2008-07-02

【反射鏡】派遣業界の意識改革

:::引用:::
 日雇い派遣最大手のグッドウィルが廃業を決めた。二重派遣やピンハネなど相次ぐ法令違反に対して、厚生労働省が事業許可取り消しを決めたためだ。

 グッドウィルの問題は単なる法令違反だけでなく、「ワーキングプア」の存在をも浮き彫りにした。非正規雇用をどのように考え、どう向き合っていくのか。少子高齢化が進む日本は、今後の雇用の在り方を真剣に考えるべき岐路に立っているといえるのではないか。

 「派遣社員で正規雇用をめざしたい人には、職業訓練などの手助けをきちんとやっていく」

 これは、先日会った人材派遣業協会幹部の言葉である。正規社員と非正規社員の格差の問題だけでなく、さまざまな不祥事や犯罪が相次いだことから、派遣業界への風当たりが一段と強まっている。危機感を抱いた業界は自ら生き残りをかけた意識改革に乗り出した。

 そして、その結論は、派遣業の役割を「労働者が正規雇用につくまでの一時的な職業訓練の場であって構わない」との再定義である。

 本来、優秀な人材には、正規雇用をめざしてほしくないのが本音である。それは、派遣業者にとっても戦力だからである。しかし、派遣労働者は派遣先に行け ば、正規雇用と比較され、同一価値の労働をしても賃金の格差が付く。そのため、多くの派遣労働者が正規社員を希望する。だから、その労働者を応援すること こそが、引いては業界の生き残りにつながると結論付けた。この再定義は、意味ある価値観の転換である。

 この業界自らの発想転換がうまくいくかどうかは分からない。中小零細の派遣業者も多い。それでも、業界の意識改革の意図は評価したい。

 ならば、次は経営者側の番である。臨時雇用者を「低賃金で使える便利な労働力」とだけ考える発想を変え、「安定、安全な日本の社会」を持続させる雇用の在り方を長期的視点から考える時期ではないだろうか。(気仙英郎)
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