2008-06-13

インド市場へ日系企業続々 専用工業団地が稼動

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【ニューデリー=高野弦】インドへの日系企業の工場建設ラッシュが止まらない。金融引き締めで足元の経済成長は鈍化の兆しを見せているが、10億人 を超える人口を背景に、当面内需の拡大は続くとみているためだ。初の日系企業用の工業団地も立ち上がり、メーカーの進出を後押ししている。

 ニューデリーから国道8号を南西に約1時間半車で下ったところにあるラジャスタン州のニムラナ工業団地。分譲が決まっている500エーカー(約 200万平方メートル)の広大な敷地ではいま、いたるところで槌(つち)音が鳴り響く。州の公社が開発した日系企業専用の工業団地で、1年あまりで15社 が進出を決めた。

 その一画を占めるのが空調大手のダイキン工業(本社・大阪市)だ。16万平方メートルの敷地を確保、まずは2万平方メートルの第1工場で09年から生産を開始する。

 同社は00年にインドの空調企業と合弁会社を立ち上げ、現地でエアコンの生産に乗り出したが、輸入販売に切り替えた経緯がある。完成品の輸入関税 が徐々に引き下げられる一方、品質維持のため日本やタイから輸入していた部品の関税は高止まりしたままで、現地で組み立てるメリットがなくなったためだ。

 再び、生産に乗り出したのは、市場の急速な伸びを目の当たりにしたからだ。皮肉にも04年以降、インドでの同社の業績は急速に伸び、03年度に約30億 円だった売上高は07年度には90億円に。近代的なビルの建設ラッシュで事務所用の大型エアコンの需要が伸びる一方、まだ普及率が2%程度の家庭用エアコ ンにも火がつき始めた。「06年度に1千億円だったインドの空調市場は、10年度には2千億円以上の市場になる見込みです」と現地法人の林俊樹社長は話 す。今後、部品メーカーの育成に力を入れ、現地調達率を徐々に引き上げる方針だ。

 進出を決めるにあたって、最大の難関は土地の確保だった。道路や電力のインフラが整った土地は、競争が激しくなかなか手に入らない。同社の場合、ヒマラヤの麓(ふもと)から南部のチェンナイにある工業団地を約1年半にわたって見て回ったという。

 入居が決まったニムラナ工業団地は、日本政府と日本貿易振興機構(ジェトロ)が州政府に働きかけて実現したものだ。分譲価格は周辺の平均に比べる と、半分程度で、免税措置もある。ジェトロとしては世界でも稀有(けう)な試みで、三井化学、三菱化学、日本郵船などの企業が続々と進出を決め、今秋から 一部工場の稼働が始まる。ジェトロは第二、第三の工業団地の建設に意欲を見せており、進出を後押しする考えだ。

 日本からの直接投資額は昨年6億7千万ドルと、前年の5・8倍に急増した。ホンダは4月、インド国内ではグループで三つ目となる二輪工場を開設。 現地法人の武田川雅博社長は「市場の安定感と規模を考えれば、インドのポテンシャルは圧倒的。足元で減速感が漂い始めたからといって、手綱を緩めるという 選択肢はない」と話す。自動車会社など向けに樹脂原料を生産する三井化学も「減速は一時的」(現地法人の安部敏之ディレクター)とみている。


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