共に活動するNGOは、性風俗産業で働く外国人女性や移住労働者など、脆弱(ぜいじゃく)な人たちの中から被害者を探し出すことに、政府が積 極的でないと主張し続けている。特に懸念されるのは、人身売買被害者として認知された43人のうちの16人を、国際移住機関(IOM)に付託してリスク評 価や正式な本国への帰国手続きを行わずに、日本政府が本国へ帰国させたことである。警察と入国管理当局は、定期的に研修プログラムに参加しているが、日本 は一定の正式な被害者認知手続きを採用しておらず、また人身売買問題専任の法執行官や社会福祉担当職員も置いていない。本報告書の対象期間中に、警察と入 国管理当局が、人身売買被害者を認知できない場合もあった。第三国の大使館職員は、日本の警察官や入国審査官がその第三国の国民を人身売買被害者と認知で きなかったために、被害者の本国への帰国の責任を大使館が取るよう余儀なくされたと報告した。さらに、公的機関や民間団体の両方による労働搾取が広く報告 されているにもかかわらず、本報告書の対象期間に、政府が労働目的の人身売買被害者を認知した事例はなかった。

 2007年に認知された43人の人身売買被害者のうち40人は、政府のシェルターであり、日本の47の各都道府県に設置されている婦人相談所 (WCC)でサービスを提供された。被害者はWCCで政府が助成する診療を受けることができ、また心のケアを受けた被害者もいた。しかし、人身売買被害者 の大多数には、被害者の母国語を話す訓練を受けた心理カウンセラーを利用する機会が十分になかった。この弱点に対する取り組みを日本政府は始めたところで ある。厚生労働省は、人身売買被害者にカウンセリングや心のケアを提供した経験のある、またはこのような訓練を受けた通訳を見つけるためにNGOを調査 し、その情報を全国のWCCが利用できるようにし始めた。政府は、すべての人身売買被害者は、法的支援を受けることができると主張しているが、WCCの運 営者に対する調査では、無料法的支援を利用できることをWCCの職員や被害者が必ずしも知っているわけではないことが示された。政府が実際に人身売買被害 者に法的支援を提供した事例は、これまでに1件もない。本国への帰国によって被害者が苦境に立たされたり、報復を受けるような場合には、被害者は本国への 帰国に代わる合法的な選択肢として、特別な在留資格を得る権利があるが、被害者の大半は、その資格の延長や、就労可能な在留資格への変更の申請が可能であ ることを知らないとNGOは報告している。さらに、被害者が日本に数カ月以上滞在した事例は、これまでに1件もない。母国語によるカウンセリングの不備、 同国人やほかの人身売買被害者からの孤立、そして、特に日本滞在中に働いたり、収入を得るという、代替となる選択肢の欠如が要因となり、被害者の大半が迅 速な本国への帰国を選択した。政府は、人身売買の犯罪の捜査と起訴に協力するよう人身売買被害者に奨励しているにもかかわらず、被害者に協力を促すような 環境は提供しなかった。日本は、被害者の本国への帰国と社会復帰を支援するため、2007年にIOMに30万ドルを提供した。また、人身売買被害者支援を 専門に行う民間NGOシェルターでの被害者のケアを助成するために、毎年約10万ドルの予算を計上している。

防止

 本報告書の対象期間中に、日本政府は、いくつかの形態の人身売買に対する国民の認識を高めるために、大いに取り組んできた。政府は、人身売買のト ラウマ(精神的外傷)、政府の人身売買への取り組み、被害者支援を受ける方法を説明したパンフレットを50万部配布して、商業的な性的搾取の需要を減少さ せるべく努力した。さらに、政府は、売春と人身売買との関連を示した人身売買問題啓発用ポスターを2万5000枚作製した。これらのポスターとパンフレッ トは、日本各地の入国管理局事務所、警察、各国大使館・領事館に配布された。政府は、人身売買の対象となりやすいタイの学生のための寮を建設するために、 7万9000ドルをタイのNGOに寄付した。多数の日本人男性が、子供との性行為を目的に、特にフィリピン、カンボジア、タイといったアジア諸国に旅行す る状況が続いている。児童買春・児童ポルノ処罰法は、日本の裁判所に、外国で未成年者と性交渉を持った日本人に対する域外管轄権を与えているが、政府が児 童買春ツアーを理由に日本人を起訴したことは、2005年以来一度もない。本報告書の対象期間中に、日本政府は、日本人の児童買春ツアーの需要を大幅に減 少させるための対策を講じていない。日本の法律は児童ポルノの所持を刑事罰の対象としておらず、このことが、児童の商業的な性的搾取と児童買春ツアーの需 要を引き続き生んでいる。警察庁の統計によると、2007年の上半期において、日本の児童773人が売春に従事し、あるいは児童ポルノによって搾取され た。日本は、国連で2000年に採択された人身売買議定書を批准していない。


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