日雇い派遣大手のグッドウィル社幹部が逮捕され会社も書類送検された。東京・秋葉原の無差別殺傷事件も派遣問題と無関係とは思えない。労働者派遣法を改正し日雇い派遣は原則禁止すべきだ。
社名とは裏腹の悪質な行為にあきれた人は多かろう。幹部らは当初の契約とは違う職場に労働者を派遣する二重派遣を手助けしたとして職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)ほう助の容疑で逮捕された。
二重派遣は労働者をモノ扱いするに等しい。派遣元から派遣先、さらに別会社へと送られるため労働者はマージンを二重取りされたり労災隠しに遭ったりする。今回の事件では派遣法が禁止する港湾運送業務に送り込まれていた。
こうした違法行為は日常的に行われていたとの証言がある。グッドウィルだけでなく他社も偽装請負や違法派遣を行っていた。もはや個別企業ではなく派遣業界全体の責任が問われている。
昨年末に事件が発覚後、厚生労働省はグッドウィルに対して四-二カ月間の事業停止命令を出した。その後、文書による就業条件の明示など派遣元企業の責任や、派遣先にも責任者を置くなどの「指針」を決め四月から施行した。
日本人材派遣協会が先月「意図的な一日単位の細切れ派遣は行わない」とする自主ルールを決めたのも、危機感のあらわれだ。
だが行政指導や業界の措置だけで、不安定雇用や低賃金といった根本問題が解決できるのか。
厚労省の調査では日雇い派遣労働者約五万一千人の平均月収は約十三万三千円。また派遣労働者百三十三万人の平均年収は百万-三百万円程度である。これらがワーキングプア(働く貧困層)の温床になっていると指摘される。
同省は現在、学識者による研究会で日雇い派遣問題を検討している。港湾など危険業務に限って派遣禁止の方向という。通訳やガイドなど一日だけの派遣業務もあるため全面禁止は困難との立場だ。
これに対して連合は「指針」の実効性は疑わしく、雇用は直接雇用が原則として日雇い派遣を禁止すべきだと主張している。
一九八五年に制定された労働者派遣法は「雇用の多様化」の掛け声のもと九九年、二〇〇三年と大幅に緩和されてきた。その結果、日雇い派遣も出現し社会不安の一因となった。政府は今、雇用政策を転換すべき時だ。日雇い派遣禁止はその第一歩である。
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