2008-06-16

働くナビ:高齢者の再就職支援の課題は?

:::引用:::
◆高齢者の再就職支援の課題は?

 ◇時間や職種、柔軟に--意欲や能力、活用しきれず

 ◇シルバー人材センターの仲介、限定的

 「お子さんの奨学金なのですが……」

 東京都品川区内の住宅街に建つ古いアパートで、2人のお年寄りが切り出した。荒川和夫さん(79)と佐藤三郎さん(81)。同区には高校の学費用 に奨学金を貸与する制度がある。2人は週に5回、返済を滞納している家庭へ集金に歩き回る。報酬は月に約7万円。「年金だけでは食っていけませんから」と 佐藤さんは笑う。

 同区によると、奨学金の滞納額は今年3月時点で総額3420万円。「区の回し者め」などと罵(ば)声(せい)を浴びることもある。それでも2人は「やりがいを感じる」。荒川さんは「『人とつながっている』という喜びが、仕事を続ける最大の理由です」と、胸を張った。

 2人は02年、社団法人「品川区シルバー人材センター」(品川区北品川3)で仕事を紹介された。センターには3月現在で2317人が登録。うち、働いている人の割合(就業率)は89%。仕事は経理事務、ビル清掃、駐車場管理、交通整理などさまざまだ。

    ◇

 政府が5月に公表した08年版「高齢社会白書」によると、60~64歳男性の就業率は68・8%に上るが、65~69歳では49・5%に落ち込む。一方で、女性の就業率は、60~64歳で42・3%、65~69歳で28・5%にとどまる。

 白書は「就労意欲や社会参加意欲のある高齢者の活力や能力が十分に活用されていない」と指摘。「就業日数・時間などについて、柔軟な働き方のメ ニューを用意する必要がある」とした。政府は今年度から、定年引き上げや、定年制を廃止した中小企業に奨励金を支給する制度を導入するなど、対策に乗り出 した。

 しかし、一度退職した高齢者が、希望に沿う仕事を見つけるのは難しい。同センター事務局長代理の春日文雄さんは「退職前の経験が生かせる事務職を希望する人は多いが、紹介できるのは、清掃や自転車整理といった単純労働ばかりになってしまう」と打ち明ける。

 シルバー人材センターで仕事を見つけた場合は、高齢者雇用安定法の規定で労働時間は週20時間以内に限られ、月収7万~8万円程度にしかならな い。同法はシルバー人材センターが会員に紹介する仕事を「臨時的、短期的、軽易」な仕事に限定しており、正規雇用の紹介を業務にしていないためだ。

 春日さんは「高齢者の経済的欲求や労働意欲を満たすために、時間枠を取り払い、自由に働ける環境をつくることも必要です」と話す。【塙和也】


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