2008-10-24

IT業界で大人気のクラウド,電気や水道のような存在に

:::引用:::
ここ数カ月,“クラウド・コンピューティング”がIT業界の流行語になっている。全く新しいコンピュータ技術のように扱われているが,事実はまった く逆である。実態はインターネット・ベースのコンピューティング環境で,広帯域のネットワークと仮想化技術に支えられている。まずは,このクラウド・コン ピューティングが自分にどう役立つのか考えてみたい。

 ロンドンにある私の家には,デスクトップ・パソコンが1台,ノート・パソコンが全部で5台ある。デスクトップ・パソコンには家族の情報がほぼすべ て入っており,世界のどこにいてもアクセスできるが,クラウド・コンピューティングがあればこのデスクトップ・パソコンが不要になる。クラウド・コン ピューティングの利点は,電気代が節約できることと,データを自動バックアップしてくれることである。ウイルスやスパムに悩まされなくなるかもしれない。

 こうしてみると,クラウド・コンピューティングは1960年代に市場を席巻していた米IBMの大型コンピュータの特徴をほぼ備えている。端末の機 能を限定し,CPUやアプリケーション,ストレージが集中管理される環境だ。当時は大型コンピュータ向けのソフトウエアが限られていたので,1980年代 に登場したパソコンが歓迎された。その後,ブロードバンドとインターネットが普及したおかげでアプリケーションもサービスも選択が増え,今のクラウド・コ ンピューティング時代を迎えている。

 Web経由のメール・サービスをはじめ,クラウド・コンピューティングによるサービスを私たちは既に利用している。よく知られたサービスに,米ア マゾン・ドット・コムのストレージ・サービス「S3」と,ホスティング・サービス「EC2」がある。自前の設備を持てない小規模なビジネス向けである。

他社の情報の扱いに国際規約を

 今年2月,このアマゾンのS3サービスが3時間利用できなくなる事故があり,信頼性に対する疑問の声が上がった。このほか考慮すべき点に,データ の機密性の問題がある。カナダ政府は,公共機関のデータを保護する手段として,米国で提供されるホスティング・サービスの使用を禁止している。米国が定め るテロ対策包括法(US Patriot Act)では,米国政府が国内のコンピュータに保存されたコンテンツを調査できると認めているからだ。

 私は,国際連合が主導する形で“サイバースペース権利条約”のような法律を定め,他社の情報の扱い方を規定することを考えた方がいいと思ってい る。そうすればクラウド・コンピューティングが世界中に普及すると思う。ただ,クラウド・コンピューティングは電力消費の増大をもたらすので,削減手段を 模索し続ける必要がある。

 米国のコンピュータ・サイエンティストのジョン・マッカーシー氏は,1960年代に「コンピュテーションはいずれ公的なインフラになるだろう」と 予言していた。コンピューティング・サービスにアクセスすることが,そのうちに電気のコンセントや水道を利用するようなものになるかもしれない。


●●コメント●●

0 件のコメント: