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莫 邦富の中国ビジネス指南
中国に進出している外資系スーパーが安徽省、河南省、湖北省、湖南省、江西省、山西省などの中部地域内陸部への出店を拡大している。この中に日系スーパーの名前はない。拡大しているのは米国系、フランス系、台湾系のスーパーだ。特にその進出スピードは速い。この急激に変化する市場に対して日系スーパーは先行するどころか、追いつくことさえできていない。せっかくのビジネスチャンスを逃している可能性がある。
先日、市場調査のために訪れた安徽省の省都・合肥市の例を報告しよう。2000年以降、長江デルタに工場をもつ外資系企業がより製造コストの安い新天地を探し求めて、安徽省に相次いで進出している。日系企業も同じ傾向を見せている。例えば、01年、ニューヨーカーというブランドで知られる毛織物メーカーのダイドーリミテッドが安徽省馬鞍山市に製造工場を作り、05年には手袋や鞄類の生産販売および輸出入事業を手掛けるスワニーが安徽省青陽県に支社を設立した。こうした傾向については、07年4月の時点で、本コラム「上海周辺から安徽省へ労働力を求めて移転する生産基地」で取り上げている。
そのため、今回の合肥市訪問を前に、これから安徽省は外資系企業の進出ラッシュを迎えるのでは、と予測していた。しかし、実際に合肥市内を回って見たところ、すでに小売市場を争奪するために多国籍企業が乱戦している舞台となっていることに気づいた。
合肥市の関係者から聞き取り調査をしたところ、市内4区3県、人口約462万人の市場を狙い、外資系小売企業が熾烈な競争を展開しているのを実感した(表)。
表にある「開業予定の店舗数」とは、すでに開店のための内装工事などを行っている段階の店舗のことをいう。計画上の出店数ではない。もうひとつ、地元資本のスーパー大手「合家福」を表に入れていない。ちなみに、07年末の時点で、合家福は大型スーパー6店舗、コンビニ70店舗を経営している。さらに、表には出てこないその激戦ぶりについてももうすこし詳しく説明したい。合肥市のカルフールの中心店である三里庵店は04年12月開店にしたが、08年11月の時点で、中国全土のカルフール120店舗の中で、3年連続来客数1位を守ってきた。この意外ともいえる市場の大きさを見て、ウォルマートが殴り込みをかけてきた。しかも、よりにもよって、カルフールの中心店から300メートルも離れていない場所に1号店を開設し、カルフールへの挑戦姿勢を隠そうとしなかった。あまりにも近接していたため、カルフールは商圏の利益を侵されたとして訴訟を起こしたほどだ。
ところが、この競争に日系の小売業者の姿が見えない。合肥市内にある歩行者天国を数回往復して日本や日本商品を思わせる広告を探したが、ソニーの製品を紹介する広告一枚しか見つからなかった。中国には、市場規模が合肥ほどの都市が沿海部を含めて100都市近くはあると思う。だが、こうした市場で日系スーパーが進出しているのは数都市にとどまっている。十都市にも満たない。筆者は、日系スーパーはこうした地方市場の実態を認識していないのではないかと思う。日本在上海総領事館の経済担当官も残念がっている。「数年前から合肥に関心をもったらどうだと上海および上海近隣に進出した日系企業の関係者に声をかけていましたが、相手にしてもらえなかった。こうした内陸部の市場的魅力に対しての認識は日系企業が足りなかったかもしれない」。
たとえ認識していたとしても、そのあまりにも急激な市場拡大に人的資源の面でも追いついていないのではないだろうか。ウォルマートやカルフールのような外資系スーパーは、拡大するテンポにあわせて有能な人材を引き抜くかたちで人材を確保している。これに対し日系スーパーは、既存店舗で育てた自前の人材を登用することにこだわっているようだ。日系企業のこのような人材の育成方法もそれなりの理由があって、一概批判してはいけないと思うが、急激な店舗展開に対応しきれない面があることも事実であろう。 金融危機の嵐が吹き荒むこの頃、日本経済は100年に一度といわれるほどの大打撃を受けている。企業の売上が激減し、国内市場には新しい成長の柱を探し出すのが非常に困難な状態に陥っている。中国市場も元気さをかなり落としたとはいえ、今年も8%の成長を目指しており、そこに潜む大きなビジネスチャンスはまだ掘り起こされていない。
品揃えが豊富で、新鮮な野菜や魚介類がそろっている大型スーパーは中国大陸でも受け入れられる市場だ。かつては日系資本であり、現在は地元資本になった上海浦東にある「第一八百伴(ヤオハン)」デパートは08年12月31日の売上額が2億5800万人民元(約33億円)に達した。一店舗の一日の売上額としては中国最高を記録し、旺盛な消費力を見せつけた。地下のフードコーナーには日本食店が複数店舗進出しており、食の安全に対する関心は中国でも高まったこともあり、日本食の人気も高いと聞いている。
中国市場が日本企業の生き残りにかかわる生命線だという必死の覚悟で、日本企業は中国ビジネスに取り組む必要があるのではないかと思う。
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2009-03-04
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