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就職氷河期が再びやってくるのではないか――。景気が急降下するなか、来春に卒業する大学生たちの就職活動に、早くも強い緊張感が漂っている。きつい長丁場になる可能性もあり、不安に陥りがちな学生をうまく支えてもらおうと、大学が親に働きかける動きも盛んだ。
手帳は日曜以外は書き込みでいっぱいだ。資料請求した企業は約230社。企業説明会は1日に最低2社回る。3社かけもちの日もある。興味のある大手電機メーカーにはすでに5回足を運び、顔を覚えてもらった。
米国留学したため来春卒業する京都産業大外国語学部4年の男子(22)の活動は、もう11カ月に及んでいる。
昨年5月、「準備は早いほうがいい」と、合同就職セミナーに顔を出し始めた。そこに、秋からの世界的な金融危機が。「採用を見送る」という返事が資料請求した企業から相次いで届き、厳しさを実感。企業回りのペースを上げた。「親に迷惑はかけられない。まさに背水の陣です」
関西大商学部4年の男子(22)は、授業をさぼって留年したことを猛烈に後悔している。売り手市場が一気に様変わりしてしまった。都市部の大手に入りたいが、中小も、実家の島根の企業も受ける。「あほやった。今はめっちゃ不安」ともらす。
立命館大文学部3年の女子(21)は、広島県へのUターン就職を希望しているが、地方では特に女性の採用は厳しいと実感した。2月、設備会社で「事務職で長く働きたい」と訴えると、「力仕事もあるし、男性じゃないと難しい」と面と向かって言われた。「男女で採用数に差があるのは事実。4月には決めたいけど……」と不安そうだ。
リクルートによると、学生1人が資料請求する企業数は2月末現在、昨年と比べ2割増の100社超。
関西や中四国の大学、短大など約150校でつくる「関西学生就職指導研究会」会長の新井芳則・大阪商業大キャリアサポート室長によると、不景気で、学生が年明けから合同セミナーに出ていたのが前年中になり、2月中旬から企業の個別セミナーに出ていたのが新年早々になっている。内定は4~5月の見込み。新井さんは「焦る時期と違うころから、ピリピリしている学生も目立つ。自己分析と会社研究がきっちりできていないまま臨むから、不安が先行してしまう」と話す。 何社も落とされ、自信をなくす。周りが相次いで内定をもらって、焦る。こんなときに、親が不用意に追い打ちをかけると、逆効果だ。
追手門学院大(大阪府茨木市)は03年度から、3年生の保護者を対象に「就職講演会」を開いている。ときどきのシューカツ事情を伝え、わが子を支える際の参考にしてもらうためだ。
1月末と3月初めに開いた2回には計300人余りが参加。個別面談では、「大手の採用はどれだけ減るのか」「就職活動が長引いたら親はどうすべきか」といった質問がでた。キャリア開発部の木村敏興部長代理は「これだけ参加者が多いのは初めて。不況で心配なのに、子どもがどう動いているのかがわからないから、親はイライラが募っている」と話す。
立命館大(京都市)は1月、17ページの冊子「親子で考えるキャリア講座」を、在学生の全保護者3万3千人に送った。テーマは「子どもの自主性を促しながら、親が今時のシューカツをどう支援するのか」。同大学キャリアオフィスの折田章宏課長は「親の口の出し過ぎも、親がまったく知らないのもダメ。後悔しない就職を実現するために、親子で一緒に考える時代にきている」と話す。
広島修道大(広島市)は5月、内定を得た4年生と就職した卒業生に、保護者を相手に体験談を語ってもらう。どんな支援に助けられたか。どんな言葉をかけられて嫌だったか。学生の本音を親に届けるのがねらいだ。
◇大学生の就職状況
今春卒業予定の就職内定率(2月1日現在)は86.3%。前年同期を2.4ポイント下回った。「超氷河期」と言われた99年度の2月段階での内定率は81.6%。帝国データバンクの企業意識調査によると、09年度(新卒と中途)に正社員採用を予定していない企業は45.9%にのぼり、来春卒業する学生の就職はさらに厳しくなりそうだ。(市原研吾)
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2009-03-30
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