財団法人介護労働安定センター(東京都文京区)が昨年度に県内の179の介護関連事業所に行った調査によると、訪問介護員や介護職員など労働者の 平均年齢は44.4歳。雇用形態別では非正社員が58.7%。1年間の離職率は全国より1.5ポイント高い23.1%で、離職者のうち勤務年数1年未満の 人が49.6%を占めた。一方で平均月収は全国平均より9000円高いものの約22万3000円で、労働者に対する労働条件などの悩み調査(複数回答可) では「賃金が低い」が53.1%とトップだった。
◆寝る暇ない当直
介護業界は低賃金に加えて過酷な労働環境が敬遠され、さらに人離れが進むという悪循環に陥っている。
「転職はめずらしくない。少しでも労働条件の良いところに人材が流れていく」。そう指摘するのは、川越市のデイサービスセンターに勤める介護福祉士の女性(39)。今の施設は三カ所目の職場だ。
女性は「当直時間帯、看護師を含めて三人で六十床を担当した。おむつ交換や食事の介助に追われて寝る暇なんてなかった」と以前勤めていた病院の状 況を振り返る。基本月給は手取り十四万円程度。生活のためには当直に入らざるを得なかった。職員不足も相まって八回も当直をこなした月もあった。
女性は「福祉系専門学校はバタバタとつぶれ、九割以上の施設で職員が不足している」と前置きし、「待遇を改善し、次の担い手を育てる政策を打ち出さなければ、スタッフの質は落ちるばかりです」と警鐘を鳴らす。
◆負担増える家族
川越市のデイサービスセンターを母親(84)が利用するコンサルタント会社経営の男性(61)=川崎市麻生区=は、母親の着替えを持って月三、四回、センターに通う。車で四時間かかったことがあり、時々バイクも使う。どちらにしても一日がかりだ。
母親は四年前から、記憶力が悪くなり、アルツハイマーと診断された。男性方で引き取ることも考えたが、住居環境を変えることで症状が進むことを恐れ、川越市の自宅から週五日、センターに通っている。
長男である自分の名前はまだ忘れていないが、一分前に話したことも覚えていない。元気なころの母を思い出すとつらくなるという。精神的なつらさとともに経済的、体力的負担が男性に重くのしかかる。男性が遠方から通うことに加え、通所費用などで毎月五万円は負担が増えた。
男性は「老人を切り捨てても何も感じない役人がつくった政策が通っている」と国を糾弾し、「軍事費(防衛費)に予算を付けるのなら、老人の医療や介護にちゃんと予算を配分するべきだ」と訴える。
(山口哲人)
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