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■日本企業の受け入れ体制の整備が課題
人材市場のグローバル化が進む中で、外国人留学生の就職が注目されている。国内労働人口の構造的な減少と、就職支援を重視した新たな留学生政策の推進を背景に、わが国の新しい雇用層として期待される外国人留学生。しかし昨年の下半期、米国・サブプライムローン問題に端を発した金融危機が世界を覆い、日本企業もこれまでの攻めの姿勢から一転、防衛に回った。これにより、ここ数年「超売り手市場」が続いていた新規学卒者の就職戦線にも影響が出ることは必至である。
状況が暗転するまでは、人材市場は未曾有の活況を呈していた。2009年度卒業者の求人総数は過去最高の95万人を記録していた。
その背景には、07年から本格化した、いわゆる「団塊の世代」の大量定年退職により労働人口が減少し、企業が新卒の確保に走ったことが挙げられる。さらに好景気に押され大手企業の採用枠が増加し、また学生にも安定志向(大手志向)が目立った結果、中堅中小企業は深刻な人材不足に陥った。外国人留学生の就職を企業サイドから見れば、日本人学生の採用が見込めないゆえの窮余の策といえなくもない。
ただ、それがこのところの情勢変化でどう変わるか、注視しなければならないが、景気動向とは別に、「少子化」というマクロなキーワードでとらえる必要がある。
それを如実に示すのが、新規学卒年齢にあたる23歳人口の推移を表した動態統計である。1997年に205万人いたがその後減少に転じ、08年には146万人で8年後の16年は120万人になると予測されており、年を追うにつれ採用対象者の母数が減少するのは厳然たる事実である。
したがって中堅中小企業にとっては景気の良しあしにかかわらず、人材確保がますます困難となることは避けられない。この採用難を解消するためには、別の採用対象者の「創出」に活路を見いだすほかはなく、そういう意味でも留学生採用を恒久的な対策として考える必要に迫られている。
では、現在の留学生の日本における就職状況はどのようになっているのだろうか。
07年度現在、留学生の総数は11万8498人。うち専門学校に2万2399人、大学に5万9510人在籍している。単年度で見ると、毎年約2万5000人が卒業する計算になり、このうち在留資格を「留学」から「就労」に変更した者は1万262人。これが統計上、07年度に卒業後、そのまま日本で就職した留学生の数であり、04年度の5264人からわずか3年間でほぼ倍増。ついに1万人を突破し、引き続き上昇カーブを描いている。
内訳を見ていこう。まず就職者の最終学歴は大学が48.4%(4007人)と半数近くを占め、次いで多いのが大学院。修士と博士の両課程で33.1%(2723人)に上る。専門学校は13.7%(1133人)で、3番手に位置している。
在留資格別では、文系の「人文知識・国際業務」が71.2%、理系の「技術」が22.5%で、文系の比率が高くなっている。
業種別では、製造業が(1)機械(2)電気(3)食品(4)運送機器(5)繊維衣料-の順に多く、非製造業では(1)商業貿易(2)コンピューター(3)教育(4)金融保険(5)旅行-となっている。製造業と非製造業の比率はほぼ3対7で、非製造業の割合が高く、その中では文系が圧倒的多数を占めている。
就職先の職務内容で最も多いのは「翻訳・通訳」で、全体の3分の1を占める。以下、「情報処理」「販売・営業」「海外業務」「貿易業務」と続く。なかでも「情報処理」は昨年比約1.6倍、一昨年と比べても急激な拡大を見せており、需要の拡大が顕著な職種といえるだろう。
このように、留学生の就職先は業種・職務内容とも多岐にわたるが、注目すべきは従業員数100人未満の企業が半数に達していること。中堅中小企業における日本人学生の採用難が影響していることは間違いない。もちろんなかには積極的に外国人採用を進めている企業もあるが、まだまだ「日本人の代わりではなく、真に留学生を対象とした」受け入れが本格化しているとは言い難い。
しかし一方で、文部科学省が推進する「留学生30万人計画」が動き出し、現在の留学生数約10万人の3倍増が将来的に見込まれるなか、日本企業の受け入れ体制の整備は、大きな課題になりつつある。
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2009-03-02
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