人材派遣や人材紹介の市場で家電製品などの設計・開発を行う技術者の求人が堅調を維持している。景気悪化を背景に幅広い分野で採用抑制がじわじわと広がるなかで、唯一気を吐いている形だ。派遣料金をみても独歩高の様相だ。
技術者派遣最大手のメイテックによると、同社の派遣技術者の稼働率(実際に派遣先で就業している人の割合)は8月現在、95.9%(関連2社分含む)と前月比0.8ポイント上昇。上昇は4カ月連続で、ほぼフル稼働状況が続いている。
景気悪化の影響で製造業の間では生産調整に伴ってライン工などは削減される傾向となっている。だが、「将来の商品戦略のカギとなる設計開発部門は手厚く人材配置するところが大半」(メイテック)という。
スタッフサービス(東京・千代田)では派遣スタッフとなる技術者の採用拡大を目指して10月1日から専用の採用サイトを大幅刷新。技術分野や勤務地などで従来より検索しやすくした。同社では約4000件の求人案件が寄せられているが、「人材確保が追いつかず2―3割程度しか対応できていない」(スタッフサービス)という。
企業へ請求する派遣料金も設計開発技術者の場合、首都圏で1時間当たり3000―5000円程度と1年前と比べて3―5%程度上昇。一般事務職の時給が2100―2500円程度で伸び悩んでいるのに対して、高水準が際立つ。
人材紹介最大手のリクルートエージェント(東京・千代田)に寄せられた8月末の中途採用求人数は全業種で前年同月末比11.7%減の8万3406人と2カ月連続で前年を下回ったが、技術者を中心とする「電気・電子・半導体・機械」向けでは2万5638人と0.9%増となった。「金融」や「建設・不動産」向けが3割強の大幅減となったのと対照的だ。
派遣や中途採用での技術者の求人が堅調なのは、学生の理系離れを背景に新卒採用が難しくなっていることがある。また、家電メーカーなどの間では少量多品種生産や新製品開発サイクルの短期化で、設計開発部門の業務が増大。薄型テレビの分野では今年に入ってソニーなどが生産を一部台湾へシフトするなど、低価格化戦略を打ち出した。だが、設計部門は国内が中心。開発は国内、製造は海外でといったケースが広がっていることも国内での技術者の需要を支えている。
不況でも売れる商品の条件は何か。安いこと。そして、消費者の物欲を刺激する何かを備えていること。その“何か”を生み出すためにも若い感性を持った技術者を多く抱えておきたい。まずはヒトから。そんなメーカーの思惑が、技術者の求人の根強さの背景に透けて見える。
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