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中国共産党が思い切った農地改革に踏み切る見通しだ。詳細は明らかにされていないが、農民が中央・地方政府から貸与されている農地の使用権を第三者に譲渡 できるようにして農地の集約を促進。農業の生産性向上を目指す内容とみられる。ただ、こうした自由化策が、貧富の格差や社会不安を増幅させかねないとの懸 念も出ている。
■分析
中国共産党の意思決定機関である中央委員会第3回全体会議(3中全会)が9~12日、北京で開かれた。主要議題は、農民が政府から貸与された農 地を自由に個人や団体に移転できるようにする土地流動化の問題だった。今回の3中全会では「農村の改革と発展を推進するいくつかの重要問題に関する党中央 の決定」が採択され、大規模な見直しを約束した。
≪貸与を70年に延長≫
そもそも、この問題を話し合わなければならないのは奇妙に思われるかもしれない。というのも、すでに2003年3月に施行された「農村土地請負 法」により、一定の条件の下で農民が農地を譲渡できると規定されているからだ。現実に、浙江省や重慶市が農民に完全な農地所有権を認める試みを続けてき た。
しかし、こうした例外を除き中国のほとんどの地域では、村や県レベルの地方政府が土地使用に関して非常に大きな権限を握っている。地方政府の土 地配分に対する権力の乱用ぶりは社会不安をもたらす大きな原因となっていた。こうしたことから、共産党は、農地に対する大きな権限を農民に与えようとした のだろう。
詳細は明らかにされていないが、新方針の下で、中央政府は農民への農地使用権貸与を現行の30年から70年に延長しようとしているようだ。農民 は政府からの農地貸与契約の残存期間に限り、個人または企業に土地をリースしたり、見返りに賃貸料や株式を受け取ったりすることができるようになる。
さらに、農民は貸与された農地を担保にして銀行から融資を受けられるようになるかもしれない。
≪政権内部で論争≫
農民に農地所有権を与えるかどうかは長年、政策的、学術的論争の焦点になっていた。
農民に農地の所有権を認めることを支持する者は、小規模農業の効率が極めて悪く、中国の食糧安全保障の大きな障害となっていると主張する。土地 売買や賃貸契約によって土地を集約することができれば、商業的農業を軌道に乗せ、農業生産性と全体の成長が高まられるというわけだ。また、地方政府による 土地配分への介入が減ることで、社会的緊張を和らげる効果も期待されている。
これに対して、イデオロギー的にこの政策に反対する者たちは、農民に土地所有の権利を認めれば、土地の争奪戦を経て大地主が現れ、農村内の不平等が拡大。革命以前に逆戻りしてしまうと主張する。
農民にとって農地は収入を得るための命綱であるため、農民が土地を失えば農村部だけでなく都市部でも貧困層が増加し社会不安につながる心配があるとの指摘も出ている。
指導部は3中全会で、農民の土地所有権をはっきりと認める画期的な発表をもくろんでいた。しかし、大胆な改革案は、こうした激しい政治論争に火を付ける結果となり、指導部は強硬な反対に直面。後退を迫られることになった。
最終的に3中全会の発表は、「農民の(農地を失いたくないという)願望は尊重するが、われわれは農民に農地に対する、より十分で、より保証された賃貸権を与えるべきだ」という、あいまいな表現に落ち着いた。
≪胡主席も後押し≫
大胆な改革に踏み込めなかったとはいえ、党指導部は土地改革に向け動き出した。とくに党の中央委員会総書記を務める胡錦濤国家主席は、農地改革 を支持している。このため、比較的短期間で農地の流動化が中国全土のほとんどの地域で実施され、大規模農業が広がることになるだろう。
しかし、こうした動きによって、農村部の所得格差が広がり、土地や家さえも失う農民が出てくるかもしれない。
北京政府は十分な資金を投じて、土地を持たない農民を大量に発生させないよう、対策を取ることが求められている。
■結論
農地改革に対する抵抗は残っているものの、今月の3中全会での方針決定を受け、実施に移されることになりそうだ。改革は商業的農業による生産性 の向上を約束するものだが、実現すれば農民が農地を失い、政府の援助を必要とするリスクが潜んでいる。中国は潤沢な財政・金融基盤を持っている。しかし、 中国も世界的な金融危機の影響を受けつつあり、経済成長が減速して財政赤字が拡大に向かうなかで、問題は複雑化している。
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【用語解説】中国の土地制度
中国の土地制度は社会主義的であり、すべての土地は公有地だ。都市部は国有地であり、農村部は集団土地所有制を取っている。企業や個人は、国または地方から土地の使用権を貸与され、自由な売買は制限されている。
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2008-10-29
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