みんなは「働く」ってどういうイメージかな? 「早くあこがれの職業について、バリバリ働きたい」と夢をふくらませる人もいるだろう。ところが、仕事をめぐる状況は大きく変わってきている。安定した条件で希望の仕事につけない人が増えている。
■雇われて働く人の3人に1人が パートやアルバイト
会社などに雇われて給料をもらう人が、働く人全体の85.2%を占めている(2005年総務省労働力調査)。うち、正社員が占める割合は、年々下がっている。1980年代は正社員の割合は80%をこえていたが、2006(平成18)年には66.8%に下がり、パートやアルバイト、派遣など非正規労働者が33.2%を占めるようになった。
非正規労働者……雇われて働く人のうち、正社員(期間を定めないで雇われ、フルタイムで働く人)以外の人。さまざまな条件や待遇に分かれ、働く時間が短い「パートタイマー」、臨時に雇われる「アルバイト」、派遣会社から仕事先に送りこまれる「派遣労働者」などがある。賃金はたいてい時給や日給で支払われ、雇われる期間も定められていることが多い。
■「正社員になりたいのに…」
パート、アルバイト、派遣労働者として働きながら正社員になることを望む若者(15~34歳。学生は除く)が、急増している。総務省(国の役所)によると、1997年には61万人、2002年には97万人が正社員を希望。内閣府(国の役所)の06年意識調査によると、20代男性のパート、アルバイトなどで「10年後は正社員として働きたい」と答えた人は85.0%。「10年後もパート、アルバイトでいい」という人はゼロだった。働き方が変わっていく/2 なぜ働く環境がきびしくなっているのだろう
日本の会社は、正社員を採用する数を減らしている。なぜなら、きびしい国際競争にさらされ、会社の利益を守るためにまっ先に人件費(賃金など、人を雇うために発生する費用)を削っているからだ。お金がかかって辞めさせにくい正社員を減らし、賃金の安いパート、アルバイトなどに切り替えている。景気が後退しているため、この傾向は強まるとみられる。
国の試算によると、受け取れる年金の額も、正社員とパートなどの間には4.4倍もの格差がある。
■働く人の満足感が下がっている
厚生労働省(国の役所)が7月に公表した2008年版労働白書によると、働く人の仕事に対する満足感が下がっている。「仕事上の立場は安定しているか」の問いに「満足」と答えた人の割合は、1978年の33%から2005年は14.8%に下がった。「仕事のやりがい」については30.5%から16.6%に、「収入の増加」については23.7%から6.2%に低下した。
■厚労省が人件費減らしに警鐘
厚生労働省は、非正規労働者の仕事への満足感は正社員に比べて低いと分析している。「正社員からパートやアルバイトに切り替えれば、経費を減らすには有効かもしれないが、スタッフの能力が高まらず、会社の生産性は上がらない」と警鐘を鳴らす。
ニュースがわかる 2008年10月号
◇仕事のストレスでうつ、過労死が増えた
会社が雇う人の数を減らした結果、仕事の負担が重くなり、心身をこわす人が正社員・非正社員を問わず急増している。
厚生労働省によると、仕事のストレスでうつなど心の病気にかかり、2007年度に労災認定を受けた人は過去最多の268人。過労自殺(未遂もふくむ)も過去最多の81人で、うち80人は男性だった。年代別では40代が22人、30代が21人、50代19人、20代15人。うつなどに認定された人は20代と30代で6割をこえた。脳出血や心筋こうそくで倒れた人は392人で、142人が亡くなった。
・労災……労働災害の略。働く人に病気やけがの被害を引き起こした事故のこと。会社は労災の被害者に補償する責任がある。
◇働きづめでも部下より安い給料--名ばかり管理職
「管理職」の肩書をつけられて、きびしい労働を強いられながら、残業代が支払われない「名ばかり管理職」の問題が浮上している。労働基準法は、残業した人にはその分の賃金を支払うことを会社に義務づけている。しかし、部下を指導する管理職は対象から除かれるため、会社側が店長やリーダーの肩書をつけて残業代を支払わない風潮が、飲食店や物販店を中心に広がっている。長時間働いても、部下より賃金が低い人さえ出ている。
・労働基準法……労働者を守るため、賃金や労働時間など最低基準を定めた法律。
◇ワーキングプアを引き起こす--日雇い派遣
人材派遣会社が1日単位の契約で登録した人を現場に送りこみ、働かせることを「日雇い派遣」という。厚生労働省は7月、これを「ワーキングプアの温床」として原則禁止する答申を受けた。同省の調査によると、日雇い派遣だけで生計を立てる男性が1カ月間に働く日数は平均18.6日、月収は15万1000円。ここから生活費や交通費などを出せば、手元にはギリギリの金額しか残らない。アパートも借りられず、その日ぐらしをせまられている。
・ワーキングプア……仕事があっても貧しい生活を強いられる人のこと。働いているのに、生活保護を受けるよりも水準の低いくらししかできない人を指すことが多い。
・生活保護……貧しくて生活が立ち行かない人に、国が最低限のくらしを保障してお金を補助する制度。認定されれば3人家族で月13万~16万円ほどが給付される。
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