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これまで高成長を続けてきた「レクサス」が今、中国市場で岐路に立たされている。税関の最新統計によると、2008年のレクサス販売台数は30%増の3万1000台。伸び率は初めて3ケタを割り込み、2005年2月に中国市場で正式販売を開始して以来の最低を記録した。
2008年の販売台数とシェアの両指標の伸びは大幅に減速しており、2009年の中国でのレクサスを取り巻く状況にトヨタは悲観的だ。「レクサス GS450h」が中国に投入された1月下旬、豊田汽車(中国)投資有限公司の曽林堂副総経理は「2009年の中国の高級車市場の伸び率は3~5%のレベル」と指摘し、「レクサスも平均伸び率を上回ればそれでよしとする」と述べた。
消費税の引き上げや、競合他社製品が国産化に踏み切ったことで、レクサスの価格優位性は大幅に弱まった。さらに、製品ラインアップの幅のなさやブランド力の弱さ、新型車投入効果などの問題もあり、中国市場でのレクサスの販売拡張は現在、かつてない大きな難関にぶつかっている。
この問題について、トヨタ内部では異なる意見があるようだ。トヨタ経営陣は海南省三亜市で1月下旬に開催されたレクサス販売店の年次総会の際、「前年の伸び率減速については、販売ネットワークの充実と販売店数の引き上げが必要」という考えを示した。
販売ネットワークの拡大が、さらに成長するための特効薬と考えられており、今年はレクサス販売店数を現在の45店舗から70店舗に増やす計画だ。
販売店の収益構造に課題
価格優位性と優れたサービスにより、レクサスは近年、中国市場で急速に業績を伸ばしてきた。価格体系から見れば、レクサスは高級車のBクラスとC クラスに位置し、同じ排気量ならば国産の同クラス車と大差ない。Dクラス市場では、大排気量のLSタイプをベンツやBMWの小排気量車にぶつけて優位に立つという作戦をとった。
しかし、中国が昨年、「大を抑制、小を奨励」する消費税政策を打ち出したため、レクサスは大きな打撃を受けた。2008年下半期、レクサスの販売量は上半期の60%に落ち込み、9月以降、政府が大排気量の輸入車の消費税を大幅に引き上げたことで、市場シェアもこれまでの12%から7%前後にまで縮小した。
中国市場に大きな期待を寄せていたトヨタはこの業績に焦った。トヨタは2008年、世界市場でこの60年間で初の赤字を計上し、米国でのレクサス販売台数も大幅にダウンした。しかし、その後も中国市場では成長を続けており、中国はトヨタにとっての最重点市場となっていたからだ。 北京のレクサス販売店の経営者によると、今年2月末に同市で4店舗目の販売店の認可が下り、年末には5店舗目が開業予定という。北京のレクサス販売店は年内に5店となるが、この経営者が把握しているデータによると、同市の高級車市場でのレクサスの市場シェアはわずか6%前後にすぎない。
この経営者は「販売ネットワークの拡大スピードは市場ニーズに基づくべき」とした上で、「比較的よく売れている南方地区でも一つの市に5店舗はなく、北京が最も多い」と指摘する。
市内各店の販売台数やアフターサービスなどのメンテナンス台数が、限界に達しているわけではない。この経営者の店舗は北京で最も古くから営業しているが、それでもメンテナンスは1カ月1300~1500台程度で、最大能力の60%に満たないという。
自動車業界では、安定期に入った高級自動車ブランド販売店の損益分岐点は1カ月当たりの販売台数50台前後と見られており、これを超えて初めて利益が出る。高級ブランド車販売店1店舗当たりの昨年の月間販売台数を「年間販売台数÷販売店数÷12カ月」の公式で計算してみると、ベンツ20台前後、 BMW40台余り、アウディ60台余りで、レクサスはアウディとほぼ同じとなる。
ただし、ベンツ販売店が赤字だということではない。ベンツのSクラス車は1台当たりの利益が非常に高いからだ。また、レクサス販売店が飽和状態にあるわけでもない。言えることはただ一つ、レクサスの販売店数は比較的正常な状態にあるが、サービスコストの高さや関税などの影響で1台当たりの利益が競合他社ほど多くないため、数多く販売しなければ販売店の利益が保証できないということだ。
調査によると、北京市に以前からあるレクサス販売店の昨年の月間販売台数は平均100台前後で、基本的に2年間で1000万元に上る開業コストを回収して、収益が出せるようになる。しかし、販売ネットワークの急激な拡大は、新規参入店舗にとって最大の脅威だ。現在、販売店1店舗当たりの1カ月の運営コストは100万元前後である。先の経営者は「新規参入店は、コスト回収が遅れるだけでなく、赤字となる可能性もある」と指摘する。実際、価格優位性が大幅にダウンした後、販売ネットワークはレクサスの重要な支柱となっている。安定した販売ネットワークの拡大は非常に重要であるが、過剰な店舗数拡大は価格引き下げなどの過当競争を招き、最終的には販売店の利益を引き下げる結果となってしまう。そうなれば、レクサスの誇る優れたサービスも低下する恐れがあり、レクサスにとって最大の危機となるだろう。
販売網拡大に反対している既存販売店の経営者らは、コスト引き下げの最も直接的な方法は人員削減だと考えている。しかし、販売スタッフやサービスアドバイザーの数を削減すれば、サービスの質や販売量は大きく低下する。レクサスのレベルの高い接客や、公道での25分間の試乗を含め、顧客1組の接客時間を平均2時間とするなどのきめ細かなサービスは提供できなくなるだろう。
グローバル規模で見ると、2008年は日本市場でのレクサスの販売が不振だったため、中国は日本を抜いて世界第2の市場となった。昨年の日本での販売台数は2万6000台だったが、日本の販売店数は120店舗もある。販売店の数が販売量の伸びと比例していないことを示す例だろう。
レクサスの世界最大の市場である米国の年間販売台数は30万台前後で、販売店は209店舗ある。中国の年間販売台数は3万台だから、米国の基準では販売店は20店舗前後でこと足りる。しかし、中国では現在、すでに45店舗が開業している。
国産化に伴う困難な選択
業界関係者は、価格の優位性を早急に取り戻すことがレクサスの当面の急務だと考えている。今後も輸入車を販売する方針であれば、小排気量車を増やすのも一つの方法だ。ブランド価値もある程度認識されてきており、現在の状況を考え合わせれば、ローエンドの方向に進む時期に来ていると言える。つまり、 BクラスやCクラス、およびその中間クラスで、小排気量・低スペック車を増やすということだ。
これについてはトヨタ内部でも意見の相違が見られる。現在3万台余りという中国での販売状況から見て、数多くの検査や走行テストを行って小排気量・低スペック車を投入しても果たしてどの程度売れるのかという懸念や、既存車種の「クラウン」や「カムリ3.0」と競合するおそれがあることなどが反対の要因だ。小排気量車を生産しない場合、レクサスが中国で直面する最大の問題は関税による制限だ。トヨタ社内でも国産化については激しい議論があった。国産化しても大量生産できなければ、輸入よりコストが高くなるというのが反対理由だった。部品認証コストが高いことや、ロット数が小さいことなどもあり、生産当初はコスト問題が発生する可能性が高い。
しかし、長期的な視点から巨大な中国市場の潜在購買力やニーズを考えれば、高級車の国産化は避けて通れない。この点ではドイツ車が一歩リードしている。アウディが中国で成功したのは、国産化によってコスト的に優位に立ったことが大きく関係している。中国での販売台数が1万台にも満たないスウェーデンのボルボでさえ、すでに国産化を決定している。
理論上は、国産化に踏み切ることはレクサスの価格問題解決の有効な手段だ。しかし、実行は簡単ではなく、トヨタのバランス能力が試されることになるだろう。
国産化にあたって最大の難関は、生産を天津一汽豊田汽車有限公司(天津トヨタ)で行うか、広州豊田汽車有限公司(広州トヨタ)で行うかの選択だ。コストから考えれば、広州で生産している「カムリ」は「レクサスES」とシャーシが共通なため、生産量を増やすことでコストを下げられる。一方、天津で生産すれば、クラウンや「REIZ」(日本名:マークX)も「レクサスGS」とともにコストダウンできることになる。
ブランド力と生産能力から考えても、これは難しい選択だ。南北の合弁会社にはそれぞれ行政との深いつながりがある。広州トヨタはこれまで何度もレクサスの生産を宣言しているが、トヨタ本社からは、正式な発表はない。
(何芳=21世紀経済報道、北京発)
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