中国経済の減速が鮮明になってきた。中国国家統計局の発表によると、7~9月期の国内総生産(GDP)成長率は実質で 前年同期比9%増と、2005年10~12月期以来の1ケタ台に低下した。世界景気の後退や国内資産バブル崩壊で輸出や投資が陰り始めたためだ。中国は急 速な景気の落ち込みを防ぐためにも、内需主導の成長へ転換を急ぐ必要がある。
1~9月の成長率は9・9%だが、10・6%だった1~3月期からみると、4~6月期(10・1%)、7~9月期(9%)と次第に減速が顕著になっている。
1~9月の小売総額は前年同期比22%増、固定資産投資は27%伸びた。しかし、貿易黒字が47億ドル減り、成長率を引き下げた。
人民元上昇や人件費など諸コストの上昇に世界景気の後退が重なって輸出の伸びが鈍る(22%増)一方、原油価格急騰などで輸入が急増(29%)したためだ。
消費と投資は一見、堅調にみえる。しかし、消費者物価指数は7%、卸売物価指数は8・3%の上昇で、実質では前年並みかそれ以下の伸びにとどまっている。
すでに株価は昨秋のピーク時の3分の1に落ち込み、夏場から不動産相場の急落が本格化している。輸出低迷に資産バブルの崩壊が加わり、消費や投資にさらにブレーキがかかることは確実だ。
年間でも成長率は10%を下回る可能性が強まっている。5年連続で2ケタ成長を続けた中国経済は大きな曲がり角を迎えた。
中国では毎年新規の労働人口が約1000万人増える。雇用不安が社会不安を招かないためには最低7%の成長が必要とされる。世界経済の後退はこれから本格化するだけに、手をこまぬけば来年は7~8%台の“危険ライン”に近づくことも予想される。
危機感を強めた政府も減税や公共事業、農民・中小企業支援など景気てこ入れ策の準備を進めている。大事なことは投資と輸出主導の従来型成長から内需主導の持続的成長への転換を急ぐことだ。
もはや米市場頼みの成長は望めない。国内の所得格差是正や高齢化社会への備え、省エネ・環境投資など、将来をにらんだ改革と投資を進めるべきだ。
こうした中国の成長モデルの転換は隣国の日本にとっても望ましいし、日中の経済・産業協力の拡大につながるはずだ。
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿