少子高齢化で働き手が減る中で日本が活力を維持していくために、外国人労働者の活用は重要な課題だ。
福田首相は先月、専門的知識や技術を持つ「高度人材」の受け入れを拡大するため、官房長官の下に有識者会議を設置し、対策を検討するよう指示した。
政府は、外国人について、単純労働者は認めないが、高度人材は積極的に受け入れている。
研究者や技術者、教師など高度人材として在留資格を与えられている外国人は、歌手など興行分野を除くと約15・8万人いる。
だが、半数は非正規社員の扱いで、大手企業に雇われている外国人はわずか5%に過ぎない。
日本の企業や研究機関では外国人の昇進が難しい。家族の教育や医療などの問題もある。優秀な人材は欧米に流れがちだ。
国際競争力を強化するには、産官学が連携し、人材を日本に集めなければならない。外国人留学生の日本での就職を促進していくなどの対策が必要だ。このため、在留資格の取得要件を広げることも検討すべきだろう。
単純労働者の受け入れについても問題が多い。
政府の方針とは異なり、現実には、農林、製造、建設などの現場で、すでに多くの外国人が働いている。就労が特別に認められた日系人や、国際協力を名目にした「外国人研修・技能実習制度」で来日した実習生たちだ。
研修制度は、単純労働者を雇う“抜け道”となり、低賃金、長時間労働など不正雇用の温床になっている。違法行為を取り締まる一方、高い技能を身につけた実習生には、在留資格を与えて働き続けられるようにするなど、制度の抜本的な見直しが急務だ。
低賃金で使い捨てにする発想では、有能な外国人は日本に来なくなる。インドネシアとフィリピンから経済連携協定で受け入れる看護師と介護福祉士も、日本の医療・福祉を担う人材として大切に育てなくてはならない。
日本の15~64歳の生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに急速に減っている。自民党の中川秀直元幹事長のように、単純労働者の受け入れの制度化を求める動きもある。
国民の間には、外国人労働者の流入による日本人の雇用機会の縮小や、地域社会の混乱を懸念する声がある。
海外からの労働者を、どんな分野で、どの程度、受け入れるのか。国民的な論議を深めたい。
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