2008-10-06

ネットPRは自然体が一番

:::引用:::

サン電子は、携帯音楽プレイヤーの音楽をFMラジオで再生可能とするFMトランスミッターなどのデジタル家電製品や、麻雀牌パズル「上海」に代表されるゲームブランド・サンソフトの展開、携帯電話向けコンテンツ開発といった、多くのコンシューマー向け製品や事業を手がけている。

製品のPRのためには、より多くの消費者が関連情報に触れることが必要になってくる。情報誌などの紙媒体や、新聞社などが運営する大手のネットメディアに取り上げられるのは、不特定多数に情報を伝えるのに有効だ。もちろん、発信した情報が掲載されるかどうかはメディアの編集者次第なので、編集部へ赴いて発表する情報を直接伝えることは基本的な活動の1つだ。

さらにサン電子では、個人が運営するブログに対しても、サイト運営者にコンタクトを取り、製品の紹介を直接行ったり、製品貸し出しをするなど、大手メディアと同様の対応をしている。例え個人のブログ運営者が相手でも、ネットワークの世界で完結せず、直接顔を会わせることもしてきたという。ブログへのPRに力を入れるのは、ネット上での話題を増やすことで、自社サイトへのリンクも増加し、SEO効果を引き出せるからだ。

水野氏は「ただ情報を流しているだけでは取り上げられません。直接会いに行くなど、どういったアクションを起こすかが大事です。加えて、イベントなどの特定の期間や目的に限らず、継続的に行うことも大切です」と指摘した。さらに、ブロガーに 取り上げられやすいよう、元リリースへのリンクや、転載の許可を明記しておく工夫も重要だという。

「ネットだからと特別なことをやるのではなく、これまで広報が行ってきたことを、ネットにおいても自然にやるという姿勢が大事です。自社の製品やサービスを知ってもらうという視点で動いていくのが効果的ではないでしょうか」(水野氏)。

国内向けに作られた製品でも海外で引き合いがあるなど、流通における国境の壁はネットにより急速に崩れつつある。ソフトウエアの場合は、それが特に顕著であるという。「いかにPRを世界的に広めていくかが次の課題です」と水野氏は語り、講演を締めくくった。

パネル・ディスカッション ネットPR最前線 〜現場で生まれるネットPRの新セオリー〜

 神原 弥奈子(かんばら みなこ) 株式会社 ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長
神原 弥奈子(かんばら みなこ)
株式会社 ニューズ・ツー・ユー
代表取締役社長

【企業PRにニュースリリースを積極活用】

パネル・ディスカッションでは、ニューズ・ツー・ユー 神原氏をモデレーターに、先進的なPR活動を行っている3社がパネラーとなって、ニュースリリースのポータルサイト「News2u.net」を使った効果的な企業PRの方法を紹介した。

まず、レコメンデーションの専門企業として、あらゆる業種、商材のニーズに対応しておススメ情報を表示するレコメンド・エンジンの開発を行い、ECサイトなどに提供している株式会社ALBERT(アルベルト)が紹介された。同社は、自社運営するショッピング・ポータルサイト「見つかる.jp」のなかでユーザーが入力した“商品選択の際に重視する項目”のログ分析をしたレポートを、「News2u.net」に掲載している。同社コーポレート・コミュニケーション部ディレクターの佐藤めぐみ氏は、「こうしたログは、商品開発を行う際には有益な情報だと思っていましたが、具体的にどのような企業のどのような方が必要としているのかは分かりませんでした。それに自社で配信すると、限られた方にしか伝わりません。そのため、より多くの方にレポートを届けるために『News2u.net』を利用しました」と、自社のネットPR活用法について述べた。

 佐藤 めぐみ氏 株式会社 ALBERT コーポレート・コミュニケーション部 ディレクター
佐藤 めぐみ氏
株式会社 ALBERT
コーポレート・コミュニケーション部
ディレクター

 西村 佳隆氏 株式会社 サミーネットワークス 経営企画部 広報課 課長
西村 佳隆氏
株式会社 サミーネットワークス
経営企画部
広報課 課長

 奥村 朋代氏 株式会社 ワイキューブ 広報課
奥村 朋代氏
株式会社 ワイキューブ
広報課

次に紹介されたのが、携帯電話の公式サイトに着信メロディやパチンコ・パチスロゲームなどの配信を行うコンテンツ・プロバイダーの株式会社サミーネットワークス。同社経営企画部 広報課 課長の西村佳隆氏は、「“ミューパス”や“モバプリ”といった新規事業の立ち上げのためにネットPRを展開しており、その一環で『News2u.net』を活用しています」と語った。ミューパスとは、メーカーと協業して、携帯から家電製品などに、様々なデジタル・データを配信して更新させるというもの。例えば目覚まし時計に楽曲データを送ることで、ユーザーは7000曲のなかからアラーム音を選べるのだ。

ネットPRの目標の1つは、信頼性向上のためにサービス名である「モバプリ」といったキーワードでの検索結果件数を増大させること。News2uにリリースを出すと共に、ニュースサイトへの記事掲載については、記者に直接コンタクトを取ってサービスを説明し、記事化を依頼した。

「まずは小さい記事で紹介され、そこからスパイラル・アップして、露出の拡大を目指しました。現在では、著名媒体での記事掲載、検索結果の上位表示、検索結果件数の増大といった、望みどおりの状態が作られてきています。先日はついにテレビ・ニュースでも取り上げられました」(西村氏)。

「News2u.net」をはじめ、ネット上に公開された記事やリリースは、アーカイブされていくので、その数は増え続ける。すると、それを見て取材依頼が来る可能性も高くなる。西村氏の地道な努力が実り、現在ではGoogleでの検索結果件数が1万件を超えている。

3社目が、新卒/中途採用や組織活性化、販促などの分野で中小企業を支援するコンサルティング会社の株式会社ワイキューブだ。同社では、プレスリリースとしてメディアに配信するほどニュース性が高くない情報は、自社のオフィシャル・サイトには載せず、News2uのサイトに情報を蓄積するといった使い分けをしている。同社広報課の奥村朋代氏は、「定期的に開催している自社セミナーや、自社内で起こっている小さな取り組みの告知、また月に1回、定点的に新卒採用動向レポートを出すという形でNews2uを活用しています」と語る。同社では、例えば全社員で掃除をしているという、通常ならとてもニュースにならないようなニュースも掲載している。そうした小さなニュースにも、社風を広報するという意味が生まれ、意外とアクセス数は多いとのこと。

リリースするネタがないと嘆く広報担当者は多いが、奥村氏は次のように自身の経験則を語った。「今こういう情報が話題になりやすいのでは、という観点から社内を見ていくと、提供できるネタが色々と出てきます」。

【ネットPRではブログの活用も重要】

セミナー風景

続いて神原氏は、「CUT-INの法則」「ロングテール化」など、ネットでのニュースリリース配信の特徴を説明した後、「ネットPRでは、企業が公式に情報発信できるブログの活用も重要です」と話を展開した。

参加したパネラー企業のなかで唯一、ブログを活用しているALBERTでは、代表者ブログと広報ブログを公開している。代表者ブログの効果として、佐藤氏は次のように指摘した。「当社への入社を希望している方や出資したいと考えているベンチャー・キャピタルの方は、必ずといっていいほどこのブログを見ています。このブログで、代表者がどういう考えで事業を行っているか、かなり理解してもらえていると思います」。

自身も社長ブログを書く神原氏は、「ブログを活用することで、企業サイトからは見えない情報を提供できます。さらに、広報担当、あるいは代表者ブログを通して語られることで、読者にとって会社が非常に多面的に見えてきます」と指摘した。

ネットPRの今後の取り組み課題も、パネラーから提示された。まず、様々な切り口のニュースを増やしていくこと。ニュースリリースの効果を目で見える形で測定する方法を検討すること。発信したニュース相互の連鎖を図って露出機会を拡大していくこと。そして、ニュースの配信数をさらに増やしていくことだ。

最後に神原氏は、「Webサイトを開設している企業にとって大事なのは、どういった情報をどうやって発信していくかということです。現在のPR活動は大きな転換期にあると思います。みなさんもぜひ積極的にチャレンジしてください」と語り、パネル・ディスカッションを締めくくった。

「カテゴリー」で分かれるソーシャルメディア

野間 恒毅(のま つねたけ) 株式会社ニューズ・ツー・ユー 取締役
野間 恒毅(のま つねたけ)
株式会社ニューズ・ツー・ユー
取締役
インターネット草創期よりWebサイト 構築、3次元仮想世界コミュニティの制作・ 運営にかかわる。 2003年にブログを開始、2005年より シックス・アパート株式会社で エンジニアリング・ディレクターを 務める。2007年(株)ニューズ・ ツー・ユーのCTOに就任。

ソーシャルメディアの大きな特徴は、ユーザーのリアクションによって成り立つメディアだということだ。例えばWeb上にあるニュース素材や情報を見て、ユーザーがブログを書くというリアクションを起こし、さらにそのブログに対してほかのユーザーがコメントする。リアクションが連鎖するのだ。野間氏は「こうしたリアクションが重なることによって、メディアとしての熟成が進むことになる。ソーシャルメディアは、ネットPRやマーケティング戦略にも活用できる、重要なニュースソースとなっている」と指摘する。

一方、ソーシャルメディアにはそのメディアごとに、例えば独身男性/技術職系/20〜30歳前後というようなユーザーカテゴリが存在する。「このユーザーカテゴリの単位を『セル』と呼びます。セル同士は重なるものがある一方で、お互いに交流がなく独立しているものも多い」(野間氏)。このことは、あるセルでは「当たり前」の情報も、別のセルではまったく新しいニュースになり得ることを意味する。ソーシャルメディアを、PRやマーケティングに活用する際には、こうした概念を理解することが重要だ。

リアクションを連鎖させる5つの「仕掛け」〜[CUT-INの法則]

ソーシャルメディアにおいては、リアクションが重要であると述べた。野間氏はユーザーにリアクションを起こさせる、具体的な「仕掛け」について話を進め、ソーシャルメディアで読者を引き付けるものの条件として、「Catchy」、「Useful」、「Trendy」、「Interesting」、「New」という5つのキーワードを挙げる。以下、順番に紹介する。

【Catchy(=タイトル、見出しが奇抜)】

タイトルや見出しが非常に「奇抜」であること。またその奇抜さは、“えっ”と驚かせるぐらいのレベルがいい。また、タイトルなどに表示する1枚の写真の威力は非常に大きい。インパクトのある写真があれば、コメントなどなくとも、ユーザーはリアクションをしてしまうものだ。

【Useful(=ためになる)】

次に「ためになる」ということ。例えば、仕事の効率が10倍アップするとか、正しいWebサイトの構築方法といった内容であれば、ユーザーはついつい読んでしまう。“よかった”、“悪かった”というコメントも書きやすい。

【Trendy(=話題性)】

野間 恒毅(のま つねたけ) 株式会社ニューズ・ツー・ユー 取締役

世の中で非常に話題になっているものは、やはり見たくなってしまう。ここでのポイントは、まず“ほかの場所で話題になる前に情報を出す”ということだ。ネットの世界においても先に情報を出せば、先行者利益につながる。

一方、時代の流れに乗ることも大事で、野間氏は「TVで放送された情報の力を借りることも考える必要があります」と指摘する。流行のテーマに関連したエントリーを出し続けていると、大きなピークの後に小さな山が何度か来る時がある。一度ピークが去った後もフォローを続けることが重要だという。

【Interesting(=面白い)】

やはり記事内容が面白くなければ、ユーザーの関心はそこで途切れてしまう。ユーザーにリアクションを起こさせるという意味では、記事自体の面白さが非常に重要だ。また、同じネタでもネット上で流れている情報と似たような切り口では素通りされてしまう。記事をどのようにして面白く伝えるかというのも重要なポイントだ。

【New(=知らなかった)】

通常のニュースでは情報の鮮度が非常に重要である。しかしカテゴライズされたセルにおいては事情が変わってくる。例えばあるセル内で話題になっている情報を、知らない別のセルに向けて流せば、当然“知らなかった”ということで新鮮なニュースになる。「昔の情報でもいいんです。そのセルで知られていなければNewになります」(野間氏)。

ここまで紹介した5つのキーワードの頭文字を取って、野間氏はソーシャルメディアで注目を集める条件を「CUT-INの法則」と定義する。5つの工夫を凝らすことでユーザーの心を捉え、リアクションを起こしてもらうことが重要なポイントになる。しかしこの「CUT-INの法則」を効果的に活用するには、経験とコツが必要。「いくら面白くても、1つだけでは意味がありません。砂漠に1本大きい木を植えるのではなく、たくさんの木で森を作るように、ニュースリリースを継続して出すことがまずは重要です」と野間氏は講演を締めくくった。「CUT-INの法則」の具体的な活用法は、今後開催予定の 応用編セミナーで、さらに詳細に語られる予定だ。まず手がけるべきは「戦略」と「仮説」

矢口 須勢理(やぐち すせり) 株式会社レゾン 代表取締役社長
矢口 須勢理(やぐち すせり)
株式会社レゾン
代表取締役社長
企業のWebマーケティング部門立ち 上げからアクセス解析ツールを 用いたROI改善のためのWebマーケ ティング手法等に関するコンサル タント活動を行う。'03年から (株)デジタルフォレストで Visionalistのマーケティングを担当。 '06年(株)レゾンの代表取締役社長 に就任。現在、Webマーケティング 支援事業を提供する。

講演の冒頭で矢口氏は、「ユーザーの特定が難しいネットPRで、ターゲットマーケティングを行なうのは難しいのではないかと思われがちですが、実はアクセス解析をしっかり行なうことでそれは可能になります」と切り出した。

そのアクセス解析においては、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設計が重要となる。KPIは業務の達成度を把握するために重要なパフォーマンスを、定量的にモニタリングするための指標で、これによってWebサイトを様々な角度から分析し、どれぐらいのパフォーマンスが出ているのかを明らかにできる。KPIの適切な設定と分析を行えば、ネットPRにおいてもターゲットマーケティングが可能となる。

適切なKPIの設定を行うためには、企業のWeb戦略が重要となる。ところが、上場企業でさえ、49.5%が「Webサイト活用のための戦略がない」という調査結果もある。「Webビジネスの成功に欠かせないのはWeb戦略である」という認識を持つことが、効果的なネットPRとWebマーケティングの第一歩といえる。

Web戦略を構築した後は、それに基づいて様々な仮説を立てることも重要となる。まず、何を目指すのか、何をすべきかを明確にし、その結果、どんな成果が引き出せるのかの仮説を立てるのだ。「戦略と仮説を立てることが一番重要です。お客様とお話する時も、その部分に一番時間をかけますね」と矢口氏は言う。

PDCAサイクルのフル活用でROIを向上させる

実際のビジネス活動においては、PDCAサイクルを回すことが欠かせない。PLAN(戦略立案)→DO(施策実行)→CHECK(結果分析)→ACTION(改善実施)という4つのフェーズを繰り返して行なう形だ。ネットPRにおいても、PDCAサイクルがベースになるという。

ROI(Return On Investment:投資対効果)の観点からすると、PDCAサイクルの3つめの「結果分析」が重要だ。仮説で立てた期待値と実行結果との違いを測り、どれぐらい良かったか、あるいは悪かったか、その理由は何なのかを検証する。その結果を踏まえて、さらなる改善策を立てて再度実行していく。詳しい検証方法は応用編セミナーで話すということだが、矢口氏は「アクセス解析を戦略的に活用することにより、Webサイトの構築、運営、Webプロモーション活動、SEO対策の全てにおいて、ROIの向上が期待できます」と説明する。

矢口 須勢理(やぐち すせり) 株式会社レゾン 代表取締役社長

次に矢口氏は、ネットPRやWebマーケティングでアクセス解析を行う際に見るべきKPIとして、いくつかのポイントを挙げ、「これらを複合的に見ていくことが必要」と指摘した。

まずは、どのサイトからどれくらい流入しているか、リンク元別のPRサイトへの流入数の変化に注目するべきだという。続いてリンク元別のPRサイト内での動線を見る。あるサイトから入ってきたユーザーが、サイト上でどういう動きをしているのか、ほかのページはまったく見ずに直帰したユーザーも含め、動線の検証が必要となる。

また、リリースを発信した場合、その前後でPRサイトを検索するワードが変化していたら、そこは積極的に評価すべきだ。検索ワードによって進入数はかなり大きく変化していく。注目率の高いワードをリリースに埋め込むなど、戦略的に情報発信をすることで、特定の検索ワードによる進入数を大幅に増やすこともできるのだ。

さらに矢口氏は、ユーザーの誘導率などに影響を与える意外な要素として、「曜日」などがあると述べる。「リリース配信において、曜日の違いはかなりの変動要因になります。また、リリースで出したキーワードとランディングページの内容が一致しなければ、離脱率は上がってしまうでしょう。曜日やキーワードなど、KPIの変動要因を1つずつ検証していくことで、何が問題なのかが分かります。検証を重ねていけば、ニュースリリースとランディングページとの相性も測定可能です」

こうした検証もPDCAサイクルの一例だと矢口氏は語り、「こうした活動の中でアクセス解析を行ない、KPIを改善していくことが、最終的にはROIの向上につながっていきます」と強調した。

今回のセミナーでは、KPIの活用の導入的な要素が語られたが、さらに詳細にネットマーケティングとネットPRのためのKPI設定やROIに関するセミナーも予定されている。【ブログなどで取り上げてもらう工夫とは】

 水野 政司氏 サン電子株式会社 デジタルコンテンツ事業部 グローバル・マーケティング グループリーダー
水野 政司氏
サン電子株式会社
デジタルコンテンツ事業部
グローバル・マーケティング
グループリーダー

サン電子は、携帯音楽プレイヤーの音楽をFMラジオで再生可能とするFMトランスミッターなどのデジタル家電製品や、麻雀牌パズル「上海」に代表されるゲームブランド・サンソフトの展開、携帯電話向けコンテンツ開発といった、多くのコンシューマー向け製品や事業を手がけている。

製品のPRのためには、より多くの消費者が関連情報に触れることが必要になってくる。情報誌などの紙媒体や、新聞社などが運営する大手のネットメディアに取り上げられるのは、不特定多数に情報を伝えるのに有効だ。もちろん、発信した情報が掲載されるかどうかはメディアの編集者次第なので、編集部へ赴いて発表する情報を直接伝えることは基本的な活動の1つだ。

さらにサン電子では、個人が運営するブログに対しても、サイト運営者にコンタクトを取り、製品の紹介を直接行ったり、製品貸し出しをするなど、大手メディアと同様の対応をしている。例え個人のブログ運営者が相手でも、ネットワークの世界で完結せず、直接顔を会わせることもしてきたという。ブログへのPRに力を入れるのは、ネット上での話題を増やすことで、自社サイトへのリンクも増加し、SEO効果を引き出せるからだ。

水野氏は「ただ情報を流しているだけでは取り上げられません。直接会いに行くなど、どういったアクションを起こすかが大事です。加えて、イベントなどの特定の期間や目的に限らず、継続的に行うことも大切です」と指摘した。さらに、ブロガーに 取り上げられやすいよう、元リリースへのリンクや、転載の許可を明記しておく工夫も重要だという。

「ネットだからと特別なことをやるのではなく、これまで広報が行ってきたことを、ネットにおいても自然にやるという姿勢が大事です。自社の製品やサービスを知ってもらうという視点で動いていくのが効果的ではないでしょうか」(水野氏)。

国内向けに作られた製品でも海外で引き合いがあるなど、流通における国境の壁はネットにより急速に崩れつつある。ソフトウエアの場合は、それが特に顕著であるという。「いかにPRを世界的に広めていくかが次の課題です」と水野氏は語り、講演を締めくくった。

パネル・ディスカッション ネットPR最前線 〜現場で生まれるネットPRの新セオリー〜

 神原 弥奈子(かんばら みなこ) 株式会社 ニューズ・ツー・ユー 代表取締役社長
神原 弥奈子(かんばら みなこ)
株式会社 ニューズ・ツー・ユー
代表取締役社長

【企業PRにニュースリリースを積極活用】

パネル・ディスカッションでは、ニューズ・ツー・ユー 神原氏をモデレーターに、先進的なPR活動を行っている3社がパネラーとなって、ニュースリリースのポータルサイト「News2u.net」を使った効果的な企業PRの方法を紹介した。

まず、レコメンデーションの専門企業として、あらゆる業種、商材のニーズに対応しておススメ情報を表示するレコメンド・エンジンの開発を行い、ECサイトなどに提供している株式会社ALBERT(アルベルト)が紹介された。同社は、自社運営するショッピング・ポータルサイト「見つかる.jp」のなかでユーザーが入力した“商品選択の際に重視する項目”のログ分析をしたレポートを、「News2u.net」に掲載している。同社コーポレート・コミュニケーション部ディレクターの佐藤めぐみ氏は、「こうしたログは、商品開発を行う際には有益な情報だと思っていましたが、具体的にどのような企業のどのような方が必要としているのかは分かりませんでした。それに自社で配信すると、限られた方にしか伝わりません。そのため、より多くの方にレポートを届けるために『News2u.net』を利用しました」と、自社のネットPR活用法について述べた。

 佐藤 めぐみ氏 株式会社 ALBERT コーポレート・コミュニケーション部 ディレクター
佐藤 めぐみ氏
株式会社 ALBERT
コーポレート・コミュニケーション部
ディレクター

 西村 佳隆氏 株式会社 サミーネットワークス 経営企画部 広報課 課長
西村 佳隆氏
株式会社 サミーネットワークス
経営企画部
広報課 課長

 奥村 朋代氏 株式会社 ワイキューブ 広報課
奥村 朋代氏
株式会社 ワイキューブ
広報課

次に紹介されたのが、携帯電話の公式サイトに着信メロディやパチンコ・パチスロゲームなどの配信を行うコンテンツ・プロバイダーの株式会社サミーネットワークス。同社経営企画部 広報課 課長の西村佳隆氏は、「“ミューパス”や“モバプリ”といった新規事業の立ち上げのためにネットPRを展開しており、その一環で『News2u.net』を活用しています」と語った。ミューパスとは、メーカーと協業して、携帯から家電製品などに、様々なデジタル・データを配信して更新させるというもの。例えば目覚まし時計に楽曲データを送ることで、ユーザーは7000曲のなかからアラーム音を選べるのだ。

ネットPRの目標の1つは、信頼性向上のためにサービス名である「モバプリ」といったキーワードでの検索結果件数を増大させること。News2uにリリースを出すと共に、ニュースサイトへの記事掲載については、記者に直接コンタクトを取ってサービスを説明し、記事化を依頼した。

「まずは小さい記事で紹介され、そこからスパイラル・アップして、露出の拡大を目指しました。現在では、著名媒体での記事掲載、検索結果の上位表示、検索結果件数の増大といった、望みどおりの状態が作られてきています。先日はついにテレビ・ニュースでも取り上げられました」(西村氏)。

「News2u.net」をはじめ、ネット上に公開された記事やリリースは、アーカイブされていくので、その数は増え続ける。すると、それを見て取材依頼が来る可能性も高くなる。西村氏の地道な努力が実り、現在ではGoogleでの検索結果件数が1万件を超えている。

3社目が、新卒/中途採用や組織活性化、販促などの分野で中小企業を支援するコンサルティング会社の株式会社ワイキューブだ。同社では、プレスリリースとしてメディアに配信するほどニュース性が高くない情報は、自社のオフィシャル・サイトには載せず、News2uのサイトに情報を蓄積するといった使い分けをしている。同社広報課の奥村朋代氏は、「定期的に開催している自社セミナーや、自社内で起こっている小さな取り組みの告知、また月に1回、定点的に新卒採用動向レポートを出すという形でNews2uを活用しています」と語る。同社では、例えば全社員で掃除をしているという、通常ならとてもニュースにならないようなニュースも掲載している。そうした小さなニュースにも、社風を広報するという意味が生まれ、意外とアクセス数は多いとのこと。

リリースするネタがないと嘆く広報担当者は多いが、奥村氏は次のように自身の経験則を語った。「今こういう情報が話題になりやすいのでは、という観点から社内を見ていくと、提供できるネタが色々と出てきます」。

【ネットPRではブログの活用も重要】

セミナー風景

続いて神原氏は、「CUT-INの法則」「ロングテール化」など、ネットでのニュースリリース配信の特徴を説明した後、「ネットPRでは、企業が公式に情報発信できるブログの活用も重要です」と話を展開した。

参加したパネラー企業のなかで唯一、ブログを活用しているALBERTでは、代表者ブログと広報ブログを公開している。代表者ブログの効果として、佐藤氏は次のように指摘した。「当社への入社を希望している方や出資したいと考えているベンチャー・キャピタルの方は、必ずといっていいほどこのブログを見ています。このブログで、代表者がどういう考えで事業を行っているか、かなり理解してもらえていると思います」。

自身も社長ブログを書く神原氏は、「ブログを活用することで、企業サイトからは見えない情報を提供できます。さらに、広報担当、あるいは代表者ブログを通して語られることで、読者にとって会社が非常に多面的に見えてきます」と指摘した。

ネットPRの今後の取り組み課題も、パネラーから提示された。まず、様々な切り口のニュースを増やしていくこと。ニュースリリースの効果を目で見える形で測定する方法を検討すること。発信したニュース相互の連鎖を図って露出機会を拡大していくこと。そして、ニュースの配信数をさらに増やしていくことだ。

最後に神原氏は、「Webサイトを開設している企業にとって大事なのは、どういった情報をどうやって発信していくかということです。現在のPR活動は大きな転換期にあると思います。みなさんもぜひ積極的にチャレンジしてください」と語り、パネル・ディスカッションを締めくくった。

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