2008-06-09

35歳以上の女性の正社員雇用の場を開拓――フラジュテリー 橘田佳音利さん

:::引用:::

 東京・赤坂のビルの一室にオフィスを構える、社員わずか3人の人材紹介会社。今その取り組みが、日本の人材紹介業界に新風を起こしている。
 橘田佳音利さんが経営するフラジュテリーは、「35歳が壁」といわれる再就職市場で、あえて35歳以上の女性に光を当て、正社員としての再就職を支援してきた。

 同社研修受講者は、約9割が正社員として就職。またその9割超が35歳以上と、業界でもまれな年齢構成だ。就労支援の先進事例として、06年「国民生活白書」にも紹介された。

■事務、営業、プログラミング……すべての経験が今につながった

 30 歳で離婚して以来、育児のため働き続けてきた橘田さん。そのキャリアを切り開いたのは、「どんな仕事も全力で」というモットーだ。派遣社員として働き始め た頃から、掃除もお茶汲みも全力。「遅刻欠席も絶対しなかったので、急な仕事も任せてもらえたり……とにかく働くのが楽しかった」。当時珍しかったパソコ ンを自費で購入し、独学で操作法を習得。出入りのIT関連業者に正社員として採用された。息子たちとの時間を割くためフリーのCADオペレーターに職を転 換したことも。通算で経験した職種は営業、経理、プログラミングなど10以上に及ぶ。

 37歳である企業の共同経営者となり小樽へ転居す るが、42歳で帰京。この後の再就職活動で、人生最大のピンチが訪れる。出した数十通の応募書類は、全部なしのつぶて。「せめて面接を」と電話し、「年齢 制限見なかったんですか」と冷たく断られ涙した経験も。「自信がすべて削り取られ、心身がボロボロでした」。派遣会社に紹介された職に就くまでは、7カ月 を要した。この頃、「女性が年齢にとらわれず、自立して働ける社会作りに貢献したい」との思いが固まり、44歳で起業。「貯蓄を注ぎ込み、まさに背水の陣でした。登記の際は怖くて手が震えたくらい。でも、私にしかできない仕事だと確信はあったんです」。
  まずは、35歳以上の女性を正社員採用してくれる企業を開拓するため、数々の異業種交流会に参加。「飛び込み営業では門前払いされる可能性が高い」と考え たからだ。最初の1年半で名刺交換し、直接話した人の数は1400人以上。今、「橘田さんが紹介する方なら」と付き合う企業は250社に及ぶ。「経験があ る半面、自尊心が高く使いづらいというのが企業側の中高年女性像。それをどう切り崩すかがポイントです」。

 独自の研修を通して、人材育 成にも励んできた。最大6人という少人数制で、メンタル面のケアに注力。全5回3万円で、強み発見や仕事観の再確認に加え、面接指導、応募書類の添削な ど、きめ細かな就職試験対策も行う。「35歳以上の女性には、経験ときめ細かな対応力という大きな強みがあります。くじけた自信を取り戻し、仕事への積極 的な姿勢を思い出せば、採用は目の前」。
 07年には、研修講師の育成講座を開講。すでに卒業生1人が新スタッフとして準備中だ。「企業側の意識は、日に日に変わりつつあると実感しています。あとはもっと多くの女性と向き合う場を作りたい」と、ますます活動の幅が広がりそうだ。
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