2008-07-01

【ワールドウォッチング】暗雲漂うベトナム経済 “アジア通貨危機”再来説も

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昨年まで好調だったベトナム経済の雲行きが怪しい。今年5月のインフレ率は25%にも達し、1~5月の累計貿易赤字は国内総生産(GDP)の約5割に当たる144億ドルにも達した。インフレ率は13年ぶりの高水準。株式市場も年初比で6割も下落している。

 在ハノイの日系企業駐在員によると、1980年代に「ドイモイ(刷新)」政策を推進した元老が事態を重く見て、グエン・タン・ズン・ベトナム首相に「イ ンフレに気をつけて、経済運営を進めなさい。ときには国家による経済統制も必要だ」などとアドバイスした。すでに引退した元老が現職の指導者に苦言を呈す るのは極めて異例。それほど、危機感が高まっている証拠だ。

 例えば、年初にはコメ1キロが1万ドン(約65・4円)だったものが、現在では2倍の2万ドンに上がっているほか、ブタ肉1キロも3万ドンから5万 6000ドンとほぼ2倍。「急激なインフレ上昇が庶民の懐を直撃し、ベトナム人従業員は『生活は苦しくなるばかり』と愚痴ばかり言っている」と駐在員氏は 語る。

 急激なインフレはベトナムに進出している海外企業の業績にも直接影響を与えている。

 ベトナムには香港と台湾企業を中心に、最近は中国大陸からも企業が多数進出していることは案外知られていない。主に、衣料や玩具などの製造業が主だ。ベ トナムに進出している台湾の衣料メーカーでは、現地従業員の月給が1年前まで約80ドルだったが、いまでは120~150ドルにまで上昇している。

 急激なコスト高のため、従業員のレイオフを始めたが、抵抗する従業員側との労使交渉が紛糾するなど、「ベトナムでの投資環境は悪化している」と伝えられ る。もともと労賃の安さが魅力で進出している中国企業のなかには、ベトナムから撤退し、より労賃が安いカンボジアや、経済状態が比較的安定しているインド ネシアなどに資本を移動させている。

 さらに、深刻なのがベトナム経済の急激な悪化が引き金になって、97年のアジア通貨危機が再来するのではないかとの懸念が一部で強まっていることだ。 97年のアジア通貨危機では、タイ通貨バースは55%もの通貨下落に見舞われたが、米大手証券モルガン・スタンレーは「ベトナムでも同規模の下落リスクが ある」と警告しているほどだ。

 ただ、ベトナムの短期借入金が当時のタイのそれに比べて極めて小さいことや、「外貨準備高は207億ドルもあり、ドン安定のためには十分な額」(中央銀 行)であり、国家が外貨を管理していることなど、「当時のタイとは諸条件が違うので、通貨危機は起きない」と主張する専門家もいるが、ここ当分、ベトナム 経済から目が離せないのは確かなようだ。
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