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環境対策は「節約」や「がまん」だけでは長続きしない。オバマ米大統領が提唱するグリーン・ニューディールのように、エネルギー・環境分野への重点投資で経済成長につなげる観点が大切。二月末、東京都内で開かれた「エネルギー持続性フォーラム」では「緑の経済」の最前線の取り組みが報告された。 (栃尾敏)
このフォーラムは、持続可能な社会づくりを研究する東京大サステイナビリティ学連携研究機構が主催した。テーマは「エネルギー持続性への挑戦-低炭素社会に向けた産業界の役割」。エネルギー・環境の専門家が現状や展望を話し合った。
地球温暖化に二十年前から警鐘を鳴らしている東大学長の小宮山宏さんは「日本はこの十数年間、ものづくりでどれだけ省エネするか、という議論しかやっていない。これが間違い」と話す。
化学、鉄鋼、ガラス、セメントなどものづくりの現場では二酸化炭素(CO2)削減対策が進み、減らす余地は少ないという。家庭やオフィスの冷暖房、自家用車といった日々の暮らしで大幅に削減する一方、省エネのものづくりで世界をリードすることを提唱する。
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■「もの」の効率
「家電メーカーは工場の省エネより二倍エネルギー効率がいいエアコン、自動車メーカーは半分のエネルギーで走る車を造ればいい」と話す小宮山さん。「エネルギー、高齢化、環境…日本は課題先進国。これはチャンスで、日本が答えを出せば、アジアをはじめ世界に大きなマーケットが待っている」
石油、石炭、天然ガス、水力、原子力など一次エネルギーの約四割が電力に変換され、CO2削減には電力部門が大きな役割を持つ。東大教授(電気系工学専攻)の山地憲治さんは原子力、石炭火力、太陽光などのそれぞれの特性を生かした低炭素電力供給システム構築を求める。
山地さんの試算では百万キロワット級の原発なら設備利用率1%分で六万トンのCO2削減になる。「原子力は低炭素電力供給システムに不可欠な要素」。だが、一九九〇年代には80%前後だった設備利用率が二〇〇〇年代に入って不祥事や事故、地震などで60-70%に低迷。「今ある原発の寿命延長、リプレース(古い炉を新しい炉に置き換え)、設備利用率の向上、既設炉の出力拡大が必要」と指摘する。
環境面では“悪者”の石炭火力だが「発電電力量に占める割合は米国とドイツが五割、中国とインドは七割。石炭は重要な電源で、すぐになくせというのは現実的でない」。発電効率向上によるCO2削減効果は大きく、日本で運転中の最新式の石炭火力発電の効率を米国・中国・インドに適用すると約十三億トンの削減になるという。
拡大する太陽光などの再生可能エネルギーへの期待は大きいが、天候に左右されるなど不安定で発電コストも高い。「技術革新と普及促進で発電コスト低減を誘導する政策が大切。過大評価も過小評価もせず、導入拡大に向けたインフラ整備と市場創出を」と話す。
■進む交流
産業界の動きは活発だ。新日本製鉄副社長の関沢秀哲さんは「日本だけ削減しても数%の貢献」と国際協力の大切さを強調する。日本の鉄鋼業界は中国やインドの製鉄所と省エネ技術交流を進める。「日本の技術が普及したら世界で三・四億トンが削減可能との試算もある。期待は大きい」
昭和シェル石油副会長の香藤繁常さんは「採算性が高い既存の油田は、生産量が年率4-5%減っていく」と説明する。将来のエネルギー需要に対応するため同社は一九七〇年代から太陽光に着目、太陽電池は商業生産に入っている。バイオ燃料やCCS(CO2の地中貯留)技術も研究中で「省エネは、技術立国・日本が大きく貢献できる分野」という。
■雇用も創出
国も環境ビジネス促進に力を入れる。環境省地球環境審議官の竹本和彦さんは、住宅用太陽光発電の導入補助や電気自動車に対する重量税免除などを挙げ「低炭素革命を柱として新たな市場と雇用を創出する政策パッケージを三月にまとめる」と話す。
<記者のつぶやき> 環境技術の“本家”は日本のはずなのに、「日本版グリーン・ニューディール」とはどういうこと? 科学技術で頑張っても、政治(家)で逆転されるのは悲しい。未曾有の不況下、環境分野は期待の星だけにビジネスとしても大事にしたい。
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