2008-06-05

国籍法違憲 時代読んだ画期的判決

:::引用:::
「父は日本人なのに、日本国籍が取れないのは憲法違反」。そんなフィリピン人母の子の訴えを最高裁が認めた。「不合理な差別を生んでいる」との重い判決だ。国は是正に早急に乗り出すべきだ。

 原告の子どもたちは、国籍法の壁に阻まれた境遇にある。父親が日本人でも、両親が結婚しておらず、出生後に認知された子には、日本国籍を認めない。同法にそう定められているからだ。

 最高裁大法廷は、この規定を「法の下の平等」を定めた憲法一四条に反するという画期的な判断を下した。その理由として、「家族生活や親子関係の意 識変化や多様化」などを挙げたうえで、婚姻を国籍取得の条件としていることは「今日では実態に適合するとはいえない」とした。子の救済へと強く導く結論 だった。

 さらに「日本国籍は基本的人権の保障を受けるうえで重要な意味を持つ。差別的な取り扱いで、子のこうむる不利益は看過し難い」とも言及した。

 確かに日本国籍がないと、将来、就職にも影響が予想され、成人になって選挙権もない。在留資格のままでは、一定期間ごとに更新手続きをして、許可を得なければならない。不安定な暮らしが続くのだ。子どもの立場を考えた判決といえ、高く評価したい。

 国際化や少子高齢化という時代変化をとらえても、意義深いといえよう。厚生労働省の統計でも、国際結婚の割合は一九六五年の0・4%から、二〇〇 六年の6・1%になった。外国人妻の場合、フィリピン人との婚姻が増加の一途で、〇六年には約一万二千件にのぼり、各国女性の中で最多だ。

 両親が結婚をしないで生まれた子どもは、日本人母の場合は2・1%。外国人母で10・7%と約五倍になる。原告のような、認知を受けつつ、日本国 籍のない子どもは、約二万人とも推計される。いずれ成人し、出産することも考えれば、今回の判決が与える影響は、決して小さくはない。

 日本が批准した条約でも、出生による差別を禁じた趣旨の規定がある。諸外国でも広く国籍取得を認める方向にある。「憲法の番人」による「違憲判断」の重みを受け止めて、政府や国会は早期に是正に取り組んでほしい。

 少子高齢化が進めば、外国人の受け入れの課題も避けては通れないはずだ。社会の変化が激しい時代だ。外国人の国籍取得の緩和にも踏み込んで考えるときだ。


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