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3月9日、三重県伊賀市の商店街にある通訳NPO「伊賀の伝丸(つたまる)」の事務所に、40歳代のブラジル人男性が訪れた。届いた書類が読めないという。代表の和田京子さん(49)らが税務署の書類と確かめ、ポルトガル語で伝えた。「住宅ローン控除で税金が返ってくるという知らせですよ」
男性の表情が緩む。「実は工場をクビになった。ローンの督促かと思った。よかった。オブリガード(ありがとう)」と頭を下げた。
伝丸は10年前、外国人と日本人との橋渡しにと発足。インドネシアでの生活経験がある和田さんが、市内のスーパーで偶然、同国から来た主婦の買い物を助けたのがきっかけになった。和田さんは「私も海外で暮らした時、助けを求めて泣いた。言葉を掛けることが安心につながる」と話す。
大阪、名古屋へ交通の便がいい伊賀市は、自動車部品などの工場で、多くの外国人が従事する。昨年末現在、人口約10万人のうち、外国人の割合は4・85%だ。
今年に入り、伝丸への相談内容が、ごみの出し方といった生活上の困りごとから、職を失うなど暮らしそのものの事柄へと変わった。
派遣先のレストランで仕事を失ったブラジル・サンパウロ出身の日系3世の女性(21)もそうだ。「3か月続けてきて、オムライスが作れるようになったのに」と嘆く女性に、伝丸側は市内のゴルフ場を紹介。女性は助言を受けて初めて自ら履歴書を書いて面接に臨み、程なく採用が決まった。
「彼らは安価な労働力ではなく、私たち同様に生活がある人間です」と和田さん。不況にあえいでも、希望は持っていい地域社会を築きたいと願う。
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島根県出雲市の出雲公共職業安定所。通訳の小田新さん(35)に、ブラジルから来日して5年目の男性(40)が「職業訓練校に寮はあるのか」と尋ねた。「ある。風呂は共同だが、ご飯が付いてお得だよ」。小田さんが応じる。
県内の日系ブラジル人約900人は、大半が同市や隣の斐川町に住み、多くが電子部品工場で働く。
小田さんは大学を出て、ブラジル・マナウスの小中学校などで5年間働いた。大病を患った際、現地の人たちが身内のように看病や差し入れをしてくれたことが忘れられず、昨年12月、通訳の仕事を引き受けた。
職業訓練校のことを尋ねた男性は、介護ヘルパーを目指すことになった。「彼らには『デカセギ』じゃなく、技術や資格を得て正社員になってほしい」。小田さんは、ブラジル人を支援する全国組織を作りたいという。「彼らの前向きさが何より好きだから」
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厚生労働省の発表では、昨年10月末現在、全国7万6811事業所で48万6398人の外国人が働く。ブラジル人は20%を占め、その半数以上が製造業に従事。日本で伴侶を得るなど永住傾向も強いという。
(2009年03月18日 読売新聞)
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