2008-10-17

中国:3中全会…「農民年収2倍に」抜本的改革を採択

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【北京・浦松丈二】中国共産党の第17期中央委員会第3回総会(3中全会)は12日、「農村改革推進の若干の重大問題に関する決定」を採択し、閉幕した。コミュニケによると、農村改革の目標として2020年までに農民1人当たりの収入を08年の2倍にするほか、社会保障制度を整備して都市・農村の一体化を達成するとした。

 農村経済を活性化させるための具体策としては、農村経営制度の安定化▽農地管理ルールの厳格化▽農村金融制度の整備--などを打ち出した。胡錦濤指導部が導入を目指す農地の請負経営権(使用権)の流動化策はコミュニケには具体的に盛り込まれていない。「決定」全文は数日中に公表される見通しだ。

 また、世界的な金融危機を受け、「柔軟なマクロ経済政策を実施し、内需を拡大させる」との方針を示した。

 ◇解説 「調和社会」の成否左右

 2020年までに農民の平均収入を現在の2倍とする目標を盛り込んだ農村改革の決定は、改革・開放で広がった都市と農村の格差を是正し、社会の安定と持続的な発展につなげる狙いがある。

 農民と都市住民の収入格差は「1対3.33」の割合で、改革・開放政策の開始以来最大に広がっている。農地の使用権が十分に保障されない中で、5000万人といわれる「失地農民」は不満を募らせており、各地で治安当局と衝突する事件が相次ぐ。

 コミュニケは農民の収入増だけでなく、都市と農村の戸籍を厳格に区別して福祉や教育機会の格差をもたらしている「二元構造」の打破も20年までの目標とし、農民の地位向上を最優先課題に掲げた。

 また、胡錦濤指導部は農地の使用権の転売を認め、経営規模を拡大させて農村の競争力を強化させる方針だ。だが、コミュニケには「農地管理ルールの厳格化」との表現があるだけで、注目された使用権の流動化策は明示されなかった。

 使用権の転売は、社会主義を掲げる中国で大地主の台頭を招くことにつながるとの懸念が根強い。さらに、農地使用権の保障は、これまで強制収用で開発のうまみを分け合ってきた地方政府や開発業者などにとって不利益につながる可能性も指摘されている。

 農村改革は、こうした既得権益層からの反発にさらされる可能性もあり、実効性を確保するためには難しいかじ取りを迫られる。今後は全国人民代表大会(国会)での立法作業に焦点が移るが、胡指導部が提唱する「調和社会」の実現は、農村改革の成否にかかっていると言えそうだ。【北京・浦松丈二】

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